13 先生に呼び出されるB

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きっと煉獄先生に私の気持ちなんて理解できない。
他にも私のように、もっと頑張れば良い点が取れるけれど面倒だからしてない生徒なんてたくさんいるに決まってる。
私だけじゃない。

他の先生達ならともかく。
この目の前で私を憎らしそうに睨んでくる男には絶対に理解できないのだろう。


「楽しくラクに生きて何が悪いの?私がどうしようが私の勝手でしょ?」
「俺は君に後悔してほしくない!せっかく君は頭が良いんだから…」
「頭が良いからなんなわけ?良い大学を出て一流の企業にでも勤めたら良いんですか?はは、笑える。そんなの私は望んでないです」

先生は少し困った顔になる。

「…分かった。君の言いたいことは。だが、本気を出さないで怠けているのは理解し難い」
「先生と私は違いますもん」
「…正反対だな」
「そうです。正反対。私、先生みたいな熱くて男くさい人がずっと苦手でした。今も。でも煉獄先生だけは違うんです。先生だけは…」

拳に力が入る。
思わず大きな音を立てて立ち上がった。
先生はぎょっとして私の顔を見上げる。


「どうしてこんなに好きになっちゃったんだろう。煉獄先生のこと。ねえ、先生。私どうしてこんなに先生に胸を締め付けられるの?
先生が私の全てなんだよ。先生のことばっかり考えちゃうの」
「……苗字」
「本当は嫌いな人種なのに、変でしょ。この気持ちを受け止められるのは、あなたしかいないんだから。どうにかしてよ!」


先生の顔は見ずに踵を返した。
鍵を解錠して扉を勢いよく開ける。
そして走った。
早く帰りたかった。

なんだか泣けてきて、誰にもそんな自分を見られたくはなかったし。
なにより恥ずかしかった。
先生が私の心の中に初めて入ってきて、私の大切な核に触れた気がした。


明日からどういう顔で彼に会えば良いのか分からないけれど、今はとにかく家で眠りにつきたい。
早く忘れてしまいたい。


家に帰って本当にすぐ私は寝た。
いつも嫌なことがあるとベッドに入って毛布にくるまる。
そしてぎゅっと目をつぶって無心でいれば、いつの間にか眠れる。

2時間ほど寝ていたらしい。
スマホで時間を確認して、通知を見ると先生からメッセージが届いていることに気がついた。


『すまなかった』

ただそれだけ。
それだけのメッセージに目頭が熱くなった。
私からではなく、彼の方からメッセージを送ってきたのはこれが初めて。

「あはは、先生、可愛いんだから…」

先生から送られてきた『すまなかった』のひとことを、何度も何度も読み返した。



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