10 先生と彼女と休日

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それから私はあの時の借りを返してもらうという名目で何回か先生の家にお邪魔した。
基本的に平日は帰りが遅いし土日も部活動の顧問で学校に出向いているため、ほとんどアパートにいない。


そして彼女はSNSを見る限り、浮気をしている。
土日に先生以外の男の人と旅行しているのだ。
ちらっと写真の片隅に写り込んでいる腕とか服とか、先生ではないって私はすぐわかる。

そして先生はSNSのアカウントを持っているだけで3年ほど前からほぼ更新してないから、もはやアプリを開いているのかも謎だ。

推測だけど、きっと彼女と付き合いだした時に「Twitterもインスタもやってないの?ならアカウント作りなよ〜。ね?」とかなんとか、不本意に作ったんじゃなかろうか。


先生は彼女が浮気していることを知ってるのかな。
平日は仕事終わりにあのアパートで会っているようだけど(これも彼女のSNSから得た情報)土日はいくら先生がお休みの日でも会ってないみたいだし。
いつから続いているのかは分からない。
でも最初にそんな匂わせ写真みたいなのを投稿し出したのは3ヶ月前だ。


だから日曜の夕方とか、先生がいる時間にひょいっと訪問して暗くなる前に帰る。
多分3時間もいない。
私の実家と先生のアパートがバス一本で通える距離にあるのは本当に奇跡だと思う。
しかも片道20分はちょうどいい距離感だ。


「先生〜古典教えて」
「古典の先生に聞きなさい」
「嫌いだから無理」

基本的に先生の家では勉強をする。
なにかと教えてくれるし、嫌な宿題だって先生が隣にいてくれたらやる気になるし。

先生は最初私に「帰れ」と「来るな」ばかりで相手にしようとしてなかったけど、私が全く気にしていないおかげが諦めて家に入れてくれるようになっている。
たぶんもう諦めたんだろう。
でもただソファーで座っているだけで、何もしてくれない。
だから私はそのソファーの前のローテーブルで勝手に宿題を広げてる。


「もうすぐ期末テストだからたくさん宿題あるんだよね〜。嫌だな〜」
「別に君なら大丈夫だろう」
「点数とかじゃなくて、勉強をしなきゃいけないことが嫌なんですよ」
「…」


じーっと先生が私の手元を見てくる。
0.3のシャーペンで書く細い字を見て「よくそんな器用に文字が書けるな」と言った。
「なにそれ」と笑い返すと少しだけ先生も笑った。
かわいい。

煉獄先生は意外とちょろい。
お兄ちゃん体質だから、私のこと放っておけないのかな。
いつも私の作るご飯を「うまい」とちゃんと言ってくれる。
早く彼女と別れたらいいのにな。





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