7 先生のアパート初訪問A

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「先生、お昼ご飯食べました?」
「……まだだが」


リビングと繋がっているキッチンの方へ進んでいくと、ピンクの薄い毛布をかぶった先生もついて来た。
もはや止めたり怒ったりする気力もないらしい。
目も虚だ。
でも視線がスーパーの袋に向いているのは気づいて笑いそうになった。

調理をするために一通りキッチンの棚を開けてみる。
すごく高そうな可愛らしい食器ばかりでぎょっとした。
もちろんこれは彼女の趣味だろうと察するが、これでいつも食事している先生を想像すると…。


「なんで来たんだ」
「先生が風邪で休んでるって聞いたからですよ。私がお昼ご飯作ってあげますから、待っててくださいね」
「…結構だ」
「大丈夫です。ちゃんとゴミは持って帰るし私が来た証拠は残しませんから。先生に彼女がいること知ってます」

途端に先生は目をまんまるくする。
そしてすぐに眉間に皺を寄せた。

「別に私、彼女と先生の仲を引き裂こうとか考えてないです。むしろ今の先生には彼女さんが必要だから。今日だって彼女さんが出張じゃなかったら来てないですし」
「なんで知ってるんだ」

また目が大きく見開かれる。
表情豊かだ。

「先生の彼女さん、本名を隠さずSNSしてるんですもん。見つけるの簡単でした」
「監視してるのか、彼女を」
「監視…かもしれないですね。でも私はそこから煉獄先生のことを見守っているだけです。今日とか。彼女さんがいないという情報を得て、自炊の苦手な先生を助けるために来たんですから。私は彼女さんの代用品みたいなものと考えてください」

そういうと先生がごくりと喉を鳴らした。
よく分からない表情のまま固まっている。


「とりあえず横になっててください!あと、ポカリ3本買って来たんで飲んでください」

スーパーの袋から目当てのポカリを取り出して先生の目の前に突き出すと、戸惑いながらも受け取ってくれた。
それとヨーグルトとゼリー。
みかんなんかも買ってきたから冷蔵庫に突っ込んだ。
それとカップスープ。

「今度から常備しておいた方がいいですよ。ポカリとカップスープなんかは。もし私も彼女さんもいない時に具合悪くなったら自分だけでもなんとかなるし」
「…いくらだった」
「お金?そんなの教えないよ!代わりにまた遊びに来るから、そしたらちゃんと家に入れてね」

にやっと笑うと先生はとっても嫌そうな顔をした。
後からお金を渡されても受け取らなければ良い話。
でもこれで大きな借りを作ったのだ。
今度から私のことをそう無下にできなくなるだろう。


「先生、嫌いな食べ物ないよね?」

問いかけると毛布を被った先生が小さく頷いた。
かわいい。






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