両片思いの幼馴染

※現パロ
.


今日は半年ぶりに幼馴染と会う約束をしている。
幼稚園の頃からの付き合いである伊黒と義勇。
もう1人、不死川実弥がいるが彼は義勇と気が合わないので来てくれない。

幼馴染といっても、昔からとても仲が良かったわけではない。
会う時は伊黒の彼女で私の親友、蜜璃も一緒だ。
数年前、伊黒と付き合いたての蜜璃が2人きりがまだ緊張するからと私を誘ったのが始まり。

恋人にプラス私というのも嫌なので、幼馴染つながりから義勇を誘って4人で会うのがお決まりになっていた。
年に4回程度この4人で会う約束をする。

今年ももうすぐ終わるということで、4人で忘年会をするはずだった。
蜜璃が急に仕事でこれなくなり、まさかの伊黒と義勇と私だけ…。

伊黒と義勇自体、そこまで仲良くない。
私は伊黒とは仲が良いが義勇には嫌われている気がする…。

私は小学生の頃からずっと義勇に片思い中だ。

____

『駅の南口で待ってます』
SNSで4人のグループを作ってある。
トークルームにメッセージを送った。

『少しまて』と伊黒からは返事があったが、義勇からはない。
いつも彼は4人の会話にあまり入ってこない。

私がいるからなのかな…
そう考えていつも悲しくなる。
義勇は私に特に冷たい気がする。


「名前、遅れてすまないな」
「伊黒!義勇!」

どうやら2人で来たようだ。
伊黒と義勇は並んで現れた。

「あっち!予約した居酒屋さん。美味しくて安いんだよ」
「期待はしてないから安心しろ」
「ちょっと伊黒!どういうことよ!」

やはり義勇は会話に入らず、一歩後ろをぼんやり歩いている。

「義勇!義勇の好きな鮭大根があるんだよ。そこの居酒屋さん。楽しみだね!」
「……ああ」
「こいつにそんな話をしても無駄だぞ名前」
「確かに〜」

あはは〜と笑いつつも内心は傷つく。
それに蜜璃がいないと盛り上がりもイマイチだし、私は全然可愛くもないから…

「早く来い」

ぼんやりしているといつの間にか義勇が先を歩いていた。

「ごめんごめん!」

慌てて追いかけて隣に並ぶ。
昔は私の方が大きかったのに、いつの間にか彼の方が大きい。
男の人になったな、と思う。


結局、忘年会は全然盛り上がらなかった。
3人でダラダラと食事をし、基本的に私と伊黒が世間の愚痴やら上司の愚痴を言って終わった。
義勇はひたすら鮭大根を食べつつ私たちの話を聞いているだけだった。

それでもいつの間にか時間は23時を回っていた。
3人で駅につき、じゃあ解散という時に隣の男がボソリと呟いた。

「終電に乗り遅れた」

そう言ったのは義勇だった。
たしかにこの3人の中で一番田舎に住んでいるのは彼で、私や伊黒より終電は早かった。

「え!?うそ???なんで気付かなかったの?!」
「…すまない」
「伊黒、義勇のこと泊られたり…」
「馬鹿を言うな。俺と甘露寺の愛の巣に男を泊められるはずないだろう。女である名前ならともかく」
「えええ…。私の家とか、義勇は嫌だよね?」

一応私は一人暮らしの部屋に客人用の布団も用意されている。
もちろん女友達が来た時ようだけど…。

「名前がいいなら」
「えっ」
「決まりだな。じゃあ名前、義勇、俺はもう行くぞ」
「えっ!伊黒!待って!?」
「待たん」


そう言って颯爽と伊黒は改札へ消えた。
改札前で取り残された私と義勇。
どうしよう、正直とてもつらい。

「えっと、本当にうちでいいの?」
「ああ、構わない」
「じゃあ…行こうか」

時計を見ると私も終電が近かった。
慌ててホームへ向かう。
義勇は私の後ろを真顔で追ってくる。

部屋、綺麗にしてたっけ…。


家に着くまで2人とも無言だった。
何か話そうとしたが電車内で会話が途切れた。
話したいことはたくさんあるけど、これ以上話したら義勇に「うるさい女」と思われそうで怖かった。

「ここがうちです…」
「お邪魔します」

義勇は意外にも礼儀正しく部屋に入る。
一通り見回して、ソファーに促すと素直に座ってくれた。

「今お茶入れるね」
「ああ」

シーン、とした空間が気まずい。
思わずテレビをつけるとニュースが映し出された。

「この事件起きたの、不死川の今いる県だね。あいつ元気かな?大丈夫かな」
「奴なら大丈夫だろう」
「それもそうだね」
「名前は明日仕事か」
「そう。義勇は休みだっけ?」
「ああ。先に風呂に入れ」
「あ、うん!ありがとう!」

意外に優しいんだな…。
少し緊張が溶けて、私はいつも通りお風呂に入ることにした。

それから義勇もお風呂に入り、布団を敷いて2人並んで床についた。
義勇には弟が泊まるたびに置いていくジャージを着てもらった。
もちろん緊張で眠れるわけがない。


「…名前、起きているか」
「は、はい!」
「…どうした」
「い、いや、緊張してるというか、なんというか」
「なぜ緊張する」
「な、なぜって」

あなたが好きだからだよ!
なんて言えるわけもなく。

また沈黙。
遠くから車のクラクションが聞こえる。


「名前」
「なに?」
「俺は、おまえが好きだ」
「…………え?」

え?
今なんて?

思わずがばりと起き上がると、義勇もいつの間にか起き上がって私を見ていた。
暗闇に慣れたせいでばっちりと義勇と目が合う。
逸らせなかった。


「おまえは、俺が嫌いなんだと思って中々言えなかった」
「え……」
「だが今夜、泊めてくれた。こんなチャンスはもうないと思った。だから言わせて欲しい」
「義勇…」
「俺は昔から名前が好きだ。もちろん今も」

夢かと疑って、こっそり自分の太腿をつねってみた。
普通に痛い。
これは夢なんかじゃない…。

「私だって!義勇に嫌われてるのかと思ってた」
「…なんでそうなる」
「冷たいんだもん!」
「それは俺も嫌われていると思って……」
「私もずっと好きだったんだから!」
「!」

義勇は驚いたのか口をぽけんと開けて固まってしまった。

「私、何年片思いしてたと思ってんの」
「……三年くらいか」
「そんな短いわけないでしょ!10年だよ!」
「じゅうねん…」

10年。長かった。
11歳の時に初めて意識してから、私は義勇だけを一途に思ってきたのだ。
この年まで処女なのは義勇のせいだ。
他の男と付き合ってみても、どうしても長くは続けられなかった。

「義勇、じゃあ、私たち付き合えるの?」
「ああ。俺はそうしたい」
「っ、ばかじゃん」
「お互い様だろう」

義勇はそっと私のベッドに腰をかけ、私を優しく抱きしめてくれた。
ずっとずっと近くでいて、憧れてきた義勇の腕の中。
胸がぎゅぅっと苦しくなった。

「これからは、もっと会おう。1年に4回じゃなく」
「もちろんだよ…たくさん会ってたくさん思い出作ろうね」
「ああ」

10年越しの片思いが報われて、私は思わず泣いてしまった。

____

「はあ〜〜名前ちゃんと冨岡さん、うまくいったかしらね?」
「俺は知らん。もうおまえのいない飲みになどいかない」
「きゃ〜〜〜〜!もう!伊黒さんったら!」
「噂をすれば名前からメッセージだ。……付き合うらしいぞ」
「本当!??じゃ、今度からはダブルデートねえ」



実は周りからめちゃくちゃ応援されていた2人だった。


end


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