28. Decisive battle

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義勇の鴉が手紙を咥えてやって来た。
いつもは脚に取り付けられているのに、今日は慌てて来たのか紙も綺麗に折られている訳じゃない。
ちょうど仕事に出る前で良かった。
鴉は私が手紙を受け取るとすぐさま飛び立った。
なんだか嫌な予感がする。

慌てて手紙を開いた。


『名前へ

この手紙は、大きな決戦が始まったら名前に届けるように以前から用意していたものだ。
この手紙を読んでいると言うことは、もうその戦いが始まっているのだろう。


ずっと俺は錆兎と名前に対して罪悪感のようなものを感じて生きて来た。
何故あの時に生き残ったのが錆兎ではなく俺なのか。
何度も悔やんだ。
そのせいで名前には昔から迷惑をかけてばかりだった。

名前も、錆兎を見殺しにして生き残った俺を恨んでいるんじゃないかとずっと悩んでいた。
怖かった。

だが、最近ようやく気付いた。
いつも名前は俺を労り、優しさを与えてくれる。
俺の周りにいる人間の中で、一番俺のことを気にかけてくれているのはおまえだった。
もっと早く気がつけば良かった。

今までずっと、内に秘めていた気持ちがある。
この決戦が終わって、もし俺が生き残ったらそれを名前に伝えたい。

そしてもし、俺が命を落としたら悲しまないでほしい。
いつも通りに生きろ。
俺は死ぬはずだった人間だ。
姉と共に鬼に襲われた時、最終選抜の時。
だからもう怖くはない。

だが、必死に戦う。
名前にこの気持ちを伝えるために生き残る。
だから待っていてほしい。
俺のわがままを許してくれ。

冨岡義勇』



止めどなくぼろぼろ涙が溢れ出る。

義勇、義勇…!!
どうしようもなく会いたいよ。

貴方の帰りを待つことしかできないの?
そんなの、つらいんだよ。
私に出来ることが無いことくらい分かってる。
ただ待つしかない。

義勇、お願いだから絶対に帰って来てね……。




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