-31 拝啓

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姉から手紙が届いた。
相変わらず男のように達筆で、少しだけその力強さに憧れる。

『名前へ

こんにちは。お元気かしら。
あれからちゃんと妻の役目を果たしていますか?

ずっと私は名前が心配でたまりませんでした。
けれど、煉獄さんに会って、もう私に心配事はありません。
彼のような素敵な殿方の妻となった名前を誇りに思います。
それに嬉しく思います。

もうあなたと喧嘩も、おしゃべりも、お買い物も、全然出来なくなるけれど、それでも私は幸せです。
名前が幸せなら私も幸せだからです。
私はいつまでもあなたの味方よ。
もし煉獄さんと喧嘩したら私に相談してね。

また、こうしてたまにで良いから文通しましょう。
名前のことを毎日想うわ。
体に気をつけて。
また会いましょう。

苗字裕子より』


達筆のくせに姉らしく砕けた手紙に胸を締め付けられる。
姉妹の中で誰よりも私と仲が良く、まるで友達のようだった。
涙をぐっと堪える。
これは大事に取っておこう、と引き出しの中にそっと仕舞った。

そして手元にあるもう1通の手紙に視線を移す。
これは杏寿郎さんが送ってくれたものだ。
異様に緊張して、震える手で手紙をゆっくりゆっくり開いた。

『名前へ

君へ手紙を送ると約束していたのをすっかり忘れてしまうところだった。
仲間のうちの1人に、恋文とはくだけた言葉でかろやかに綴るものだと教わったので、思ったことをそのまま手紙にしようと思う。

早く名前に会いたい。
一緒に居た時間が長かったからなのか、側に君がいないと気になって仕方ないのだ。
今、君は何をしているだろうか。
天気が良い日が続いているから、きっとせっせっと動いているのだろう。
裕子さんから聞いたが雨の日の君は調子がよくないらしいな。
雨が降った日にはくれぐれも無理をせず、ゆっくりと休んでいて欲しい。

俺は任務を終えてお館様に報告を終えたところだ。
これから担当地区を一通り見廻し、2、3日後には帰れるだろう。

何度も言うが早く君に会いたい。
君も同じ気持ちだったらどんなに幸せだろうか。
もう少し待っていて欲しい。

杏寿郎』


私だって貴方に会いたくて会いたくて仕方ない。
私こそ、貴方が私に会いたいと思ってくれているなんて光栄で、この上ない幸せだ。
いただいた手紙をぎゅっと胸に抱く。
どうかご無事で帰ってきますように。



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