19. A person who makes me worry
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始発の列車に乗ってカラスの言う通りに知らない道をたくさん歩いた。
久しぶりにこんなに遠出をした。
ヘトヘトになって林を抜けるととても大きな屋敷が見えてきた。
「アソコ!ギユウ!」
「やっぱり義勇もいるんだ」
疲れていてもう歩けないほどだったのに自然と足が動いて駆け出した。
扉の前には小さい女の子たちが雪かきをしている。
この子達もこの屋敷の人間なんだろうか?
「あの、私は苗字名前です。義勇は…」
「あ!お待ちしておりました、苗字さん!」
女の子の1人がぺこりと頭を下げる。
1人が私の手を引っ張って門の中へ誘う。
そのままふらふらと引っ張られて行くとある部屋の前で「ここです」と手を離された。
「苗字さん、お待ちしてました。どうぞ」
凛とした透き通る声。
胡蝶しのぶだ。
恐る恐る扉を開けると、やはりあの日見た時と変わらない綺麗で若い女の人が座っていた。
「お久しぶりですね」
「はい。お久しぶりです…えっと、しのぶさん」
「ふふ。怖がらないでください。実は貴方をここへ呼んだのは冨岡さんのためなんです」
「義勇が?」
彼女は音もなく立ち止まり「こちらへ」と私を別の部屋へ招いた。
「実は最近珍しい鬼と冨岡さんは戦いまして、外傷は足の骨折だけですが精神的な攻撃を受けてしまったみたいなんです」
「そんな!大丈夫なんですか?」
「…貴女ともう1人の名前を呼んでいるんです。さびと、さんでしょうか。お知り合いですか?」
「錆兎は…もうかなり前に亡くなりました」
「…うーん、そうでしたか。攻撃を受けた他の隊士ほど酷くはないんですが、なんだか少し不安定になってしまったみたいで」
最近は戦いが終わって私の元へ現れたとしても昔ほどではなかった。
しかし敵の攻撃でまた調子が戻ってしまったのかもしれない。
「冨岡さんのカラスが名前さんが薬を持ってると教えてくれたんですよ。足も折れているので、来てもらいました。遠くからお呼びだてしてすみません」
「いいえ、大丈夫です」
本当は疲れて眠りたいくらいだったが、しのぶさんを見ているとどうしても気が揉んで仕方ない。
やはりあの時義勇と並んでいる姿がお似合いだったのをずっと気にしてしまっているからだ。
私なんかより綺麗で逞しくて。
彼女を羨ましいと、あの日から毎日のように思って来た。