-43 急展開
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先程までの緊張感はどこへやら。
いつの間にか素の自分で煉獄さんとどうでもいいような話に花を咲かせる。
「じゃあ煉獄さんはペットを飼ったことがないんですね」
「そうなんだ。だからこそ、いつか自分の家庭を持てたらペットを飼おうと決めている!」
「何が良いんですか?」
「初めてだからな…やはり犬が良いだろうか?苗字さんは何か飼っていたことはあるか?」
「今、実家に犬と猫がいますよ。小さい頃は金魚とか、フェレットとかも飼いましたね」
「フェレット?」
「検索しますね」
煉獄さんにフェレットを見せるために久しぶりにスマホを見ると、小野坂先輩からメッセージが届いていた。
内容は「同じ駅前で友達と飲んでる」というどうでも良い報告。
「どうかしたか?」
「あ、いえ!この生き物です」
先輩のことはとりあえず無視して検索して出てきたフェレットを煉獄さんに見せた。
「…ああ!イタチのことか!」
「イタチ…?」
フェレットは日本で言うイタチなのか?
2人でどうでもいいか!と受け流して次の会話に移る。
そうやって2人でいると自然と時間が流れて行く。
あっという間に過ぎてしまう。
「ラストオーダーのお時間です」
金曜日ということもあって、3時間経つと店を出なくてはいけなかった。
時計を見ると30分しかなかった。
「じゃあそろそろおひらきにするか」
「そうですね」
始まりも遅かったので今日はこれでおしまいにすることにした。
もっとずっと一緒に居たいけど、そんなわがまま言ってられない。
もちろん今回も割り勘にしてもらった。
そして2人並んで駅に向かう。
まだもう少し煉獄さんと一緒にいられるのだ。
普段滅多に電車に乗らない2人なので改札前に表示されているホームを確認するために立ち止まった。
「あ、4番線ですね」
「あと15分あるがホームで待つか」
「そうしましょう」
「あ、名前ちゃん!」
遠くからかなり大きい声で名前を呼ばれて驚いて振り返るとなんと小野坂先輩がふらふらしていた。
隣には本当に友達らしき男の人が2人。
こちらに笑顔で向かって来る。
とっさに私は煉獄さんの袖を引っ張って、彼の耳に口を寄せた。
「すみません、彼氏のフリしてくれませんか?」
「ん?!」
「すみません!一生のお願いです!!」
ちょうど言い終わった頃、私の目の前に到着する先輩。
隣の煉獄さんに気がついていないのだろうか?
結構酔っ払っているし、私のことしか見えてなかったのかもしれない。