-37 孤独感

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わざと煉獄さんの授業がある時間に納品に行った。
もちろん彼はいない。



長野から帰った後、次も会おうと言われた私は勇気を出して断った。
「今日で会うのは最後にしたいです。もう次はないです」と告げた。
彼が呆気に取られているうちに車を降りてすぐにアパートの部屋へ逃げ込んだ。
それから連絡もない。


自分からあんなことを言っておいて、連絡がないことに怒りを感じてしまう。
寒さに凍える手を擦り合わせてさっさと仕事を終え、キメツ学園を後にした。

追いかけてくる訳もないのに、校舎内をゆっくりと歩いてしまった自分を恥じた。



そして、1週間が経つ。

また今回も煉獄さんが授業中と分かっている時間帯を選んだ。
1人で段ボールを運ぶのがいつも以上につらく感じるのは彼が側に居てくれないからだ。

それでもこれは自分で選んだこと。
私がいなくなったことで蜜璃ちゃんと煉獄さんが何の障害もなくこのまま付き合うことになれたら。

大好きな2人が幸せなら私も幸せだ。
その気持ちに嘘はない。
きっと私では2人をそんなに幸せな気持ちにさせてあげられないから。

結婚式に呼ばれたらちょっとどうしようかとか思うけど。
でも時間が解決してくれるだろう。
私が煉獄さんへの気持ちを断ち切れたら……

「よぉ」
「うわっ!」

台車を押して玄関へ向かおうとした時、後ろから首根っこを掴まれた。
息が止まりそうなほど驚いたが、よく知る声だったから慌てて振り返る。

「宇髄先生!何するんですか!!」
「おまえに聞きたいことがあんだよ」
「き、聞きたいこと?」
「とりあえず来い。暇だろ」
「暇じゃないですし!」

そんな私を宇髄先生は軽々と持ち上げた。
米袋とかと同じで横に抱えられているのがムカつく。


「きゃあ!!ちょ、離してくださいよ!セクハラですよ!?」
「ここで離していいのかよ?」

ハッとして下を向く。
まさに階段を登っている最中で、離されたら下まで一気に転がり落ちるだろう。
慌てて彼の脇にしがみついた。


「絶対に落とさないでくださいね」
「へいへい」

そう言って連れて来られたのは穴の空いた美術館だった。
穴の部分にはなんだかよく分からないが透明のドームのようなものがくっつけられていて蓋がされている。
植物園の天井みたいでオシャレだ。

「座れよ」
「…」

前にも座ったことがある椅子に黙って腰を下ろす。
隣に煉獄さんはもちろんいない。




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