-36 歴史の先生

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忘れていたが、煉獄さんは歴史の先生だ。
私が不思議そうにしていたり、看板の説明を読んでも理解できていないとすかさず解説してくれた。

なんて頭のいい人なんだ!
と思ったけれど、彼は歴史の先生だから詳しいのかもしれない。


「煉獄さんはとても分かりやすく教えてくれるんですね。生徒さんが羨ましいです」
「苗字さんは学生時代、歴史は苦手だったのか?」
「そうなんですよね…。なかなか覚えられなくて」
「なら俺の授業にぜひ参加してもらいたいな!」

今向かっているのは軽井沢だ。
先程の善光寺からかなり離れているからまたドライブタイム。
それでも彼との時間はおしゃべりが弾んでしまって全然暇にならない。


目的地、宇髄先生御用達のお肉料理屋さんも予約をしてくれていたらしい。
少し遅めのお昼。
ちょうど緊張にも慣れ始めてお腹がほどよく空き始めたところだ。

席に案内され、おすすめのランチプレートを注文した。
煉獄さんは追加でお肉の盛り合わせも。

「実は今日のプランは宇髄も考えてくれたんだ」
「そうなんですか?」
「俺はこういったことに不慣れだからな。奴が心配して色々教えてくれた」
「優しいですね宇髄さん」

きっと予約のことや駐車場のことなど、宇髄先生の助言があったに違いない。
目の前で照れて水をちびちび飲んでいる煉獄さんがどうしようもなく可愛く思えてしまう。


すぐに運ばれて来たランチプレートに2人同時に声を上げた。
お肉がキラキラ輝いて見える。

「これは絶対に美味しいやつですね!」
「む!うまい!」
「食べるのが早いですね」

私がフォークとナイフを手に持とうとしている動作の間にも煉獄さんは器用に肉を切り分けて次々に口へと運んでいた。
素早いけれど綺麗なその手つきに、彼の育ちの良さが垣間見える。
そのギャップにきゅんとした。




「今日はとっても楽しかったです!」
「俺もとても楽しかった!今日1日ありがとう」
「こちらこそ!ありがとうございました」

あれからショッピングやカフェを堪能し、帰って来たのは19時を過ぎていた。
夕食も済ませてしまったから、家に帰ったらお風呂に入って眠るだけだ。

クリーニング店ではなく、煉獄さんはアパートの前まで送ってくれた。
また危険だと思ったんだろうか。
こんなに近い距離なのに。心配性な人。


「…苗字さん」
「はい」

車から降りようとした時、そっと腕を掴まれた。
平然を装ってゆっくり振り返った。


「また、2人で出かけないか?」
「…」

これでもう最後にする。
そう決心したことは忘れていなかった。



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