-29 曖昧な記憶

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なんやかんやあって記憶が曖昧なまま帰宅して目が覚めたら次の日の13時だった。

あれからお互いの学生時代のことや、元彼、元カノの話をしたけれどほとんど覚えていない。
煉獄さんが大学時代にめちゃくちゃ好きな人がいて、その人と付き合えたけど3ヶ月で別れた話はちゃんと覚えてる。

もっと詳しくその頃の話を聞いたはずなのに…!

思い出したら出したで悲しくなりそうだから無理に記憶を掘り起こすのはやめておこう。


ズキズキ頭が痛むことに驚いた。
こんなに飲んだのは本当に久しぶりで、二日酔いの感覚を忘れていたらしい。
そうそうこれこれ。

こういう時はシジミのお味噌汁。
でもうちにはシジミがない。
仕方なく豆腐とわかめで簡単な味噌汁を作って、冷凍ご飯と一緒に昼ごはんを済ませた。

スマホを見ると煉獄さんからメッセージが届いていて驚いて開くと、送信時間が昨日の深夜3時。
私がたぶん家に戻ったのが深夜の1時半。

『今度は2人で会おう』
『正月明け、空いてる土日があったら教えてくれ』


『1月12日、空いてます』

そう返事をしてふと思い出した。

昨日、煉獄さんは、もっともっと私と2人で出かけてたくさん私のことを知りたいと言っていた。
それで私はなんと返したっけ?
思い出せない…こわい。

でもあの発言は脈ありだと思っていいものか。
それとも酔った勢いで言ったでまかせ?
いや、こんなすぐに次の予定を聞いてくるということは本当だったのかも。


うなっていると返事が来たことをスマホがバイブで知らせてくれる。

『ありがとう。一緒に長野にでも行かないか?』
『もちろん日帰りだから安心してくれ』

長野!
それは素敵。

『もちろんです!すごく楽しみです』

煉獄さんから返事が来て1分もしていないけど、すぐさま返信を送った。
ガツガツしてると思われただろうか。


ごろんとベッドに横になって天井のくぼみを視線でなぞる。
もうすぐお正月だ。

次の納品日はもうお正月明けになる。
つまり昨日で今年煉獄さんに会える日はラストだったのだ。
しばらく会えない日が続くと思うと、途端に早く会いたくなってしまう。

これじゃあ恋人みたいだ。
私は煉獄さんのなんでもないくせに。

でも、休み明けに2人で小旅行がある。
それだけが私にとって生きる希望だ。


『行く場所はこれから2人で決めよう』
『行きたいところがあったら教えてくれ』

いつのまにかそうメッセージが返ってきていた。
ああ、本当に、これじゃまるで恋人同士だ。



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