-13 兄の気持ち

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2人のことをぼーっと見守っていると、やっと煉獄先生が私に気づいた様にこちらを見てハッとした。

「苗字さん、俺の弟だ!」
「あ、はい。さっき伺いました」
「そうだったか!」
「さっきこちらの方に助けて頂きました」
「助けただなんてそんな!声をかけたくらいで…」

煉獄先生は私の持っていた段ボールをいつものようにひょいっと持ち上げる。

「弟を助けてもらったお礼に手伝おう!」

いつも手伝っていただいてますが…!

「よし、千寿郎は教室に行きなさい。いいか、くれぐれも無理はするなよ」
「はい!」

ああ、天使のような可愛らしい「煉獄さん」がいなくなってしまった。
代わりに目の前にいるのはたくましくて、近くにいるだけで私をドキドキさせてしまう人。
天使なんて可愛いものではない。


「すごく似てますね」
「よく言われる」

以前、私が弟に似ていて放っておけないと言っていたらしいと噂を聞いた。
全然私には似ていなくないかな?


「いつもああして無理をしてしまうことがあってな。兄としては心配ばかりだ」
「兄さんみたいになりたいって言ってましたよ」
「ははは、そうか」

照れたように眉を八の字にして笑う煉獄先生の顔を初めて見た。


「俺は、そんなに大した人間ではない」
「そんなことないです。私も煉獄先生のこと、すごく尊敬してます」

いつも助けてくれるし、落ち着いている。
頼り甲斐のある人。
こうして今もついつい甘えてしまっている。
2歳しか違わないのに…。


倉庫に着いて段ボールを床に下ろしながら、煉獄先生は「うーん」と唸った。


「俺は君や千寿郎を尊敬する」
「えっ」
「そんなにいつも1人で頑張らなくていい。つらいなら頼ってほしい」
「えっ…」
「ついそう思ってしまうんだ」

ふっ、と優しく笑う煉獄先生はいつにも増して私の胸をときめかせた。

そんな風に思ってくれる貴方を私はやっぱり尊敬する。
でも口にはあえて出さなかった。
ただお礼を述べて、あやふやにしたまま作業を続けた。


一通り作業が終わった時、煉獄先生が突然「よし!」と大きな声を出したのでびっくり。

「申し訳ない。少し時間いいだろうか?」
「え?あ、はい…」



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