前「発覚」

.


まさかと思った。
最近体調が優れなくてなんだか自分の体がおかしいことに気がついて。
もしや、と思って妊娠検査薬を買ってさっそく試してみたのだ。

妊娠してる…。

名前は思わず頭を抱えた。

相手は分かっている。
会社の取引先の冨岡義勇だ。
私は彼とセフレなのだ。
頭を抱えるに決まっている。


私の勤める会社に飛び込みで営業に来たのが彼だった。
秘書の私が今まで見たことのないほど口下手だった。
こんな人が営業マン???
絶対に事務とかに転職した方がいい。
と、思っていた。


でも私は彼のおかげで学んだ。
営業とはお喋りだけではやっていけない。
真面目さ、素直さ、堅実さ、安心感が大切なのだ。

その全てを兼ね揃えた冨岡はすぐにうちの社長から信頼され、今では社長と彼は飲みに行く仲だ。
喧嘩ばかりしているが、それも仲がいい証拠なのだろう。


そして2年前に社長の計らいで2人で食事をしたのがきっかけだった。

なんやかんやあってセフレになってしまった。
後悔しかない。
もうあの頃のことが思い出せず、なぜあんな真面目な男とこんな関係になったのかわからない。


いや、今はそんな事を考えている場合ではない。
トイレから出てソファーに横たわる。
スマートフォンを開いてスケジュール表を眺める。
明日は冨岡さんが来る日じゃないか!

どうしよう…。
社長が知ったらきっと悲しむ。

堕すことは考えられなかった。
元々子どもは好きだし、なにより絶対に後悔してしまう。
だからもし冨岡さんが私の元から去ってしまっても、私は一人でこの子を育てよう。

優しく自分のお腹を抱いた。

冨岡さん…。
私は彼が大好きだった。
寡黙で、優しくて、意外と天然で…。
本当に好きだったのに、なんでこんな関係になってしまったんだろう。

ボロボロと涙が溢れ出す。
本当は付き合いたい。結婚して、こんなに迷うことなく出産したかった。

それでも明日はやってくる。
冨岡さんが来てしまう。
正直に伝えよう。早い方がいい。


prev / back / next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -