5. Monologue

.


毎日毎日、死に物狂いで稽古をした。
同じ水の呼吸を使う水柱の戦いを見て学んだ。
鱗滝さんに教えられたことも何度も反復した。


それでも今だに悪夢ばかり見てしまう。
錆兎が引きちぎられる夢。
錆兎が笑いながら俺の元から去る夢。
錆兎が名前と手を繋いで花畑で戯れている夢。


名前と一緒に寝れば悪夢を見る確率は低くなることに気がついた。

本当は自分が守らなくてはいけない存在の名前。
なのに今の自分は彼女に守られていると言っても過言ではない。


ずっと名前が好きだった。
もちろん今もだ。
だがずっとこの気持ちは伝えないと決めている。

錆兎も俺と同じく、名前が好きだった。
きっと名前も錆兎が好きに違いない。
いつもオロオロしていて頼りない俺を名前は選んでくれるはずはない。

だからこそ、鬼殺隊になってからは必死に強くなろうと努力をしている。
血の滲むような鍛錬。
誰に後ろ指を刺されようが気にしない。
ただ強くなりたい。

あの時、自分が強かったら錆兎は死ななかった。
これからは名前を守るために。



目の前で大量の血が溢れ出す。
また1人助けられなかった。

鬼によって奇形にされ、自爆して死んでいく人間。仲間。

カタカタと全身が震えた。
次は自分かもしれない。

いや、俺が戦わないと。



必死に刀を振り回し、鬼を殺した。

大量の血を見ていると頭がおかしくなりそうになる。
自分は何でこんなことをしているのだろうと。

姉、蔦子姉さんに会いたい。
錆兎や鱗滝さん。
父さんや母さん。
そして名前。

鬼なんていなければ、俺はどんな人生を歩んでいたのだろうか。
戦争に行きたいとは思わない。
ではどんな仕事をするのだろう。
どんなことを学校で学ぶのだろう。


考えだすとキリがなかった。
共に戦い、生き残った仲間たちはそのまま藤の花の家に向かうらしい。
しかし俺は別の方向へ歩き出した。

また名前に会いたくなった。
名前に会えば落ち着ける。
安心できる。


無心で足を動かしていれば自然と名前の家に到着する。
名前は早く寝ない。
ギリギリまで起きている。
いつ俺が現れてもいいようだ。

そんな健気な名前をどうしようもなく愛してしまっている自分。
それなのにこうして頼ってばかりいる。

情けなくて仕方なかった。


「義勇!どうしたの、血まみれで」
「俺の血じゃない」
「服はすぐ脱いで。洗っておくから。お風呂に入って身体を清潔にして」
「…」
「大丈夫?お風呂が先。薬はその後でちゃんとあげるから」
「ああ…」


ああ、また名前に頼ってしまう。



prev / back / next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -