4. Affection and friendship

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春の少し肌寒い夜。
義勇はまた音もなく現れた。

いつものように私の横に来て、薬を要求する。
私もいつも通りに懐から薬を出して白湯と一緒に義勇へ渡す。

義勇はゆったりとした動きで薬と白湯を飲み干す。
いつの間にか目立つようになった喉仏の動きが妙にいやらしい。
慌てて目線を晒すと、義勇はひとこと「寝る」と言って立ち上がった。

「あ、まって、私も行く」

ちょうど寝ようと思っていたため、2人で布団を敷いて床に着いた。
今日は風もあまりなくて静かな夜だ。
2人の呼吸音だけが聞こえる。


足の指先が妙に冷たくてなかなか寝付けない。
ふと、義勇の方へ寝返りを打つと目が合った。


「…眠れないのか?」
「そっちこそ。珍しい」

義勇は基本的に薬の副作用なのか、うちに来るとすぐに寝てしまう。
一度寝ると起こそうとしても起きない。
義勇自ら起きるか、あの忌々しいカラスが騒ぎ出した時のみ彼はしゃきりと目覚める。


「今日は、どんな1日だったんだ」
「え?」

突然義勇から質問されて戸惑う。
昔とは違い、錆兎が死んでから彼は全くと言っていいほど感情の動きが読めなかった。
私と錆兎と楽しく笑っていたことなど嘘みたいに。

なのに今日は珍しいことに質問された。
驚きすぎて口だけがパクパク動いた。

「うんん…と、すぐ近くの民家を回って薬を売ってたよ。いつも通り」
「何時頃に切り上げるんだ」
「夕日が沈む前には帰るようにしてるよ。義勇も鱗滝さんも、暗くなると危険って言うから」
「ああ。絶対に夜は出歩くな」
「わかってるよ」
「客や友人に呼ばれてもだ。観劇などに誘われても、夜だけは行くな」
「うん」


じっと私を見つめる義勇の目は久しぶりに澄んでいた気がする。
今日は少し気分が良いのだろうか。

「どうしたの?なにか心配になることでもあった?」
「いや…、ただ、いつも1人だろう名前は」
「うん、でも慣れたよ。義勇もよく来るし」
「そうか」
「うん」

義勇は視線をそらして、少しの沈黙の後にまた口を開いた。

「今日、名前と同じような年頃の女が鬼に襲われていた。俺や他の鬼殺隊が間に合ったから、助かったが…。名前を思い出して怖くなった」
「義勇…。ありがとう、心配してくれて」

そっと義勇の布団の中は手を入れた。
私の足先とは違って驚くほどあたたかな義勇の手を握りしめる。

安心したのかゆっくりと目を閉じて、義勇は眠りについた。




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