2. Awakening

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義勇が目を覚ました時、私はすぐそばにいた。
気にかけてやって来ていた同期たちもその瞬間に立ち会った。

義勇は最初ぼんやりとしていたが徐々に覚醒し、取り乱した。

「錆兎、錆兎がっ、!」
「義勇…!もう、終わったんだ…」
「そんなっ」

同期の子たちが必死に義勇を落ち着かせようとしていた。
私は何故か今になって錆兎が死んだことを実感して、片隅で涙を堪えるのがやっとだった。
義勇にかけてあげられる言葉もない。


それでも義勇が混乱状態だったため、鱗滝さんの指示で安定剤を飲ませた。
ぐったりとしてまた眠りにつく義勇。
これから彼はどうなってしまうんだろう。
怖かった。

私は帰り際、鱗滝さんにずっと気になっていたことを聞いてみた。

「義勇は…これからどうなるんでしょうか」
「鬼殺隊になる」
「こんな状態なのにですか?」
「そうだ。あいつは生き残った」
「そんな…」
「支えてやってくれ。あんな状態はそんな簡単には治らない。名前が必要だ」
「はい…」


自分にできることなんて、ただ薬を与えることしかない。
それ以外で何もできない。

○○○

ようやく義勇の傷も治り、精神的にも落ち着いて来た時だった。
昼食後の薬を用意してやっていると義勇がこちらをじっと見て、ポツリと言った。

「ごめん…」
「義勇、なんのこと?」
「錆兎が…」
「貴方が謝る必要ない。私は義勇が生き残ってくれたことが嬉しいよ。だから大丈夫」
「…名前」

義勇はそれからも何か言いたそうにしていたが、私から薬を受け取って飲み干すとまた眠りについてしまった。


日が経つにつれて義勇は昔のように笑わなくなった。
どこか心を閉ざしてしまったような彼を看病するのは堪らなくつらかったが、それでも私は常に支えようと思った。

義勇の肉体的な体調がよくなると、見計らったように鬼を倒す仕事が舞い込んでくる。
いつの間にか義勇のそばには鴉がいた。

鴉に言われるがまま、義勇は何処かへ行ってしまう。

いつ死んでしまうか分からない仕事。
分かっていたはずなのに見送る時はつらかった。


みんなそうなのかは知らないが、義勇は正式に鬼殺隊になると鱗滝さんの元から出て行ってしまった。
義勇には普段帰る家もなく、任務がない時には藤の花の家というところか、もしくは私の家に来るようになった。

本来の目的は未だに精神的に安定せず、薬を貰うためだったが、祖父母が泊まって行きなさいと言うから義勇は黙ってうちに寝泊りした。





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