7時間目:先生と先生

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私は見事に高校の教師になった。
そして今、キメツ学園の目の前にいる。
ドキドキというよりハラハラだ。
私はちゃんと先生になれるのだろうか。


「おお!なにしてる苗字!教員室はこっちだぞ。忘れたのか?」
「煉獄先生!まだいたんですね」
「私立だからな!公立と違って移動はまあない!」
「そうか!そうですよね」

冨岡先生がまだこの学校にいることは知っている。
それ以外の先生のことなど気にしていなかっただけにビックリする。


「苗字、なにしてる。他の新任教師はもう自分の席に着いているぞ」
「と、冨岡先生…!」

つい先日も会ったというのに、なんだか感動した。
いつものジャージ姿だ。
最近私と会う時は私服だったからなんだかあのジャージが懐かしい。


「この前に会った時に遅刻するなと言っただろう」
「まだ遅刻してないです。今予定の時間の15分ですよ」
「む?冨岡先生と苗字は会ったのか?この前?」
「れ、煉獄先生!私も先生ですよ!今日から!間違えないでくださいね!冨岡先生も!!」
「うむ!そうだな!失礼した、苗字先生!」
「さあ、行きましょう2人とも!」

危ないところだった。
冨岡先生と私に早速、変な噂が流れるところだった。


冨岡先生と私はお付き合いしていない。
大学生になってから何度も何度も会って出掛けたし、お泊りもしたし、ほぼ毎日メッセージを送りあった。

でも私はつい最近まで学生だったから、告白なんてする気はなかったのだ。
でも私は今日から先生。
冨岡先生と同等の立場だ。

いつ告白しよう。
付き合ってください、って、どのタイミングで言うべきなんだろう。



1日があっという間に過ぎた。
私は理科室の隣にある部屋で、自分の机に突っ伏した。
教員室とは別に、理科系の先生たちにも別室が設けられていた。
理科準備室というのだろうか。
体育教官室みたいなものだ。
胡蝶カナエ先生が趣味で育てている生物がたくさんいて癒される。


「ちょっと外の空気吸ってきますね」

ずっと独特の香りがする校舎内にいたから、なんだか外に出たくなった。
体育教官室はグラウンドに面していて、たまに先生たちがキャンプ用の椅子を出して日光浴をしていたのを思い出した。

早速そこへ向かうと冨岡先生がスマートフォンをいじって突っ立っていた。

「先生が堂々とスマホいじってますね」
「もう生徒はみんな下校しただろう」
「まあ、そうですね」
「おまえにメッセージを送ったから来たのかと思った」
「え?」

確認すると、たしかに冨岡先生から「体育教官室へ来い」とメッセージが送信されていた。

「まさか外側から来るとは思わなかったな」
「たまたまです」

冨岡先生はスマートフォンをポケットにしまうと、大きなため息をついて空を見上げた。
もうだいぶ辺りは暗い。


「苗字」
「あ、はい」
「そろそろ良いだろう」
「?」
「もう男女交際をしてもいい頃だと思わないか」
「えっ?」
「俺とおまえだ」
「えっ!?」

これは、もしかして告白?

「俺は何年待てばいいんだ?」
「な、なんねん、て、え?冨岡先生…」
「鈍感なのか?おまえは」
「ど、どんかん、なんでしょうか」

ぐいっと体を抱き寄せられたと思ったら、驚くほど濃厚なキスをされた。
人生で初めてのキスだった。
それがこんなにも大人なキスなんて。


「我慢した分、死ぬほど愛してやる」
「せ、先生って、そんなキャラでしたっけ…?」
「黙れ」


口で口を塞がれたことも初めてだ。
真っ暗だから、きっと誰も見ていないよね。


よく分からないけど、私の長い長い片思いの物語はようやく完結するみたいだ。


end


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