悪夢とウキョウとヒロインの話
「……」
「ウキョウ?離してくれなきゃ朝ごはんの用意できないよ…私今日は学校あるし」
怖い夢でも見たのだろうか。私のお腹に頭をぐりぐりと押し付けて俯く彼は怯えているようにも見えた。
「ウキョウ?ほら、よしよし」
そっと、サラサラとした髪を撫でてやる。今日は確か二限からだしもう少し遅くなっても大丈夫だろう。
「…君は、ここにいるよね、…確かにここに存在してる」
「うん。してるよ?ウキョウの恋人として貴方の隣にいる。他の誰でもない、貴方の」
背中に手を伸ばしポンポンとあやすように叩いてやると落ち着いたのか顔を上げた。思った通り少し泣いたようだ。
「ふふっ、もう泣き虫なんだから。」
「もう、また泣き虫って言った!いや、本当の事なんだけど!…あぁもう、またアイツに怒られちゃうな、君の前で泣くなって」
照れたように笑う彼の頭を引き寄せ抱き抱えるようにすると大人しく受け入れてくれる。
「あのね。私は世界で一番ウキョウが好きだよ。他の人達より辛い思いをしてる分ウキョウにはもっともっと幸せになる権利があるのです。それで、ね」
そっと頭を離し、額にキスした。
「そのウキョウを幸せにするのは私の役目。私しか貴方を幸せにできない、ううん、私以外に幸せになんかさせない」
ね?、と笑いかけるとみるみるうちに涙目になっていく。
「君…ねえ、反則だよ。俺は君でしか幸せになれない。誓える」
ちゅ、ちゅと額、瞼にキスを落とされる。
「側にいてくれてありがとう。愛してるよ」
泣き笑いの、綺麗な笑顔で囁いてから彼は唇にキスをくれた。
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