携帯のアラームの音で目が覚める。朝6時15分。いつもの時間と風景にほっとしながら、上半身だけ起こして伸びをした。

「んん・・・」

横でなまえさんがもぞもぞと動く。寝起きはとてつもなく悪いけれど眠りが深いわけではないらしく、俺のアラームでこの人はいつも1度目を覚ます。

「けーじくん、」
「おはよーございます」

うっすらと目を開いて、頬をゆるませて。布団から出ようともせずなまえさんは俺の名前を呼ぶ。おでこにキスをすると彼女はくすぐったそうに笑った。

俺となまえさんは大抵同じ時間に家を出る。たまになまえさんが早めに行くとき以外は一緒に駅までの道を歩いて、同じ沿線上の反対側のホームから出勤する。2人とも通勤時間はだいたい30分、始業は8時半。

朝食は簡単にしているし、サラダなどは前の晩に仕込んでいるからだいたい用意に10分ほどしかかからない。なまえさんは支度が異常に早いから(化粧なんてそれこそ10分で終わらせいる)、ギリギリまで寝ていたい彼女に合わせて7時に出来上がるようにしていればいいから、自分の支度を合わせても6時半に起きたら充分間に合う。

でも俺はそれより15分早く起きて、朝のちょっとしたなまえさんとのスキンシップを図るのだ。

「なまえさん」
「んー・・・?」

彼女を完全には覚醒させない程度に。最初はなまえさんが寝ているのがちょっと面白くなくてやたらとちょっかいを出していたが、一度「そういうつもりなら同棲を解消する」と寝ぼけ眼ながらもガチのテンションで言われてからは気をつけるようにしている。ちゃんと起きた後に謝ったら「私そんなこと言ってない」と慌てて弁解されたが。

一度伸びをしてから再び寝転んで彼女に腕を差し出す。なまえさんがむにゃむにゃ言いながらそれを枕にして俺に抱きついてくるのがいつものパターンだ。

「けーじくーん・・・」
「なんすか」

あったかい、となまえさんが笑う。抱きしめて髪を梳くと気持ちよさそうに目を細めて、よく寝ることも相まってまるで猫みたいだ、と思った。猫の割に俺に一途でいてくれるけど。

力を入れて抱きすくめると少しだけ苦しそうな声が漏れた。俺は彼女のこの声が好きだ。別にサディストってわけじゃない。んう、と高めの音が耳を揺らすのが心地いい。

ぴぴぴ、と6時半を知らせる2度目のアラームが鳴る。そろそろ支度を始めるか、となまえさんから手を離して立ち上がると彼女はすんなり今度は布団に抱きついた。

「・・・俺は布団がわりですか」ぼそりと呟く。ものともせずに幸せそうな顔で寝ているから、まあいいか、とジャージを脱ぎ捨てながら思った。今日の朝飯は何にしようかな。





 寝惚けた顔は僕の特権


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