「Z市の危機」


《…繰り返します!緊急避難警報!災害レベル竜!…》


「…竜!?」

わたしは、通学鞄を投げ出さんばかりの勢いで走った。

かなりの大きさの隕石がZ市に向かっているらしい。

道路や歩道に、逃げることを諦めた人達が涙を流しながら呆然と立ち尽くしている。

「もうダメだ…。」
「今までありがとうな…。」

そんな悲痛な声が聞こえる。

それでも、わたしは諦め切れなかった。



この街には、あの人がいる。




「サイタマさん!!」
「お?ソヨカゼじゃん。今日はやけに早いな。」
「緊急避難警報が出たんでみんな避難してるんです!」
「えっマジ?あ、そういえばジェノスが収集されてたな。」
「ジェノスさんが?」

わたしはここに来る途中で、上空にメタルナイトらしきロボットを見ていた。
もしかしたらジェノスさんもメタルナイトと共闘していたのかな?

…でもメタルナイトは他のヒーローと協力なんてするんだろうか。



「あ!そーだ、災害レベルは?」
「竜です!!隕石が近づいていて…!」

サイタマさんはえーと確か竜は…と思考を巡らせている。

…もしかして災害レベルっていう概念を知らなかったのだろうか。

サイタマさんは何やらパンフレットを取り出す。確かあれは、ヒーロー協会が配っているものだ。

「ああ、神の1個下のやつか。それにしてもお前、怪人だけじゃなく隕石まで引き寄せちゃうとは恐れ入ったぞ。」
「わたしの体質とうとう宇宙にまで影響及ぼしちゃったんですか!?…って、今回ばかりはわたし関係ないと思います!!」

サイタマさんは冗談だよと笑いながら支度を始めた。
毎度のことながら完全否定出来ないのが悲しい…。

「どれくらい近づいてんのかなー。」

サイタマさんはベルトを締めながらそんなことをぼやいた。


サイタマさんが出動してくれる。
これでZ市の消滅は免れるだろう。

わたしは安心して胸をなで下ろす。



「よし、行くか。ソヨカゼ、お前も一応来い。」
「え?わたしですか…?わたしなんかが行っても役に立たないと思いますが…。」
「まあそうだろーな。」

きっぱりと!!まあそうなんですけどね!!

「ジェノスいるんなら、アイツといた方が安全だろ?」
「そ、そうかも…ですね。」
「よし、掴まってろよー。」
「え?どこに…うわ!!」

わたしはサイタマさんの肩に担がれる。
そして地面が急激に遠くなっていく。


サイタマさんの人間離れした脚力で目的地に向かっているようだ。


「ひ…ひぃいい!」
「高いとこ怖いのか?なら下見ない方がいいぞ?」
「いやこの体勢で下を見ないのはキツイです!!」
「ははは。うん、普通に話せてるから大丈夫だな。」
「大丈夫じゃないで…あ…酔ってきた…。」
「何!?おいマントに吐くなよ!?」


そしてわたしたちは、なんとかジェノスさんと、何やら貫禄のあるおじいさんのいるビルの上に降り立った。


続く


公開:2017/01/22/日


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