約束
彼とわたしが出会ったのは、いくつの頃だったろうか。
とにかくお互い幼かった。
彼は野の花の千切ってきたものを、わたしに突き出しこう言った。
『俺がもっと強くなったら、必ずお前を迎えに行ってやる。だから、それまで待っていろ。』
そして彼は消えた。
「忍者め…!とにかく姫様をお護りしろ!」
「奴はどこだ!!」
「さ、さっきは目の前に…、突然消えて…。」
「くそっ、恐ろしく速い奴だ…。」
殺せ。
「ぐああっ!?」
「なんだ!どうし…ごふぁ!」
殺せ、殺せ。
「他愛ない。そんな貧弱な体で護るべきものを護れるのか。」
こんな奴らが彼女を閉じ込めていたと思うと怒りが湧き起こる。
殺してしまえ。
お前らに彼女を護る資格はない。
「奴の狙いは姫様だ!お前達は姫様の安否を確認しろ!俺達は曲者をぉごはっ!」
「ひぃっ…!」
長い長い時間を寂しく過ごしたことだろう。
俺が自由を与えてやる。
「ヒッ!きた!」
「騒ぐな!さっさと始末し、」
「始末されるのは貴様らだ、馬鹿め。」
ゆっくりと地に伏す男達。
屋敷中が静寂に包まれたように静かになった。
彼女への道が拓ける。
引き戸に手をかけ、一気に開けた。
「やっと来たのね。」
背を向けた女性。
落ち着いた声。
少し大人びた雰囲気。
「…ソヨカゼ。」
「待ちくたびれたよ。ソニック。」
笑った顔が、あの日のままだ。
「約束通り、迎えに来たぞ。」
「うん。待ってたよ。本当に、強くなったのね。」
「当たり前だ。約束したからな。」
抱き締めて額にキスを落とすとソヨカゼは俺に抱き着いた。
「ありがとう。本当に来てくれて…ありがとう。」
「俺は約束を必ず守る男だからな。ソヨカゼも、信じて待ってくれていたようだな。」
「うん…うん。」
横抱きで持ち上げると、窓から飛び出した。
「しっかり捕まっていろ。俺は速いからな。」
「うん。言われなくたって、離さないよ。」
「ああ。そうだな。」
幼い子どもの約束。
いつ来るともわからない人を待ち続けた。
これからはきっと、なんの邪魔もない。
だから、ずっと2人で。
fin.
公開:2017/11/02/木
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