祭りのあと


「みんな!おかえりー!!」
「…。」

ボク達幻影旅団の内の6人は、流星街に巣食ったザザンを筆頭とするキメラ・アント達を全滅させ、戻ってきた。
ボク達を出迎えたのは、他の住民と違ってマスクや防護服を着ていない普通の少女と少年。
流星街入りした時も迎え入れてくれたのはこの二人だった。
フィンクス、フェイタン、シャルナークと随分仲がいいみたいだ。

「ただいまー!ティー、ティノ!」
「よかったー、みんな元気だー。」

ティーと呼ばれた少女は嬉嬉として駆け寄って来た。
そして突然ピタリと立ち止まる。
それからパッと目を大きく見開くと叫び声を上げ、両手で顔を隠し背中を向けた。

「…えっ?」

なんだ?この反応…。

「やだー!フェイどうしちゃったの!?」
「何がね。」
「ふ、服!服!」

…どうやら恥ずかしかったらしい。
確かにフェイタンは先の戦いのせいで、今は上半身に何も纏ってない状態だけど…。
ていうか、服より体を心配しないのかな?女王と戦って、腕折れてるけど…。

「どうだったの、アリとかいう連中。」
「おう、楽勝だったぜ。」

ティノという少年の問いに、フィンクスが力こぶを作って笑う。

「楽勝!?フェイがそんなになってるのに!?フェイのアレ発動したんでしょ?いいなぁ…また見たいなぁ…。」

この子、フェイタンの技知ってるの!?しかも見たことあるって…。
ほんとに何者なんだろう。

「ワタシ鈍てただけね。大したことなかたよ。」
「ぶっちゃけ、一番強かったのがあの程度の女王だったしね。」
「アリって結構大したことないんじゃないか?」
「私の相手は結構強かったよ。多分、相性の問題だと思うけど。」

やっぱりコイツらおかしいよ…!
確かに末端のアリは大したことないけど、女王レベルはとてもじゃないけどボクには勝てなかったと思う。


「ムリムリ恥ずかしい見れない!!」
「今更ね。」

フェイタンとティーが(一方的な)追いかけっこしていると、ふとシャルナークの携帯が鳴る。
ティーとフェイタンも、思わず立ち止まったみたい。

「団長か!?」

フィンクスが反応するけど、メールの相手はノブナガで、何かの仕事の誘いだったみたい。

「あーぁ、ただ待つ身はつれぇな。」
「なんかフィンクス、片想いの女の子みたい。」
「乙女ちくね。」
「んだと!?」

ちょっと、怪我人だよ?シャルナークはともかくフェイタンは腕折れてるのに…。
追いかけるフィンクスもフィンクスだけど、余裕で逃げ回る二人も二人だ。



「ったくよー。」

フィンクスがかったるそうに戻ってきた。
シャルナークとフェイタンは少し離れた場所で何やら話してる。


「相変わらずだねー、皆。」
「クロロがいないといまいち締まらないよね。」
「ンだと、ティノ坊?」

がしがしと頭を撫でられ、不機嫌そうなティノ。彼は随分とクロロに肩入れしているみたいだ。


「あのね、皆…実は私ね…。」

ティーがとてつもなく言いづらそうな顔をした。
なんだろう?何か重大な秘密が…?

「実はね…私もキメラアントにやられて、今私の中で私とアリがごちゃごちゃの状態なの。」
「えっ!?」

ボクは慌てて身構える。
なんて爆弾発言を今更…!?

「馬鹿言え、お前アリ何体か殺ってんだろ。」

「…え?…えぇ?」

フィンクスが一蹴する。
ちょっと待って、この子念能力者?
隠してるのか?熟練者だって、全くの未習得者を演じるのは難しいハズ。

ボクと同等…いや、まさかそれ以上?

「私、殺しはしないよ!ティノの能力で家の片付け手伝わせてるだけ。」

家 の 片 付 け !?

「皆が帰ってくるって聞いてから姉ちゃん暴れまくってさ。家崩壊したんだよ。今、再建中。」
「嬉しかったんだもん〜。」

どういうことだよ。

「お金ないし流星街の人に頼むわけにもいかないから、ちょっとあのサザン?って人のとこから借りてきただけだよ。」

この子さらっとすごいこと言ってない?

「いとしの○リーってか。"ザ"ザンだよアホ。」
「そこって隠す必要なくない?」
「あ、大丈夫!ちゃんと家ができたらあの人達も解放するし。」
「姉ちゃん、さっきから気になってたけど、人じゃなくてアリだよ。」

みんな、そこじゃない。

「解放しちゃダメなんじゃ…。」

ボクが呟くと、ティーは、あぁそうか!と頷いた。
大丈夫か?この子……。

「でもティーは故意に殺さないんだよね。」

ティーはシズクの言葉に力強く頷いた。
"故意に"……?

「約束したもん!」
「念も大してできないくせに偉そうにすんな。」

大して出来ないって、本気で言ってるの?フィンクスは気付いてるハズだよね…?
もう、どうなってるんだこの人達。

「何よう!発だって習得してますー。」
「ちょっと攻撃通さないだけだろ。」

それちょっとなの?

「とっくにレベルアップしてるし!」
「ダメなもんはダメなんだよ。」

ティー、落ち込んじゃった。
どうしてそんなに念にこだわるんだろう。

「ねぇ私ってホントはもう十分な能力者なんでしょ?そろそろ私も旅団に入れてよ。」

この子…旅団に入りたかったんだ。
でも、昔馴染みみたいだし…どうしてティーは仲間はずれなんだろう?

「ったくじゃじゃ馬娘が…。言っていいのか?これ。」
「フェイタンにバレなきゃ大丈夫じゃない?」

え、なんでここでフェイタンが…。

「実はな、クロロは昔からお前を入れたがってたんだよ。」
「クロロが?」
「でも、フェイタンがお前を入れたがらなかった。」
「え?」
「お前を危険な目に合わせたくないんだと。殺しもして欲しくねぇってさ。」

…ああ、そういうこと。
どうりでここに来てから、やけにフェイタンとティーの距離が近いわけだ。

「フェイ…。」

ティーが、嬉しいような寂しいような、そんな複雑な顔をする。

「それに、姉ちゃんは向いてない。」
ティノが少し声のトーンを落とす。

「…ウヴォーとパクのこと聞いてから一週間仕事になんなかっただろ。」

「そういうことだ。」
フィンクスがティーの頭にポンと手を置いた。
「お前はお人好しすぎる。」


「もう、思い出したくないよ。」
「?」
「思い出すのは、楽しい思い出だけがいい。」

ティーは、悲しそうな目を閉じた。
でも、その口元には笑みが浮かんでいる。



「あれ、皆何の話?」
「フィン、その手退けるね。ティー潰れるよ。」

シャルナークとフェイタンが戻ってきた。
そろそろ解散かな。

「…フェイってば、私のこと大好きすぎるよね!」
「は?何言てるか。」
「えー?何話してたんだよー。」

さてと、ボクはもう家に帰ろう。
自分の置かれた位置を、こんなにも分からされたんだ…父さんに稽古をつけてもらわなきゃ。

「オレ達もしばらくここに残ることにしたんだ。今後のことは完治してからまた考えるよ。」
「久しぶりにティーのクソまずい飯食うね。」
「クソ美味しいの間違いだよね!」


流星街。
やっぱり変な所だ。
でも、得るものはたくさんあった。


「カルトちゃん!」
「!」
「また遊びに来てね!」

…ほんと、なんなのかな?この子。
なんか調子狂う…。

「…ま、また。」

今度、あの子の能力見せてもらいに来ようかな…。


fin.




公開:2018/07/30
数箇所改変:2019/03/02


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