これからも


「鉄朗!誕生日おめでとう!」
「おう、ありがとなー。」

黒尾宅にてお泊まりをしていた日和は、時計が0時を回った瞬間、待っていたかのように大声を張り上げた。
黒尾は一瞬びっくりしたが、すぐにいつものように笑った。


「18歳…これが意味示すもの…分かるよね?」

日和は唐突に声のトーンを落として、黒尾に聞いた。
黒尾は日和の変わりように驚くが、すぐに思案を始めた。

「え?えーと…、」

数秒後にパッと閃いたような顔をする。

「ハッ!………18禁解禁。」
「ちがーう!」

日和がベッドをばふばふと叩いた。

「違わねーだろ?」
「違わないよ!違わないけど!」
「男子は誰でも通る道だもんなぁ。」

黒尾が何気なく呟くと、日和はピクリと反応した。

「…鉄朗も…そういうので…?」
「ん?ああまぁ、たまにな。」
「………くっ!」

悔しそうに布団を叩く日和に、黒尾はのほほんと笑った。

「安心しろ、女優は全部日和に置き換えてる。」
「いや、気持ち悪いわ!」

日和が盛大に突っ込むと、黒尾は悲しそうに眉を寄せた。

「しょーがないだろ!男の性だ!」
「堂々と言うのやめて!?」

日和はコホンと咳払いをした。

「…まあ鉄朗の夜のおひとり事情はいいの。問題は、18歳…、18禁解禁は無しにしてね?」
「うんうん。」
「……結婚可能年齢!!」
「おぉっ!?」

そう、日和が言いたかったのはこれだった。

「わたし日和、16歳!あなた鉄朗、18歳!!つまり!!わたしたち今すぐにでも結婚できるよ!?」
「おおおっ!?」

日和は自らの手を絡め、瞳を輝かせて虚空を見上げた。
しかし黒尾は冷静だった。

「まあでも高校在学中は無理だろうけどな。」
「…うっ!」

日和は、大袈裟に布団の上に倒れ込んでみた。
その体制のまま黒尾を睨みつけた。

「わかってるよ、それくらい!」

目は少しだけ潤んでいる。
黒尾は、そんな日和を見て苦笑した。

「なんだお前、そんなに心配か?」
「え?」

黒尾は布団に顔を押し付けた日和に近付いた。

「どうせ俺達、するだろ。結婚。なんでそんな急いでるんだよ?」
「鉄朗…。」
「俺が気変わりするとでも思ってるのか?」

黒尾はケラケラと笑う。
そんな黒尾はちらりと見遣ると、日和は少し不貞腐れた。

「心配なものは心配なの!」
「そうかぁ。」

黒尾は少し寂しそうな声を出した。
日和が心配そうに黒尾を見ると、彼は日和の腰に手を回し、自分の方に引き寄せた。
必然的に、黒尾の腕の中に収まる形になる日和は、顔を赤くしながらも身を預けた。

「ま、しばらく2人の時間を楽しもうや。結婚したら子どもとか作ったり色々大変だろ?」
「こ、こども!」

日和はかぁっと顔を赤くした。

「なーに考えてんだよ、日和ちゃん?」
「う、うるさい。」
「照れちゃって〜。」
「うるさいー!」

黒尾が楽しそうに笑うのを見て、日和は安堵する。
なんにせよ、今日は黒尾の誕生日だから、彼が楽しければそれでいいのだった。

「じゃあさ、こうするか。」
「?」
「ペアリングでも買う。約束のしるしな。」
「え…!」

日和は、目を大きく開いて黒尾を見上げた。

「…でも、せっかく今日は鉄朗の誕生日なのに、鉄朗にそんな高い買い物させるのは…。」

日和は数秒間考えてから、戸惑うような声で言った。

「別に買うのは今日なんて言ってないだろ?せっかちだなあ。」

黒尾は苦笑する。
日和ははっとして黙り込んだ。


「進学しても就職しても、俺どうせ一人暮らしするからさ。遊びこいよ。…いずれは同棲もな。」
「!!どっ、どどっ…!?」

同棲、どうせい、ドウセイ…。
日和の頭の中で、言葉が繰り返される。

鉄朗と、同棲?

それは、日和にとってなんとも素晴らしい響きのように思えた。

「なーにニヤけてんだぁ?」

黒尾は楽しそうに、日和の頬をつんつんとつついた。
日和は別に、と更にはにかむと、黒尾も口角を上げた。


日和は、向きを変えて黒尾と向き合う形になって抱き着く。


「これからもよろしくお願いします。」

「おう、よろしくお願いシマス。」


言い合って、更に腕に力を込めた。




fin.



誕生日おめでとう、クロ。


公開:2016/11/17/木


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