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▼乙女心とはそういうものなのです






夕方母親が米がないからこのままでは明日のお弁当がままならないと言い始め、仕方なく米を買いに外に出た。今急に米が足りなくなるってそんなことある?母親は変なところで抜けている。


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米が結構重たい。自転車漕いできたら良かったと後悔した。よろよろと歩いていると、前方に人影が見える。その人影は身長が高くてそういえば角名くんもそれぐらいの高さだったかな、なんて思った。
しかしよくよく見るとまさかの本人だった。コンビニの帰りだろうか、ビニール袋を下げている。こんな時に会うなんてどうしよう。すっぴんだし、適当な服だし、髪も雑に纏めてあるだけだし。向こうはこちらに気がついていないのが幸いである。
しかし、タイミングの悪いことにひっくり返っていた蝉が急に足元から飛び立ったのだ。それに驚いて声を上げてしまった。
「……ぅわっ!」
「…みょうじ?」
角名くんは振り向いてしまった。私だと認識されてしまったらしく、こちらへ近づいてくる。
「買い物?」
「あー…、母親のおつかいで」
頼むこちらを見ないでくれ、という気持ちで角名くんの顔が見られない。
「みょうじ何でこっち見ないの」
「い…今すっぴんだから……」
「ああ」
なるほど、と納得はしたみたいだった。そして目線は私の手元に移る。
「それ重そうだけど何買ったの」
「お米だよ。結構重たい」
「貸して」
手が米の重さから開放される。軽々持つその腕の逞しさにきゅんとした。
「ありがとう角名くん」
「ついでに送る」
「えっ今日幸せ過多で私命落とさない…?」
大袈裟な、と角名くんは言うけど私は至って本気だ。
「……っていうかみょうじ遠くない?」
「うー…だって今適当な格好なんだもん…」
今私は角名くんと1mくらい離れて歩いている。角名くんと並んで歩けるのは嬉しいけどここまで手抜きの姿で並ぶのは乙女心に複雑だ。
「そういうもん?」
「そういうものなのです」
ふーん、と興味無さげに言う割にはちらちらとこちらを見ている。
「な…なに?」
「んー、寄ってこないみょうじが新鮮で」
「えっ寂しい?寂しい?」
「……」
「あっごめん調子乗った、すたすた歩いて行かないで!」
私の家の場所知らないでしょ!置いていってどうするの!角名くんに追いつき、ちらりと見上げると目が合った。
「ちゃんと俺の横歩いててよ」
みょうじちっちゃいし見失うかもよ、なんて彼は言っている。今だけは角名くんの隣を独り占めだ、と思った。複雑な乙女心とやらはどこかへ行ってしまった私は角名くんの隣に並び、はーい、と元気よく返事を返すのだった。








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