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▼貴方が誰より一番なんです






ついさっきの出来事は夢ではなかったのだろうか。あの後自宅へ帰り、ぼんやりとしたまま夕飯を済ませてお風呂へと向かった。今は湯船に浸かって思い返しているところである。
唇に触れたあの柔らかな感触。これが夢だったらどうしよう。そうだとしたら確実に泣いてしまう自信がある。いやさっきは嬉しくて本当に泣いてしまったんだけれど。


『みょうじ、好きだよ』


彼の声が、言葉が脳内をリフレインする。ほんとにほんとに角名くんと、り、両思い……?ぐるぐる考えていたら、長風呂になってしまったかもしれない。火照っているのは逆上せたからか、それとも彼のせいか。その晩は当たり前にぐっすり眠れるわけなどなかった。


■□■□■


そんな出来事のあった翌日。時間はあっという間に過ぎ行き、すでに放課後だ。タイミングがいいのか悪いのか今日は部活がない。体育館の点検が入っているのだ。
「みょうじ」
「ひ、ひゃいっ!」
後ろから角名くんに声をかけられて返事が見事にひっくり返る。帰る準備をしていた手を止めて彼の方を振り返った。
「帰ろっか」
「う、うん!」
止めていた手を動かして、大急ぎで帰り支度を整えた。


■□■□■


並んで歩く帰り道。角名くんと帰ることは大して珍しいことではないのだけれど。いつもと変わらないはずなのに私はかなり緊張していた。
「みょうじ」
「何でしょう?」
「改めて言うけど俺と付き合って欲しい」
彼の口から出たその言葉に、思わず私はぴたりと歩みを止めてしまった。
「……ゆ、」
「ゆ?」
「夢じゃなかった……」
「頬抓ろうか?」
「お願いします」
「冗談だったんだけど」
そう言いながら角名くんは私の頬に手を添える。何だかんだ言いながら頬を抓ってくれるつもりなのだろうか。そう思いながら目を合わせると、とんでもない言葉を放たれる。
「抓るのは冗談だけど。もっかいキスでもしたら信じる?」
「えっ、いや、それは!信じる!もう信じますから!」
心臓に悪いのに!それでも近づいてくる彼の顔。お互いの唇の距離がゼロになり、ゆっくりと離れていく。
「…………信じた?」
「…………そりゃもう……」
ここまで来たらもう夢だと思いもしないよ。当初は執念とまで言われていたけれど、この勝負きっと私の粘り勝ちだ。……それにしても。
「なんだかとってもぐいぐい来ますね角名くん」
「みょうじのこれまでの頑張りに応えなきゃと思って」
身体の横にあった手はいつの間にやら彼の手に繋がれ、ぎゅっと握られている。手のひらから伝わる彼の体温にドキドキした。
「こ、小出しにしてね?」
急に全開にされたらドキドキで心臓が爆発してしまうから。ちらりと彼の横顔を見ると、薄く笑みを浮かべている。
「ふふ。善処するね」
「絶対しないやつじゃん……」
これからの私の心臓への負担が非常に気がかりではあるものの、角名くんが楽しそうだから何でも良くなってしまう。これから先、ずっと彼には勝てないんだろうなぁ。惚れた方が負けとはよく言ったものだし。それでもそれでも愛の大きさではまだまだ負けないからね、角名くん。


「角名くん角名くん」
「なぁに」
「大好き!」


このありあまるほどの愛をどうぞ召しませ!





END




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