×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

▼届けばいいと思ってました






2月14日といえばバレンタインデーというのは周知の事実だろう。どこもかしこも甘い匂いと赤やピンクのデコレーションが目立つ。
かく言う私も1人の乙女として今年もチョコを配り歩いている。3年の先輩方にはお世話になった気持ちを返したいのだ。すでに先輩方は引退しているのでクラスを訪ね歩いている。
「失礼しま……あ、信介先輩!」
「みょうじやん。俺に用事か?」
「ハッピーバレンタインです」
「ああ、すまんなわざわざ」
ありがとう、と言って信介先輩は私からのチョコレートを受け取った。
「部活でも今年も配っとるんか?」
「はい!練習後に配る予定です」
「抜かりないなぁ」
信介先輩に褒められてしまった。嬉しい。他の先輩方にもチョコをお届けするため、話も程々に先輩と別れた。


■□■□■


信介先輩に告げた通りに部活でもチョコを配ったその帰り道。部活で全員に配ってはいるけれど、角名くんのはまた別に用意している。それを彼に手渡す。
「今年のは深い意味はないから。いつものお礼というか」
「……ないの?」
「……嘘。あるけど気持ちは返さなくていいから」
お世話になってるお礼ということにして渡したかったけれど、やっぱり自分の気持ちを誤魔化しきれなかった。
「今年はねぇブラウニーにしたんだよ」
「ふぅん……ね、これ食べていい?」
「え、今?」
「うん」
「いいけど…」
普段の彼からはあまり見られない行動に驚く。座れる場所ということで、バス停から少し歩いたところの公園へ向かった。さすがにこの時間と季節である。私たちの他に人は居なかった。
角名くんは自動販売機で飲み物を買っている。木の下にあるベンチに座ると、隣に腰を下ろした角名くんにペットボトルを手渡された。どうやら私の分まで買ってくれたらしい。
「はい」
「わぁ、ありがとう!角名くんよく私の飲みたいものわかるね?」
「みょうじのことよく見てるからね」
「それは照れるなぁ」
そんなに見られていたのか、少し恥ずかしいな。というかこれからいつ見られても大丈夫なようにしないといけないのでは。幻滅されてしまわないようにしないと。
「言っとくけど、俺好きでもない子のことよく見ないし、ましてやこんなに一緒にいないから」
「……?、っ、えっ……」
聞き間違えたかと思って角名くんを見ると、予想外に目がばちりと合った。


「みょうじ、好きだよ」


その瞬間、時間が止まってしまったかと思った。それはそれは綺麗に彼は微笑む。
「え……?す、角名く、ん」
「もう愛想尽かしちゃった?」
「そんなこと、ないに決まって…」
決まってるよ、までは言い切れなかった。ぽろりと目から涙が溢れてしまって言葉にならなかったのだ。
「泣かないでよみょうじ」
そう言って涙を拭いながら、彼は私の唇にそっと口付けた。








Back