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▽お呼びではありませんか






焦燥感、というのだろうか。やっぱり彼女には自分の傍に居て欲しいと強く思ったのはその瞬間だったように思う。


■□■□■


その日、俺は2年生4人で某ファーストフード店で課題をやる予定だった。課題の進み具合は聞かないで欲しい。
早々に集中力が切れたのは、やはり侑だった。バレー中の集中力はどこへ行ったんだ。
「もうあかん。3時間くらいやっとるやん」
「まだ30分も経ってないっての」
引退後も何かと俺たちを気にかけてくれる北さんの圧に負けて今日は集まっているのだ。
「こいつ、いっぺん痛い目見たらええねん」
「なんやと」
「侑、挑発に乗るな。治も要らんこと言うな」
銀がぺしんと双子の頭をはたく。俺も自分の課題をやらなくてはと問題集に視線を落とした。
しかし数分後、再び侑が口を開いた。
「なあ、治」
「なんやねん……って、あれ」
また治にちょっかいでも出したのかと思えば二人して窓の外を眺めている。その視線の先を辿ると見知った姿があった。
「みょうじ?……と誰やあれ」
隣に座っている銀も同じ方向を見ている。4人全員が見間違えるなんてことはないだろう。あれは確実にみょうじだった。見知らぬ男子と仲睦まじく歩く光景がそこにはあった。彼女が通り過ぎて行ったあと3人の視線はこちらへ集まる。
「………何」
「角名、元気出しや」
「何かの間違いやて」
「双子うるさい。銀も憐れむような視線やめて」
そもそも俺とみょうじは付き合っていないのだ。あれが彼氏であろうとなかろうと何も言う権利などない。
ふと文化祭の時のクラスメイトの言葉が過ぎる。『あれで結構人気やってんで』。そりゃあ小柄で可愛らしい見目をしていて、性格も真っ直ぐで明るい
人懐っこい笑みを向けられれば大抵の人間は好ましいと思うだろう。事実俺も好ましいと思う。いや、本音を言えば彼女のことが好きなのだ。
認めてしまえばあとは早かった。俺はみょうじの好意に胡座をかいているだけなのかもしれない。春高も終わった今、延ばしに延ばしていた気持ちの整理を付けるべきだ。うかうかしていられない、こうしてはいられないと気持ちが逸る。
ペンを持てども集中力は地に落ち、この日課題など進むわけがなかった。








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