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▼雨の日が好きになりそうです






秋雨ってやつなのかな。窓から見えるしとしとと降る雨は止みそうにない。しかし今日の私は以前とひと味違うのである。カバンにちゃんと傘があるのだ。なんて嘘、ほんとは折りたたみ傘をカバンに入れっぱなしだっただけである。
それでも傘があることに変わりはない。バスの時間を確認しつつ、下駄箱で靴を履き替えていると後ろから角名くんがやってきた。角名くんは外を見て雨じゃん…と零している。
「角名くん傘ないの?」
「朝天気予報降水確率0%だったから」
「角名くん知ってた?降水確率0%でも雨は降るんだよ」
「……マジ?」
これは至って事実なのですよ、角名くん。確かテレビか雑誌か何かで知って驚いた記憶がある。
「やむまでちょっと待とうかな」
「お付き合いします!」
ということで玄関で雨やどりである。しかし傘があることを言いそびれてしまった。もう少しだけ一緒にいれるならいいかなぁ。カバンの中にある折りたたみ傘の存在がやけに気になった。
そう言えばカバンに折りたたみ傘だけじゃなくて昨日買った飴も入ってた気がする。カバンを探り、片手に飴玉を握る。
「角名くん角名くん」
「?」
「どーっちだ!」
ばっと握った拳を角名くんの前に出す。要は暇つぶしである。
「……こっち」
「あっすごい、当たりだ」
しかし角名くんは何故か毎回当ててくるのである。この後何度かやったが全て当てられてしまった。当てるたび私が角名くんのポケットに飴玉を突っ込むので、そろそろ彼のポケットは飴玉でいっぱいになってしまっている。
「何で!?」
「………」
角名くんは向こうを向いて肩を震わせている。
「笑うの隠すならもうちょっと頑張ってよ角名くん」
「俺これでも頑張ったんだけど」
「っていうか何で百発百中なの」
「みょうじわかりやすいし」
わかりやすい?!どのあたりだろうか。そんなに表情に出ているのかな。顔をぺたぺた触ったり摘んだりしていると、再び角名くんは向こうを向いて肩を震わせていた。その角名くん越しに、遠目に傘を忘れたであろう学生が走っていくのが見えた。
「前みたいに走る?みょうじ」
「……えっと、うーん」
考えているふりをするも、角名くんには筒抜けのような気がする。さっきの例もあるし。
「……傘実はあるって言ったら怒る?」
「怒んないけど。でも早く言いなよ」
「だって…」
体冷やすじゃん、と言ってくれるのは嬉しい。しかし本音は。
「………角名くんともうちょっとだけ、一緒にいたかったんだもん」
雨音で聞こえないくらいの声量だったけれど、もしかしたら角名くんに届いてしまったかもしれない。
「ほら行くよ」
「はぁい……」
傘をさして角名くんに手渡す。角名くんとはバスを降りたら別れるので、それがいつも寂しい。まあでも今日はちょっと一緒の時間を引き伸ばせたからいいかな。
「………傘、貸してくれるんでしょ。みょうじ送ったあとも借りて行っていい?」
「!、う、うん!」
それってつまり、家まで送ってくれるというわけで。角名くんと一緒の時間が増えることに嬉しさがどんどん募る。私は顔が緩むのを隠そうと必死になるほかなかった。








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