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▼貴方との時間が1番ってご存知ですか






文化祭ももう残すところ後夜祭のみとなった。後夜祭はグラウンドの方で有志の催しがある。学外からゲストも毎年呼んでいるため、生徒はだいたいそちらへ行っている。
ジャンケンで負けてしまい、友人達と教室の片付け兼明日の準備を簡単にしておくことを任されたため、教室に戻ってきた。片付けを始めながら今日のことを振り返る。角名くんと学祭をまわれてすごく楽しかったなぁ。たくさん写真も残せて良かった。……来年も一緒にまわってくれないかな。
それにしても友人達は遅いな。グラウンドからの明かりが窓からチカチカと見える。歓声が聞こえてくる様子から大盛り上がりだとわかる。ガラリと教室の戸が開いたので友人が来たのかとそちらに文句をとばした。
「もう、遅いよ!……ってあれ、角名くんだ。どうしたの?」
てっきり彼もグラウンドの方にバレー部の面々と居るかと思っていた。
「みょうじここに居たの」
「えっ何なに、探してくれたの?!」
「いやそういうわけじゃ……なくも無いか」
期待するも友人が探してたからと返されちょっとがっかりしてしまう。スマホを見ると『ごめん!ライブで手が離せないから片付け遅れる!』の文字。これをおそらく伝えたくて私を探していたのだろう。
「みょうじは片付け?ジャンケン負けてたもんね」
「うん…。あのときパーを出せば良かったって心底後悔してる」
そう言えば角名くんは早々に勝ち抜けしていたような気がする。
「一人だったっけ」
「ううん…それが友達と一緒だったんだけど、ライブに夢中で遅れるって」
「あー…それ伝えようとみょうじを探してたってわけだ」
納得の表情の角名くんは、教室で使っていた長椅子に腰を下ろした。
「私も疲れたし休憩しちゃおうかなぁ」
「みょうじ着替えないの?」
「いやぁ喫茶の衣装可愛くて…」
ちょっぴり勿体なく思ったので着ていたのだ。普段こんな格好することなんて滅多にないし。まわりの生徒もまだ制服に着替えていない人も多いのでそこまで目立たないしね。
「可愛いでしょ?」
「………」
「もー!これでもお客さんからは結構評判良かったんだからね!」
まあ今日ずっとこの格好を見てたわけだしなぁ。試着の時に似合ってるって言ってもらったからいいか。


「……可愛いよ」


くるりとまわりながらひらひらさせていた私の動きが止まる。今の、聞き間違いじゃないよね。角名くんの顔は逆光だったけど柔らかいのがわかった。真正面から目を合わせるのが何だか気恥しくなったため、角名くんの隣にそっと座る。
「………みょうじはさ」
「んー?」
「俺のどこがいいわけ?」
「え、…………うーん、……全部?」
「ふふ、欲張り」
「人生1回きりなので!欲張るよ私は」
全部なんて言ったけど、最初に好きになったのはその優しい声だった。そしてバレーをしてる姿にどんどん惹かれていった。普段私にそれとなく構ってくれるところも好き。その過程を経て全部なのわかってないでしょ、角名くん。
ぽすんと彼が肩に凭れ掛かってきたことにより、右肩に重みを感じた。突然のことに私は目を白黒させてしまう。
「!?、…す、すすす、角名くん……!?」
「みょうじ……もうちょっとだけ、このままでいてよ」
「………うん」
そのまま何を話すでもなく二人して窓の外から聞こえてくるグラウンドの歓声に耳を傾ける。角名くん、このままっていうのは今のこの体勢のこと?それとも私達の名前が付いてないこの関係のこと?
あえて聞くような野暮なマネはしたくないな、と私は右肩の重みを噛み締めた。








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