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▼やっぱり運命だと思いませんか






春満開、桜も満開ののどかな日にも関わらず私は戦々恐々としていた。春、それはクラス替えの季節。掲示板に張り出された一覧を見るのが正直怖い。この日のためにあちこちの神社にお参りしたし星にも願った。邪すぎて寧ろ罰当たりな気もするけれど。
掲示板が近づくにつれ、人も多くなってきた。徐々に前に進む人垣の中に入ると、次第に掲示板が見えてきた。私の名前……、あった。そして少し目を動かして気づく、"角名倫太郎"の文字。
「か、神様ありがとう……!!」
今日からどこにも足を向けて寝られなくなったけど、構うものか。おそらくすでに彼も登校しているであろう教室へと急いだ。


■□■□■


友人達と交わす挨拶もほどほどに彼の席を目指す。
「おはよう!角名くん角名くん!今年も一緒のクラスだね!」
「……おはようみょうじ。朝から元気だね」
「そりゃもう。だって角名くんとクラス一緒だったんだもん…」
「…そんなに嬉しい?」
喜びを露わにする私とは反対に角名くんはローテンションだ。
「嬉しいよ〜!これは最早運命と言っても過言ではないね!というわけでお付き合いしませんか」
「過言だし丁重にお断りしとく」
「つれない!でもそこも好き!」
今日も今日とてそっけない返事だけれど私はめげないんだからね!


■□■□■


角名くんと出会ったのはちょうど1年前に遡る。それは入学式の日で、慣れないバス通学の途中だった。こっちに越してきて間もなくもあり、友達が出来るだろうか、なんて精神的にも不安でいっぱいで前日はあまりよく眠れなかった。
その日は結構人が多くてぎゅうぎゅうで、苦しいやら香水の匂いがキツいやらでくらくらしてしまった。気分が悪い…でも初日から体調崩して馴染めなくなったりしたら困る……。
「大丈夫?」
「!、…はい」
「顔色悪いよ。こっち」
そこで声をかけてくれたのが角名くんだった。角名くんは身体ごと入れ替えて手すりにもたれかかれるようにしてくれた。
「ありがとうございます…」
「新入生でしょ?俺もだからタメでいいよ」
新品の真新しい制服から新入生と判断したらしい。そう言えば彼も真新しい制服だ。背が高いから先輩かと思った。
「こっちに知り合いいないから嬉しい」
「俺も外部からだから一緒だ」
さっきまで気分も悪かったけど、どうやら幸先はいいみたい。バスが学校に着いて、クラス発表を掲示板で確かめると彼と同じクラスだった。彼にとっては気まぐれに起こした行動だったのかもしれないけれど、私の心は確実に撃ち抜かれてしまった。
一年生の1年間で徐々に距離を詰め、バレンタインに告白した。結果は撃沈だったけど、私はそこで諦めるような女ではない。そして今では角名くんの追っかけとして名物と化すのであった。


■□■□■


去年同じクラスだったから今年は離れちゃうかなって思っていたけれど、今年も同じクラスで心底安心した。やっぱりやっぱり運命だよこれは。
「これはもう運命だと思いませんか」
「みょうじの執念だと思ってる」
ばっさり切られてしまった。もう執念でもなんでもいいもん。
「あの時みたいに優しくしてくれていいのに」
「こんな俺は嫌い?」
「好きですけど!!!」
完全におちょくられている。私をイジる時の角名くんはそれはもう生き生きしている。負けませんけどね!絶対にいつか振り向かせてみせるんだから!春の穏やかな風がそよそよと窓から入る中、私は心中で強く誓った。








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