×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

▽ねぇねぇ気づいてますか






みょうじの様子がいつもと違うことに気付いたのは放課後になってからだった。
「角ー名くん!」
「何?」
呼んだだけです、と言われてその時はあまり気にしていなかった。
「角名くん角名くん」
「何?」
またしてもごめんね呼んだだけなの、と返される。
「ねぇねぇ角名くん」
「何?」
呼んだだけだよ、と言ってやっぱりみょうじはふわりと微笑んでいた。まあとにかく今日はやけにみょうじが俺のことを用もないのに呼ぶのだ。
ご機嫌なようで何よりではあるが、理由が気になる。当の本人はお茶を買いに自動販売機まで行っている。一緒に部活行くから待ってて!と言われ、特に先に行く用事もないため、言われたまま待機している。
壁に凭れてスマホをいじっていると人の気配がしたため、そちらを向く。みょうじかと思ったが、それはみょうじの友人のクラスメイトだった。
「あれ、角名部活は?」
「みょうじ待ち」
そう短く答えると納得した顔をされた。
「今日さぁ、なまえめっちゃ角名のこと呼んでへんかった?」
「ああ、うん」
「やっぱり?」
何だろう、彼女にはその理由に心当たりでもあるのだろうか。
「あれ何なの?機嫌良さそうで何よりだけど」
「あれなぁ……私が言うたって黙っといてや?」
「別に構わないけど」
「なまえのあれな、角名がなまえの話聞く時だけちょっと屈んでくれるんが嬉しいんやと」
「は?」
それだけ?と思わず返してしまうほどに大した理由ではなかった。話によれば昨日電話中にその話で盛り上がり、今日に至るらしい。
「角名、気ぃついてへんかもしれんけどあんたがちょっと屈むんなまえの話聞く時だけやで」
他の子の時は見たことあらへんわ、と言いたいことだけ言って彼女は部活へ行った。それと入れ替わりのようにしてみょうじが教室へ入ってくる。
「お待たせ角名くん」
「お茶買えた?」
「そう!聞いてよ角名くん!」
「何?」
そう言ってはっと気付いた。クラスメイトの言葉が脳裏を駆け巡る。本当に無意識であるが確かに俺はみょうじの話に耳を傾けるために少し屈んでいる。俺とみょうじには身長差がややあるため、こうすることが癖になっているのかもしれない。
みょうじは自動販売機で当たりが出たんだよとはしゃいでいる。人の気も知らないで。こっちは恥ずかしさで頭を抱えたいくらいなのにさ。しかしその照れくささも無邪気なみょうじの笑みの前ではどうでも良くなってしまう。
ごちゃごちゃした感情をごまかすように、俺はみょうじに部活へ早く行こうと促した。








Back