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▼木枯らしも裸足で逃げ出します






気温もかなり下がってきて、もう冬と言ってもいいくらいだ。そんな季節の中、我が稲荷崎高校にも文化祭という一大イベントがやってくる。
まだ準備段階ではあるものの、クラスではその準備で大盛り上がりである。うちのクラスでは和風喫茶をやる。私は裏方を希望していたのだが、女子は大半接客にまわされたため、私もシフトに組み込まれてしまった。
「うわ、外寒っ」
当日は接客にまわるとは言え、裏方の仕事をしないわけではない。今私に任されているのは看板作りの作業である。ペンキを使うため、外で塗った方がいいという話になった。同じく担当している友人と外へ出たが、中々に気温は低い。
「そろそろタイツ出さなきゃだねぇ」
「せやなぁ。そのままやとそろそろキツいわ」
お喋りもほどほどにそろそろ作業に入らなければ。真っ白の板に下書きがあるため、そこに沿ってペンキを塗っていく。下書きは友人がしておいてくれた。不器用な私ではこんなに綺麗に書けなかったので大変助かる。
しばらく看板を二人で黙々と塗っていたが、友人の集中力が途切れた。
「あー!疲れた!思ってたよりこの看板大きいし」
「休憩にしよっか」
「する!何か飲み物買ってくるわ」
友人は自動販売機へと向かっていった。その背中にコーンポタージュをお願いしたが果たして届いただろうか。
一人ですることもないのでその場にしゃがみこむ。すると見知った顔が見え、そのままこちらへやってくる。
「!、角名くん!」
「お疲れ。これ看板?」
こちらに来たのは我が愛しの角名くん。しゃがんだまま顔を上に向ける。
「そうだよ。今ペンキで塗装中なの」
「結構この看板デカいね」
「うん。だから塗り疲れて休憩中です」
角名くんは看板を見た後、こちらをじっと見ている。なんだろ、顔に何か付いてるかな。さてはペンキ付いてたりしないよね。
私がその視線を不思議に思って顔をぺたぺた触っていると角名くんが他のクラスメイトから呼ばれた。彼は彼で仕事があるもんね。
そろそろ行くね、と角名くんが言った後バサリと膝に何かをかけられる。よく見るとそれは角名くんのブレザーで。
「す、角名くん!これ!」
「足寒そうだし膝に掛けときなよ」
俺はカーディガンあるから平気、と残して彼は戻っていった。思いもよらない形で角名くんのブレザーを借りてしまった。そこに自動販売機から友人が帰って来た。
「聞いてよ!」
「一部始終見てたから言わんでええよ」
「私が寒がってるから貸してくれたんだよ〜!角名くん優しい!好き!」
「言うんかい。ちゅうかそれだけとちゃうやろ、多分」
「?」
それだけではない、とは。友人の言っている意味がわからず疑問符を浮かべる。
「あんたそんなとこでしゃがみこむから、向こう側からスカートの中丸見えやったで」
「えっ!?やだ嘘!?」
あわてて立ち上がろうとするが、膝にブレザーを掛けていたことを思い出す。そうか、それだけではないというのはこういうことか。
「角名、ええ男やなぁ?」
「駄目だよ惚れたら!」
「心配せんでもこんなんしてくれるんあんたにだけやから」
すでに寒さなどこのときめきの前ではどこかへ吹っ飛んでしまった。友人から手渡されたのはコーンポタージュではなくお汁粉だったけれど、文句は言わないでおくことにした。



▽おまけ


※角名くん視点

文化祭の準備中、外の倉庫へと荷物を運んで行った帰りにみょうじを見かけた。どうやら外で作業をしているらしい。まだ時間に余裕もあるし、と彼女の顔を見に側へ寄る。
「!、角名くん!」
「お疲れ。これ看板?」
近くへ行くとこちらに気づいたようでみょうじはぱあっと表情を明るくさせる。しゃがんだままみょうじはこちらへ顔を向けた。
「そうだよ。今ペンキで塗装中なの」
「結構この看板デカいね」
「うん。だから塗り疲れて休憩中です」
上から見るしゃがんだみょうじはいつもより小さく見えて可愛らしい。しかしこの体勢はいただけないと思った。みょうじは無防備にしゃがみこんでいるため、その、スカートの中が渡り廊下側から丸見えになっているのだ。幸いまだ渡り廊下を通る人はいないが時間の問題だろう。
俺の視線に気が付いたみょうじは顔をぺたぺた触りだした。おおよそ何か顔に付いてるのかもとでも思っているのだろう。真剣な顔でやっているのが面白くてくすりと笑みがもれる。
そうこうしていると、校舎内からクラスメイトに呼ばれた。戻らなくてはいけないが、みょうじをこのまま放っておくわけにもいかない。
そろそろ行くね、と声をかけて自身の着ていたブレザーをみょうじの膝にかけた。
「す、角名くん!これ!」
「足寒そうだし膝に掛けときなよ」
俺はカーディガンあるから平気、と残して校舎内へ戻る。これで彼女に気付かれることなく、スカートの中が見えるのを防ぐことが出来る。脚も見てて寒そうだったし、一石二鳥でしょ。満足気な足取りで教室へ向かう。
あと、牽制にもなったんじゃない?……なんて。









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