×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

▽たまにムキになりますよね






晴れ晴れとした秋の空が広がる。体育祭日和ってやつなのかな。我が稲荷崎高校では、本日体育祭が開催されている。今は中盤まで種目が終わり、昼休憩に入っている。そろそろ休憩も終わりだ。この後は部活対抗リレーがある。レギュラーメンバーは半ば強制参加だったため、俺も参加する。選手の集合場所へ向かおうとすると、その途中でみょうじに声をかけられた。
「角名くん角名くん」
「何?」
「あのですね、ハチマキを交換して欲しいんですが…」
体育祭も半分終わっちゃってるんだけど、とみょうじは口ごもる。
ベタな話ではあるものの、稲荷崎ではよくカップルや仲のいい友人でハチマキを交換する慣習がある。みょうじの様子を見るに、意識しすぎてなかなか言い出せずいたのだろう。
「ん、いいよ。はい」
ハチマキをみょうじの方に差し出す。
「えっえっ、ほんとにいいの!?」
「何でそんなに驚いてるの」
「いや……だって角名くんかっこいいから、もう交換の声かけられちゃってるかと……」
今だってダメ元でお願いしたし、などとみょうじは言う。みょうじは俺に対してフィルターが相当かかってると思うよ。惚れた欲目ってやつか、と気づくと満更でもない気分になってしまう。
「ふふ、ありがとう角名くん。すっごく嬉しい!あっ、そろそろ部活対抗リレー始まるよね?頑張ってね!」
それだけ言って嬉しそうな顔をしたみょうじは団の応援席へと戻って行った。


■□■□■


みょうじが走っていったのを見ていたのは俺だけではなかったみたいで。
聞こうとしていたわけではなかったが、隣に集まっているサッカー部の会話が耳に入る。
「みょうじちゃんかわええよな」
「お前委員会一緒やっけ」
「ええとこ見せてこい」
「バレー部には悪いけど勝ってもたろかな」
その会話に、そういえばみょうじは委員会入っていたっけと思い出す。見知った顔ではないことで一つ上の学年だと判断した。
みょうじの気持ちとちゃんと向き合うことを延ばし延ばしにしている俺だけど、みょうじに悪い虫がつかないようにしないとは言ってない。
みょうじに気があるらしい先輩は俺と同じ第4走者か。先輩を一瞥し、スタートラインに並ぶ。そしてみょうじと交換したハチマキをぎゅっと結び直した。


■□■□■


結果としてはバレー部は2位であったものの、同じ第4走者であったみょうじに気があるようだった先輩には負けなかった。走り終わったあと俺のところに駆け寄ってきたみょうじを見て、やや傷心した顔だったからわかってもらえただろうか。しかし3人くらいごぼう抜きしたのはやりすぎたかもしれない。大人気なくムキになった自覚がある。まあ俺としては虫除けも出来たし、みょうじも目を輝かせているので満足なのである。








Back