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▼それはまだ早いんじゃないですか






稲荷崎バレー部はさすが全国常連校と言うべきか、毎日の練習はなかなかハードである。そんなハードな練習もようやく休憩に入る。マネージャーである私は休憩時間も忙しいけれど。
「休憩入ってくださーい」
この大所帯に対してマネージャーは今のところ私1人なので要領よく動かなくては。
「みょうじー、俺ここから取ればええの?」
「そうだよー。治はそっち。学年ごとにボトルとタオル分けてあるから。あ、アラン先輩はこっちです」
「ありがとうな」
次の練習の用意と、週末の遠征に向けて備品もチェックしたいし、やることはたくさんだ。両手でカゴを抱えタオルを回収してまわっていると、侑から話かけられた。
「みょうじさぁ」
「なんだい侑くん」
「角名だけ名前で呼ばんのなんで?」
ドッタンと大きな音を立ててすっ転んでしまった。周りにタオルが散らばる。見かねた結がタオルを集めてくれる。優しい。
「そういやそうやんな。だいたい皆名前呼びやし」
「結ありがとう〜。侑は余計なこと言わない!」
「俺が何だって?」
この場から早く立ち去りたかったのにご本人が来てしまった。ああ、タオルさえぶちまけていなければ…。
「みょうじがな、角名のことだけ名前呼びしてへんって話や」
「ああ、それは確かに」
侑の話に角名くんが頷く。私が角名くんを名前で呼ばないのは理由があるのだ。
「みょうじ、いっぺん呼んでみ?ほれ、倫太郎って」
「へ……、えっと、…無理、爆ぜるよ」
手を顔の前でぶんぶんと振って拒否する。しかし角名くんに覗き込まれてしまっては意志薄弱と化すしかない。
「みょうじ?」
「うっ」
「ほれ」
「り、り、っ!りんっ……!っやっぱり無理!!!」
私は角名くんを名前で呼ばないと言うのは正確には"呼べない"なのである。呼ぼうとすると恥ずかしさが勝ってしまうのだ。
治が横に来て先輩方を指差し始める。
「あれは?」
「アラン先輩」
「あれは?」
「練先輩」
「あっちは?」
「信介先輩」
「これは?」
「り、りっ、りんっ!…………角名くん」
「諦めんなや」
どうしたって無理なものは無理だ。普段押しに押しているけれど、これだけは無理。双子は私で遊ぶのやめてくれ。話もそこそこにタオルを洗濯に持っていこうとカゴを持ち上げる。すると侑が呼んで来たので振り向いた。
「みょうじー」
「なに侑、もう!」
しかし振り向いた先にいたのは侑ではなく角名くんだった。


「なまえ」


「は…?は、今………?!」
ゴトンと音をたててカゴが落ちる。痛い!足の上に落ちた!でもこれだけ痛ければ夢じゃないよね!?
「なまえ」
「待って待って待って!」
「ふは、真っ赤」
角名くんは楽しんでいる。これは私の反応を見て楽しんでらっしゃる。これ以上ここに居ては私の身が持たない。戦略的撤退である。



「あいつらあれ傍からみたらだいぶ恥ずかしいけどわかっとらんのやろか」
「わかっとらんやろな」
強烈な反撃をされてキャパオーバーを起こした私はこんな会話がされていることは知りもしなかった。








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