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▽夏も終わって行きますね






スマホから連絡アプリの通知音が鳴る。部活が午前中で今日は終わったが、これは夏休みの課題をこなせという意味合いなのだろう。
『花火するから18時に浜辺に集合な!』
そんな意図は多分侑には伝わっていないであろうことがこの文面から伝わってくる。有無を言わせず参加の流れの文面も侑らしい。
みょうじは『行く!』と返している。部活で疲れていたしパスしてやろうかと思ったが、みょうじがいるなら行こうかな。……別にこれはみょうじに会いたいとかではなくて。帰りは遅くなるしみょうじの家に一番近い自分が送るのが合理的というだけの話で。誰に聞かせるでもない言い訳じみた言葉を心中でこぼした。


■□■□■


18時といっても、夏の日は長く周囲はまだ少し明るい。浜辺に着くと既に双子は花火で遊び始めていた。銀とみょうじはロウソクとバケツの準備をしている。
「あっ!角名くーん!」
「おっ、やっと来たか!」
みょうじと銀がこちらに気づいて手を2人して大きくふっている。忠犬2匹か。あいつらに耳としっぽが見えて吹き出す。


みょうじが線香花火を差し出してきた。
「角名くん勝負しよ!」
線香花火を受け取り、ロウソクの火をつける。パチパチと弾ける火花に夏の終わりを感じる。
「今年はお祭りも行けなかったから残念だよ〜」
「部活三昧だったもんね」
二人でしゃがみこみ、花火を見つめながら話す。
「打ち上げ花火とかお祭りの屋台とか今年こそは!ってちょっと楽しみにしてたのに」
眉を下げて残念がるみょうじ。その顔をちらりと見ると、みょうじの瞳に花火の明かりが映っていた。綺麗だ、と思った。
「みょうじ、――」
「あっ!落ちちゃった」
みょうじは私の負けだ〜、とへにょりと眉を下げながら笑う。バケツに終わった花火を入れてくると言ったので自分の分も手渡した。


■□■□■


彼女の後姿を見ながら、何を言いそうになったんだと自問する。口から出そうになったのは、来年一緒に行けばいいでしょ、なんて言葉だった。
「打ち上げやるでー!」
「あっ私も私も!」
はしゃぐみょうじが眩しい。俺こんなだったかな。自分の中に占める彼女の割合は日に日に大きくなっている気がする。


遠くで彼女が自身を呼ぶ声が聞こえた。
「今行くよ」
返事を返し、そちらへ向かう。波の音が妙に耳に残った。








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