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▼夜はまだまだこれからですから





※視点結構動きます



修学旅行の夜は、昼間とはまた違ったクラスメイトの顔が見られるのが醍醐味…って友達が言っていた気がする。
「やっぱり修学旅行の夜と言えば恋バナやんな!」
誰が言い出したか部屋にいた女子達は布団の上で輪になって話し出す。口火を切ったのは委員長だ。こういった場でも委員長は上手に仕切ってくれて頼もしい。彼女から順に時計回りに話し出す。
部活の先輩の話、クラスの男子の話、果ては近所のカフェのお兄さんがかっこいい話まで。話は大いに盛り上がり、ついに私の番まで回ってきた。
「私はねぇ」
「なまえはええよ」
「はいはい順番飛ばして」
「何で!?」
たくさん話せるネタはあるのに!?あっさりと順番を飛ばされようとしている。
「どうせ角名やろ」
「あんたの角名くん話は聞き飽きた」
そりゃあ、毎日の如く角名くんの話はしているけれども。せっかく普段とは違う環境だから、いつもは聞けない話が聞きたいんだとか。
「そんなぁ…」
「ほら、お駄賃あげるからジュースでも買っておいで」
「わーい、お駄賃……」
手に数百円握らされたので、仕方なくジュースを買いに出た。


■□■□■


時を同じくして男子部屋。
「やっぱり修学旅行の夜と言えば猥談やんな!」
誰が言い出したか部屋にいる男子が一箇所に集まり、猥談が始まった。まあ女子のいないところだからこそ出来る話ではある。
「あ、彼女持ちは参加させんで」
「変に生々しくなっても困るし」
なるほど、と妙な配慮だが納得する。確かにクラスの中で付き合っている奴もいるから、その後変な目で見たくはないし真っ当な配慮と言えばそうだ。などと感心していると、予想外にこっちに流れ弾が飛んできた。
「角名もあかんで」
「えっ何で」
俺彼女持ちじゃないはずだけど。別に猥談に参加したいわけじゃないからいいけど、その点は納得いかない。
「お前にはみょうじがおるやん」
「彼女じゃないけど」
大ブーイングである。しくった。
「この間なんか凄いで」
俺は見た、とクラスメイトが話し始める。
「角名が買ってきたペットボトルを手渡したら、みょうじはぱあって笑って『角名くん好き!』やと!これで付き合ってないんやで詐欺やろ!」
先日の出来事を思い出す。ジュース買ったら当たりが出たからみょうじにやったんだった。たまたまその時みょうじが飲みたいものだったみたいでえらく喜ばれた記憶がある。
外野からはリア充やんけだの滅べだの聞こえてきた。このままでは怨念の矛先がこちらに向きかねないと思い、財布とスマホだけ持って部屋の外へ出た。


■□■□■


時は少し進み、自動販売機の前で悩む少女が一人。
よし、オレンジジュースにしよ!と心の中で決めた瞬間、後ろから腕が伸びてきたと思ったら勝手にボタンを押された。
「ぎゃっ!?」
「これでしょ」
角名くんが押したのはオレンジジュースで、まさに私が飲もうと決めていたものだ。何でわかったんだろう。私と以心伝心じゃんとにこにこしてしまう。
「私のことわかってくれてる…!角名くん好き!」
デジャヴ…とか角名くんが呟いてるのは何だろう。不思議に思っていると無言でよしよしと頭を撫でられる。
すぐ部屋に戻ろうかと思っていたけど、角名くんに会えたなら時間の許す限りはここに居ようかな。
夜はまだまだこれからだもんね。








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