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▽貴方を夢に見ました






合宿の真っ最中、自主練中の体育館に監督がやってきた。夕食食べ損ねるなよ、とか言われるのだろうか。それにしては時間がまだ早い。
ちらりと監督の方を見ると手招きされたので小走りでそちらへ向かう。俺に何の用だろう。
「角名」
「何です?」
「みょうじ知らんか?」
「だから何で俺に聞くんですか」
付き合う前からセットのように扱われることはあったが、付き合ってからなおさらセットにされることが多くなった。
「だいたい吾妻はお前の傍に居るやん」
「………」
それは否定出来ない。他校との合宿の際にはあんまり離れないでね、と伝えてあるくらいである。
「明日の練習の準備を相談したかったんやけどなぁ」
「そう言えばさっき洗濯物抱えてたんで洗濯機回してるんじゃないですかね」
「まあ後からでもええわ。すまんな練習の邪魔して」
監督はどうやらなまえへの相談は後回しにするようだ。しかし彼女が洗濯機を回しに行ってからずいぶん経つ。ちょっと気になってきたので俺は彼女の様子を見に行くことにした。


■□■□■


洗濯機は部室棟の方にある。渡り廊下から少し歩いて、全部活が共用で使っている洗濯機のある部屋のドアを開けた。
中に入るとなまえはそこに居た。しかし、膝を抱えて座り込み、うたた寝していた。おおよそ、洗い終えるまで待っていて眠気に負けたのだろう。合宿も後半へ差し掛かり、疲れも溜まっているはずだから。
「なまえ」
付き合う前もこういうことあったな。あの時は教室だったか。あの時と変わらず返ってくるのは寝息のみ。なんとも警戒心のないことだ。
あの時と違っているのは俺達の関係。彼氏としてはこの無防備な状態は如何なものかと思う。今回の合宿は稲荷崎だけで行っており、見知ったメンバーであるとは言え男所帯であることを忘れないで欲しい。
「危機感持ってよね……」
自分の着ていたジャージを掛けてやる。洗濯機が止まるまでくらいは寝かせてやろうかな。
すやすやと寝ているなまえは唇が薄く開いている。あの時と違う点として、俺はもうこの唇の柔らかさを知っているんだよな。
「……いたずらされても知らないよ」
俺に、とまでは言わないけれど。起こさないように気をつけながら、そっとその頬に口付けた。








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