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▼その破壊力たるや凄まじく






桜も満開となった新学期。今年はクラス替えに昨年以上に緊張している。残りの学校生活を角名くんの隣で過ごせますように。どうにかして角名くんと同じクラスのままでありますようにと願うばかりだ。
ざわざわと賑わう人だかりが掲示板の前に出来ている。人が多くてなかなかクラスの書いてある紙は見えない。私の身長では背伸びしても無駄かもなぁ、と思っていると隣に誰かが並んだ。
「おはよ、みょうじ」
「角名くん!おはよう!」
隣に来たのは角名くんだった。今日も朝から眩しい。世界一かっこよく見えるのは彼女の欲目か。
彼なら平均身長よりも高いからクラス替えの紙は見えるだろうか。
「角名くん見えた?」
「あ、みょうじ今年もクラス一緒だよ」
「ほんと!?」
思わず飛び跳ねてガッツポーズをしてしまうと角名くんにはくすくすと笑われてしまう。
「3年間一緒とかさすがの執念じゃん」
「なんですかもう」
そんな風に揶揄うように言うからむくれていると、ぽんと頭に手をおかれる。
「嘘うそ。俺も嬉しい」
眉を下げて珍しくふわりと笑う角名くん。そういうとこずるいと思いますよ。


■□■□■


そんなこんなで新学期が始まり、下校時刻となった。今日は部活は入学式の後片付けがまだのため、体育館が使えないので行われない。
角名くんは昨日部室にした忘れ物を取りに行っている最中だ。角名くんの帰りを待つ間、私は新しいクラスの面々数人と雑談に花を咲かせていた。
「みょうじ最近あんまり角名角名言わんなったなあ」
「そうかな?」
「それは私も思てた」
ふと、私の角名くんコールの話題に移る。確かにお付き合いが始まってから騒ぐことは減ったかも。気持ちはストレートにお伝えしているのは変わらないけれど。付き合ってることはまだ誰にも言ってないからわからないよなぁ。別に隠すつもりもないが。
「もしかしてもう諦めたんか!?」
「えっ」
「ああ、あんまり角名が振り向かんから……」
「ほんなら5組の原田にもチャンスある!?」
クラスメイトの一人は原田に伝えてやらねばと呟く。なんだか話題がとんでもない方向へ舵を切り始めた。というか5組の原田くんって誰だ。どうやら好意を向けられているみたいではある。
「何の話?」
「あっ、おかえり角名くん」
そこに角名くんが帰ってきた。でもタイミングというか話題が話題だから何となく私だけ気まずい。輪に加わった彼にクラスメイトからここまでの内容が説明される。普段から角名くんはあまり顔に出さないから、なおさら彼の感情がわからなかった。
「ああ……、そういうこと。確かに減ったよね」
「せやろー?」
ちらりとこちらに目配せをされる。話題に同意はしているけれどやはり意図はくめない。
「えっと、角名くん、あのね」
「でも5組の原田に言っといてよ。なまえはもう俺の彼女だから諦めてって」
しんと場が静まり返った。何という爆弾発言だろう。
「帰ろっかなまえ」
「ひゃ、はい!」
脳の処理が追いつかず手を引かれるまま教室を出る。教室からは、はよ言え!だの赤飯炊いとくわ!だの聞こえてくるので、ひとまずありがとうとだけ返しておいた。


■□■□■


校門を出るあたりでようやく脳が追いついてきた。握られたままの右手が熱い。
「す、角名くん」
「なあに」
「さっきの言っちゃって良かったの?」
「牽制、したかったから」
俺のだって言っとかないと悪い虫がつくでしょ、と角名くんは微笑む。彼は結構独占欲が強いのだろうか。というかそれより何より。
「あ、あと名前……」
「付き合ってるんだからいいでしょ?なまえも呼んでよ」
ね?と覗き込まれて何も言えなくなってしまう。私がその顔に弱いのをわかっているのだろうか。おそらくわかってやっているとみた。
「り……、りん、……っ!!」
「もう一声」
「り、りん、くん……じゃ駄目ですか…………」
呼び捨てはまだ出来そうにない。あときっと日常的に呼べそうもない。譲歩して貰いたくて弱々しく尋ねると彼は顔を片手で覆っている。
「倫くん……?」
「ごめん、待って。呼び捨てよりぐっときた」
「!」
珍しい、顔を覆う手の隙間から赤くなった頬が見える。その顔を見て私まで赤くなってしまう。彼が隣にいるということの破壊力といったら凄まじい。こんな調子でこれから私の心臓はもつのだろうか。
ちなみに翌日本当に赤飯は炊かれていたし、長きに渡る私の片想いを知っていたクラスメイト達からは盛大にお祝いされた。








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