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夏の合宿も終盤となり、初日は都合により家に帰っていたのだが、今日は私も部員と合宿所に寝泊まりする。部員達とこんなに長い時間一緒に居ることはそうないので結構楽しい。角名くんとも長く居られるから嬉しい限りだ。
それはそれとして、今はそれどころではない。
「ううっ……絶対に許さないから……!」
「みょうじほんまええ反応するわ」
けらけらと治は楽しそうに笑う。まさか唐突に開催された怪談大会に巻き込まれるとは思ってなかった。通りすがりに半ば強制的に引っ張りこまれたのだ。所詮素人の怪談なんて思っていたら、意外なことに治の語りが上手くそもそもホラーが得意でない私は怯えに怯えた。
「そろそろ解散でいい?程々にしてもらわないと俺のTシャツが伸びきる」
「みょうじずっと握っとったん?」
「いやほんとごめんね角名くん……」
怖さに耐えるため、私は隣に座った角名くんのTシャツを握りしめていた。このままでは角名くんのTシャツが犠牲になってしまう。
「消灯時間も近いし、そろそろお開きにしよか」
やったー!やっと怪談大会から解放された。マネージャーは部屋が別なので移動しなければと思うのだが、廊下は当たり前に真っ暗で。ついさっき話された怪談の内容が脳内を駆け巡る。悪寒が走り、思わず傍に居た角名くんの服の裾を引っ張った。
「す、角名くん……」
「……部屋まで送ればいい?」
角名くん優しい。目を見ただけで察してくれた角名くんは部屋まで送ってくれた。電気を付けても仄暗い廊下も角名くんがいたからなんとか平気だった。
しかし部屋に着いて思う。私ここで一人で寝ることになるんじゃ……?じゃあ俺はこれでと言わんばかりに部屋に帰ろうとした角名くんを引き止める。
「角"名"く"ん"」
「今度は何」
「女子部屋一人はやだっ!一緒に寝てよー!」
「いやさすがに一緒には駄目でしょ」
落ち着け、と言われて少し冷静に考えてみる。考えたけれど怖いものは怖いという結論しか出なかった。
「角名くん……!今夜は帰さないから……!」
「こんな場面で聞きたくなかった」
冗談はさておき(私にとっては全くもって冗談ではないのだけれど)、この場で立ち往生させっぱなしなのも良くないよね。明日も朝から練習だし、ちゃんと睡眠はとってほしいし。
「しょうがないから譲歩します」
「俺譲歩される側?」
「ジャージの上着貸してください」
「これ?」
私の要求は彼のジャージだ。角名くんは不思議そうな顔をしつつもすんなり貸してくれた。
「何でジャージ?」
「…………角名くんの匂い、安心するんだもん」
「ふぅん」
理由は恥ずかしいから追及しないで欲しかったな。でも本当のことなので正直に答えた。しかし当の本人から反応は無く。顔を上げると彼は片手で口元を覆っている。
「あれ、角名くん照れてる?」
「いいから早く寝なよ」
「わっ」
図星をついてしまったからか、照れ隠しでわしゃわしゃと頭を撫でられる。綺麗にしてたのにボサボサのぐしゃぐしゃになった。
「もう!せっかく梳かしたのに!」
「はいはい、おやすみ」
私が髪を直している隙にすっかり元のポーカーフェイスへ戻った角名くんは部屋へと帰って行った。
後ほど治から『角名が部屋で悶えとったんやけど何したん?(笑)』と冷やかしのメッセージがスマホに入ることになるのだけれど、この時の私はまだ知らない。








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