『2、話を聞くだけor3、興味なし』(Bルート) | ナノ
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『2、話を聞くだけ』



そう……。
私には、あなたって結構、面白がるタイプに見えるけれど。
だってそうでしょ。
何にでも首を突っ込みたがるタイプだから、新聞部に入ったんじゃないの?
そんな気がするわ。



『3、興味なし』



あら。
倉田さん、新聞部でしょ。
そんなことでいいの?
いろいろアンテナを広げていないと、いい記事が書けないわよ。
まあ、あなたがどんな記事を書こうが、私にはどうでもいいことだけど。



※以下同文※



……死んだ子供を捜すポイントとしては、旧校舎探索が一番流行っていたの。
ただでさえ立ち入り禁止のところでしょ。
やっぱり怪しいわよね。

「最近よくない遊びが流行っているようだが、日曜日に、立入禁止の場所に入るのは止めなさい」
ある日、みんなの行動を見かねた学校側が、注意をしてきたの。
学年主任が教室に来て、もう大騒ぎよ。

そんなことをするのはこのクラスぐらいだっていって、ずいぶん説教されたわ。

でも、みんなは探索をやめなかった。
隠れて捜すというスリル感が、また良かったんじゃないかしら。
探索は、ますますエスカレートしていったの。

旧校舎の棚が崩れてケガをしたとか、開かない戸を壊そうとしてガラスで手を切ったとか、ちょくちょく事故も起こったわ。

学年主任は、何度もうちのクラスに足を運んだの。
いかつい感じで、結構厳しい先生だったから、生徒も大抵はいうことを聞いていたんだけどね。
この件に関しては、あの先生、ほとほと困り果てているような感じだったわ。

……そんな時、事件が起こったの。
探索に参加していたクラスメイトの一人が行方不明になったのよ。
子供の死体捜しは、遊びでは済まされなくなってしまったの。
行方不明になった生徒はどこに行ったのか。

警察に行くと大ごとになるから、まずはみんなで調べてみようっていうことになったの。

倉田さん、あなたは、どの場所が怪しいって思う?


1、旧校舎
2、どこかの倉庫
3、屋上



『1、旧校舎』



そうね。



『2、どこかの倉庫』



まあ、そういうところも怪しいかもしれないけれど。
一番怪しいとはいえないんじゃないかしら。
だって、生徒はみんな、旧校舎を中心に探索していたのよ。



『3、屋上』



違うでしょ。
だって、生徒はみんな、旧校舎を中心に探索していたのよ。



※以下同文※



怪しいのは旧校舎だと、誰もが思っていたわ。
だから学年主任の立ち会いによって、クラスのみんなでそこに立ち入ることが許可されたの。
二人一組で班を作って、朝から手分けしてその生徒を捜したのよ。

私は、尚くんと一緒の班になったわ。
単に席が隣だったからなんだけど。

……尚くんは旧校舎に入ると、適当な教室を開け、椅子に座り込んだの。
私も黙って座ったわ。
特に歩き回りたいとは思ってなかったし。

私達は、校庭から聞こえる体育の授業の音……ホイッスルやざわめき、それから風の音をなんかを聞きながら、じっとしていたの。
彼が、時々私の横顔を見つめていたのがわかったわ。
私、なんだか疲れていたから、特に文句はいわなかったけれど。

「岩下さん……僕……」
彼が何かいいかけた。

その時、突然どこからか悲鳴のような声が聞こえたの。
それから旧校舎内がなんだか騒がしくなったのよ。
行方不明の生徒が見つかったみたいだった。
その途端、尚くんは立ち上がったの。
行方不明の生徒がどうなったのか。

旧校舎の異様な雰囲気からいって、無事だったわけがないと思ったわ。
くだらない遊びをしていた人の末路を見るのも悪くはないもの。
私は、尚くんと一緒に廊下へ出たの。

それにしても妙だったわよ。
尚くんは、新入生の割に、旧校舎の中を知っているような歩き方をしていたのよね。
一人ですいすいと前を進んでいくの。
「きゃっ!」
あんまり彼が早く歩くもんだから、途中で私、つまずいて壁に寄り掛かったの。

その時、手をすりむいてしまって。

尚くんがハンカチを貸してくれたのよ。
「ごめん。 つい急いじゃって……」
私、ハンカチくらい自分で持っていたわ。
でも、それを汚すのは嫌だったし。
彼のせいで転びかけたんだもの。

黙って使わせてもらったの。

尚くんは、再び歩き始めた。
そして、現場までたどり着いてしまったの。
行方不明の生徒がどこで見つかったのか、誰にも聞いていないのによ。
どうしてって聞いたら、尚くんはなんとなくって曖昧な答えかたをしたの。

……そして彼は、ある部屋の前で立ち止まったの。

尚くんが扉を開けると、中には行方不明になった男子生徒がいたわ。
足や手を妙な方向に曲げたまま、寝そべって苦しそうにうめいていた。
その側の床には、大きな穴が開いてたの。
どうやら、そこに落ちて骨折したみたいだったわね。

彼は目を大きく見開いたまま、頭を木の床に擦り付け、だらしなく身をよじっていたの。

すぐに救急車が呼ばれたわ。
それにしても、尚くんはよく迷いもせず、まっすぐその部屋にたどり着いたわよね。

そう思わない?


1、思う
2、思わない



『1、思う』



うふふ……。
そうよね。



『2、思わない』



あなたって、何だか疲れる人。
ちょっと普通の人と感覚がずれているようね。
私は、尚くんのことを何だか妙だと思っていたわ。



※以下同文※



でも私、そのことは誰にもいわなかったの。

だって、私は探偵じゃないもの。
尚くんが変だなんて、どうでもいいことだったの。
クラスメイトがケガをしようが、死のうが、関係ないと思っているし。

……骨折をした生徒は、無事救急車で運ばれていったわ。
担架に乗る時、よっぽど痛かったらしくて、ものすごい悲鳴をあげていたけどね。
見ていて気持ち悪かったわ。
結局、本人の不注意による事故だろうってことになったんだけど。

また、学年主任のお説教があったの。
随分長かったわよ。

そして、その日の放課後。
学年主任が、尚くんを呼び出したの。
二人で、生徒指導室で何か話をするみたいだった。
話の内容には全く興味がなかったけれど、私は尚くんに借りたハンカチを帰さなきゃならなかったから。

生徒指導室の外でしばらく待っていたの。
早くハンカチを返して帰りたいのに、二人はやたら長く話していたわ。
まだ終わりそうにないのかしら。
私は、そうっとドアの隙間から覗き込んだの。

そうすると、中の会話もなんとか聞き取れた。
「だから、犯人はお前なんだろう」
……学年主任の声だったわ。
「先生、なぜそんなことをいうんですか」
「なぜと聞きたいのはこっちだよ。

隠れんぼで死んだ子供の噂を広めたのはお前だろう」
「……ええ……そうですね」
どういうことなのかしら。
私は不思議に思って、しばらく耳をすましていたの。
隠れんぼの話は、クラスの女の子がどこからか聞きつけてきた話だったのよ。

なのに、尚くんが広めただなんて。
もしかしたら彼は、いったん違うクラスの人に教えて、自分のクラスまで噂が広がるのを待っていたのかしら。
それにしても、妙なものよね。

他のクラスの人も知っている話なのに、何でうちのクラスだけこんなに死体捜しが流行りだしたのか……。
その時、私の頭にある考えがうかんだの。

尚くんが仕組んだことだとしたら。
クラスの人気者で、机のまわりにいつも人をはべらせている彼なら、何かの話題を流行らせることなんて、お手のもんだったんじゃないかしら。

でも……なぜ?
どうしてそんなことをする必要があったのかしら?


1、クラスメイトにケガをさせるため
2、学年主任を困らせるため



『1、クラスメイトにケガをさせるため』



どういう考え方をしたらそうなるのかしら。



『2、学年主任を困らせるため』



あら……倉田さんはそう思うの?
うふふ、あなたの頭の中にあることは、はたして事実と一緒かしら。



※以下同文※



まあいいわ、話を続けるわね。

……学年主任は、立ち上がって尚くんの腕を掴んだの。
かなり乱暴に見えたわ。
尚くん、痛そうだった。
「青木、旧校舎でクラスメイトに骨折させたのもお前だな?」
「違いますよ、先生」
会話は、どんどん怪しい方向に進んでいったの。

学年主任も、尚くんも、にらみ合いを続けていた。
沈黙が続いたわ。

それを破ったのは、学年主任だった。

「隠れんぼをした子供の名前を、どうして自分と同じ名前にしたんだ?」

すると尚くんは、いきなりニヤリと笑いだしたの。
「シッポを出しましたね、先生」
「な、何がだ」

「あの話の子供には、もともと名前がなかったんですよね。
でも、それを知っているのは、あの日のおじさんだけだと思うんですが……」
「お前、やっぱりあのガキだったのか!?」

学年主任の目が、カッと見開いた。
そして、先生はいきなり尚くんを殴りつけたの。

「先生、僕も殺すんですか?
あの日の子供みたいに……」
「ああ、そうだよ。 お前も殺してやる!
俺はなあ、今彼女と結婚して、幸せなんだよ。
誰にも邪魔されたくないんだよ!!」
先生は尚くんに馬乗りになると、彼の頬を何度も殴ったのよ。
それなのに、尚くんはニヤニヤと笑っていたの。
「先生、ムダなことはやめて下さい。
僕には見えますよ。
先生の肩に……」
「何っ!?」

小さな子供の霊が、先生の肩に乗っていたわ。
まるで肩車をするようにね。
その霊は、足を先生の首にくるりと回したの。

……ものすごい音が響いたわ。

先生の悲鳴と、骨の折れる音。
目をぐりぐりさせて睨んでいた先生は、その瞬間におとなしくなったの。
手足をぶらんとさせて、操り人形みたいだったわ。

子供の霊は、口をぽかんと開けて虚ろな目になった先生を、開いていた窓から放り出した。
外から生徒の悲鳴が聞こえ、ざわめきが起こった。
……その後、子供の霊は一人でうろうろし始めたの。
「ママ……どこ……?」
そんなことをいっていたわね。

その子は、目の前にいた尚くんに話しかけた。
「ママ知らない?」
尚くんは、黙っていたわ。
それで子供は、私が覗いているドアの方に進んできたの。

いきなりドアが開かれた。

「きゃ……」
「ねえ、おねえちゃん、ママ知らない?」
「…………」
私も黙っていたわ。
その子の母親なんて知らないもの。
でも、全ての事情は尚くんが知っている。
そう思ったの。

……子供の霊は、ふらふらと廊下を歩きだしたわ。
下をむいて、しょんぼりとね。


1、なんだかかわいそう
2、怖い
3、どこに行くのかしら



『1、なんだかかわいそう』



そういう人こそ、霊につけ込まれやすいのよ。
中途半端な同情は、やめた方がいいんじゃない?
でも、子供の話はあとで。



『2、怖い』



そう……。
まあ、いろんな感じ方があるわよね。
後で子供の話を詳しくしてあげる。



『3、どこに行くのかしら』



あら、そんなことが気になるの?
うふふ……ちゃんと話してあげるわよ。



※以下同文※



まずは尚くんの話からね。

「岩下さん! どうしてここに?」
彼はすぐ廊下に出て来たわ。
「ハンカチを返しにきたの」
「……そうか。
それにしても……よかった、君にまで危害が加わらなくて」
彼、肩で苦しそうに息をしていたわね。

強がっていても、やっぱり怖かったのかもしれないわ。
そして、ゼイゼイいいながら、子供の霊の後を追い始めたの。
きっと、その先に死体があるはずだっていってね。
私、どういうことなのか知りたかったわ。
だから彼についていくことにしたの。

尚くんは、子供の後を追いながら、ゆっくり話してくれたの。

……彼は小さい頃、この学校に忍び込んで遊んだことがあったの。
いたずらで旧校舎に入り込んで、あちこちを歩きまわったのよ。

その時、教室の床の穴に、小さな子供の死体があるのを見つけたの。
クラスメイトが落ちて骨折したあの穴よ。
尚くんがおたおたしていたら、子供を殺した犯人がやって来たわ。
床の穴にフタをするために、木片を抱えてね。

その犯人が、学年主任だったのよ。
当時は、新任の先生だったでしょうけど。
先生は死体のことをばらされないように、うまく尚くんをいいくるめた。
隠れんぼで死んだ子供がいるって話がある。

その死体を見たら、今度は君が死ぬ番だよ。

君、子供の死体を見た?
見たっていったら、子供の霊に襲われて、死体の側に閉じ込められちゃうんだよって。
尚くんは、そんなの見てないっていったわ。

もし見たっていったら、先生はその場で尚くんを殺してしまったかもしれないわね。
そして尚くんを帰した後、先生は別の場所に子供の死体を隠したのよ。

……一方尚くんは、先生の話をすっかり信じ込んだの。
家に帰ってからも自分にいい聞かせたのよ。
僕は見ていない。
何も見ていないって。
尚くんは、このことを必死で忘れようとしたの。
まあ、小さい頃のことだものね。

大人になるうちに、確かに忘れることはできたわ。

でも、うちの学校に来た時、何かひっかかりを感じたのよ。
自分はこの風景に見覚えがある。
けれど、思い出そうとすると何だか頭が痛い。
どういうことだろう……。

そんな時、尚くんは小さな子供の霊を見たんですって。
その子は、
「ママ……どこ……?」
っていって、旧校舎の近くをふらふら歩いていたそうよ。

それで尚くんは思い出したの。
隠れんぼで死んだ子供の話。
死体を見つけたこと。
最後に、怖かったおじさんのこと。
さすがに高校生ともなれば、このおじさんは何か怪しいってわかるわよ。

尚くんは、死んだ子供の名前を自分と同じにして、わざと噂を広めたの。
怖かったおじさんがこの話を聞いたら、きっと自分になんらかのアクションをしかけてくるはずだって思ったのね。

ねえ、倉田さん。
学年主任が、何でその子を殺したか、知りたい?

1、知りたい
【END真相】


2、知りたくない
【END学校の記事には向いてないかも】