2、いいえ【END異空間】 | ナノ
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そう……。
坂上君が、そう答えるなんてちょっと意外だな。
……あんまり深い意味はないけどね。

私、ドアを開けて外へ出ようとしたんだ。
その瞬間……。
「うわぁーーーっ!!」
男の子の悲鳴が聞こえたの。
教室の中……。
私がいる掃除用具入れから、そう遠くない場所からよ。
私、とっさにドアを開けようと腕を伸ばしてた。

ところが、錆付いてたのか立て付けが悪かったのか、ドアがびくともしないの。
手に力を込めようにも、狭い所でじっとしていたから変に手足が痺れてて思うようにいかない。
正直いって、あの時は焦ったなぁ。

ガタガタと掃除用具入れを揺らしながら、必死にドアを押したよ。
そして、体当たりするみたいに身体をぶつけて、やっと外に出ることができたの。
外に出た瞬間、まぶしい光が差し込んで来たわ。

それまで暗い所にいたから、一瞬にして視界が奪われる。
……ああ、まだお昼前だったっけ。
そんなことを考えてたと思うな。
あはは、そんな場合じゃなかったのにね。
まぶしい光は、窓の外から差し込んでるわけじゃなかったの。

教室のほぼ中央に真っ白く光る物体が浮かんでいて、光は、その物体から放たれていたのよ。
……と、これはちょっと間違ってるかな。
正確にいうとね。

光る物体っていう物は存在していなくて、それは教室にパックリとできた空間の裂け目だったのよ。
私の視界を奪ったのは、その裂け目から漏れて来ていた別の空間の光だったのよ。
不思議な光だったよ。

ほら、太陽とかってあんまりまぶしすぎると、目を開けてらんなくなっちゃうでしょ。
でもね、その光はいつまで見てても、ちっとも苦痛にならないんだ。
そのうちに目が慣れたのか、光の中にある黒い影のような物まで見えて来た。

それが何なのかはっきりと確認するのに、たいして時間はかからなかったよ。
……見覚えがあったからね。

その影のような物っていうのは、島田君だったの。
島田君も、私と同じように教室に隠れていたのよ。
……きっと、自分は泥棒じゃないって証明したかったんじゃないかなあ。
「だ、誰か助けてくれー!」
島田君は、苦しそうに顔を歪めながら必死に叫んでたよ。

だけどね、その叫びもむなしく、彼は空間の裂け目の奥へと吸い込まれちゃったんだ。

彼の姿が見えなくなると、裂け目が急速に閉じ始めてね……。
あっという間にピッタリと閉じちゃった。
私、一歩も動けなかったよ。
本当に一瞬の出来事だったんだもん。

裂け目の消えた教室は、普段と少しも変わった所なんてなくってさあ。

みんなにこの話したんだけど、誰も信じてくれなくて……。
わかってくれたのは、早苗ちゃんただ一人だけだった。
「道を切るには、人の魂が一つ必要なの……」
早苗ちゃんは、泣きながらそういってた。

その言葉の意味なんて正確にはわからなかったけど、なんだか島田君が犠牲になって裂け目が閉じたんだっていうことだけは理解できたよ。

それでね、私、思うんだけど……。
教室で連続していた盗難事件て、あの裂け目に原因があったんじゃないかなあ。
島田君が吸い込まれた時から、プッツリと事件も起こらなくなっちゃったけどね。

島田君たら行方不明になった今でも、盗難事件の犯人にされてるんだよ。
かわいそうだよね。
あの空間の裂け目が、もう一度現れると私のいったことが嘘じゃないってわかってもらえるんだけど、そうしたらまた誰かが犠牲にならなきゃいけないんだよね。

だったら、怖いから現れない方がいいな。
でも、裂け目を閉じる方法はわかってるけど、どうしたら裂け目が開くのかはわかってないんだよね。
早苗ちゃんも知らないみたいだし……。
いつ、また、あの裂け目が現れるか……。

そう思ったら、なんだかのんびりしていられなくってさ。
うちの教室にだけ現れるとは限らないじゃない。
今、ここに現れる可能性だってあるんだから。

まあ、その時は坂上君が命を投げ出してくれるよね。
あはは……。

安心してよ。
今のところは、何も起こっていないんだからさ。
まあ、たまに変な事件には遭遇しちゃうけど。
だって、うちのクラスには早苗ちゃんがいるんだもん。
坂上君……。

無事に卒業したかったら、彼女に頼んでみるといいかも。
でも、彼女の話は別の機会にね。
今日は、他の人の話を聞きたいから駄目。

それじゃ、次の話へ行こうか。
……坂上君、次は誰の番なの?

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