1、はい【END騒動終結】 | ナノ
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うん、そうだと思った。
坂上君て、なんかそんな感じだからさ。
……あんまり深い意味はないけどね。

私、おそるおそるドアを開けると、辺りを見回しながら掃除用具入れから出たんだ。

教室の中には、誰の姿も見えなかったよ。
やっぱり錯覚だったのかって思い始めてた。
ところがね……。
よく見ると一つの机の下で、黒いモノがゴソゴソと動いてるの。

あの時はドキッとしたなぁ……。
SF映画とかに登場するモンスターみたいに思えたんだもん。
でもね、そう思えたのは最初の数秒間だけ……。

まじまじと見るうちに、その黒いモノに見覚えがあるような気がしてきちゃってさあ。
こ、これはもしかして……。
……でも、なんでここに?
私、ドキドキしながらその物体に近寄ると、思いきって声をかけたの。

「島田君……?」
って。
するとね、黒い物体は驚いたようにビクッと身体を震わせて、その拍子に頭を机にぶつけちゃった。

あはは……。
やっぱり、黒い物体は島田君だったの。
私が見た黒い物体は、彼の髪の毛だったのよ。
島田君はね、自分にかけられた泥棒の疑いを晴らそうと思って、犯人を捕まえようとしてたんだって。

それで、私と同じように体育を休んで教室に隠れてたんだよ。
あはは……。
最初からわかってれば、協力できたのにね。

……けっきょく、この時は盗難は起こらなかったんだ。
ううん……。
これっきり、クラスで盗難事件が起こるってことはなくなったの。
それと関係があるのかわからないんだけど……。
この後、ちょっとした事件が起こったんだ。

ほら、小野田先生っていたじゃない。
私だって、直接は知らないけどさ……。
つい何週間か前に、謎の遺書を残して自殺しちゃったじゃない。
知らないかなぁ。
新聞部でも取材したはずだと思うけど……。

あっ、ここにその記事の載った新聞があるじゃない。
早くいってくれればいいのに……。
ね、ここのところをよく見てよ。
『悪いことだとは知っておりましたが、一度覚えた盗みの味はどうしてもぬぐいきれませんでした。
物やお金が欲しいというのではなく、なんともいえないあのスリルを求めて身体が動いてしまうのです。
でも、とうとうその現場を生徒に見られてしまいました。
私は、教師失格です』

……ね、ちゃんと載ってるでしょ?
この遺書を書いた小野田先生が、うちのクラスの盗難事件の犯人だったとしたら……。
私か島田君に、姿を見られたと思って自殺しちゃったってことになるんだよね。
私たち、他の人の姿なんて見てないのに……。

知ってる?
心にやましい思いを持ってる人は、他の人に対して必要以上の恐れを持つんだってね。
小野田先生は、あの時私たちの姿を見て、自分も私たちに見つかったと思ったんじゃないかなぁ。

それで、日頃の行いを振り返って急に恐ろしくなったんだよ。
……私の推測でしかないけどね。

うちのクラス……。
今じゃ、すっかりまとまりのある、仲のいいクラスになってるよ。
島田君への疑いもすっかり晴れたみたいだし……。
雨降って地固まるってやつかな?
特に大きな事件も起こってないしね。

まあ、たまに変な事件には遭遇しちゃうけどさ。

あはは……。
だって、うちのクラスにはさっきも話したように、早苗ちゃんがいるんだもん。
……彼女の話は、別の機会にね。
今日は、他の人の話を聞きたいから駄目。

それじゃ、次の話へ行こうか。
……坂上君、次は誰の番なの?

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