風間台詞 | ナノ
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風間望
PS追加・変更・女主人公用台詞
2話ひとり七不思議


『1、これで本当に終わりなのか尋ねる』



部室は、重い沈黙に包まれた。
風間さんの話は、本当にこれで終わりなのかしら?
私は、不安に思って尋ねてみた。
「……あのう。
これで終わってしまったんでしょうか?」

「ああ、そうだよ。
どうだ、なかなか怖いだろう?」
「…………………」
一体、この人は何なのかしら。
確かに、この話が本当なら怖いといえなくもないけど……。
銅像が動くなんて、デマでよくいうような話じゃない。

この人は、私をからかっているの……?



『3、しばらく黙って様子をみてみる』(女用)
彼はシャツをまくり上げ、おもむろにおなかをかき始めたのだ。ここには女子もいるというのに……。

「ごめんごめん。おならしちゃった」

「君、おおげさに嫌がるのは止めてくれないか。
僕は、最上級生だよ。
先輩に対する礼儀を忘れてはいけないな」

…………………………………
…………………………………
…………………………………
……………風間さんは、おなかをボリボリかき始めた。
「ち、ちょっと、何するんですか!?」
私はあわてて彼を制した。
あんなにおおっぴらにシャツをまくって……。

やだもう……。

風間さんはおなかをかくのを止め、腰を浮かせ、身をのり出した。
何だろう。
本当に何なのかしらこの人は。
不思議な威圧感を持っている。
ただ者ではないわ。
先輩が彼を呼んだのは、何か深い意味があるのかも。

この男は、危険な香りがする……。

「おっと。なんか臭うかな」
か、風間さん……。
彼の浮かせた腰からは、恐ろしく危険な香りがただよっていた。
…………………………………
…………………………………
…………………………………
……。

部室は、臭い空気に包まれた。
苦しい。
こんなに残酷な仕打ちがこの世に存在するなんて。
この苦しさを知ってしまったら、これからの人生にどんな苦難があろうとも、のり越えていける、私はそう思う。
だめ、気が遠くなりそう……。
ああ。

あああ。
ああああ………。

「んっ、嫌だなあ。
誰かおならしただろ、困るなあ。
女の子の前で失礼だろ」
………。
風間さんったら、自分でおならしたくせに……。
風間さんの態度に、私は腹を決めた。
いくら先輩でも……。

これ以上は耐えられないわ。
この人が、本当はすごい怪談を知っていたとしても、もう関わりたくない。
私は、次の人の話を聞くことにした。
「風間さん、申し訳ありませんでした。
素晴らしいお話をありがとうございます。

どうぞごゆっくりお休みください。
あっ、帰っていただいても結構ですよ。
ああ、そうですか、まだここにいるおつもりなんですか。
……分かりました。
でも、つまらなくなったらいつでも帰って下さいね。

……それでは、違う話に移りましょう。
次の方、お願いします……」



『2、銅像のことを詳しく話してもらう』



「あのう。
……その、銅像の話を、もう少し詳しく話してもらえませんか?」

風間さんは私から目をそらし、困ったような顔つきをして、髪をかき上げた。
「……いいけど。
君が、後悔しないならね。
今ここで、絶対後悔しないと誓うなら、話してあげるよ」
………。

この人は、話が本題に移るのを避けようとしているみたい。
そんなに恐ろしい話を、知っているの?

これ以上、この話を聞いてもいいのかしら……?



『2、後悔しそうなのでやめておく』



「……すみません。
やっぱり聞かないでおきます。
何か、嫌な予感がしますから」
この話を、これ以上聞くことはできない。

そんな気がした。
私は、室内をゆっくり見回した。
みんな、不満そうな顔をしている。
あれ?
みんなは、嫌な予感がしないのかしら?
風間さんの話の続きを、聞きたがっているの?

……確かに、校長の銅像が夜中動く、終わり、じゃあんまりかもしれない。
でも、いまさらやっぱり話してなんて言えない。
なぜなら……。

「ぐうぐう……」
風間さんは、いつのまにか眠ってしまったから。
この人、いったい何者なの?
……ずっと眠たかったのかしら。
七不思議の取材に参加したら、眠くなってしまって、テキトーに短い話を語ったのかなあ。

でも……先輩はなぜこんな人を呼んだんだろう?
………。
しょうがない。
考えてもしょうがないわ。
次に進まなくちゃ。
私は、みんなの冷たい視線を浴びながら、恐る恐るきりだした。
「あのう。
次の話に、移りませんか……?」



『1、後悔しないから聞かせてくれという』



「風間さん、聞かせて下さい。
どんなに恐ろしい話でもかまいません。
私も新聞部員のはしくれです。
取材は途中で投げだせません」

風間さんは、私の目を射抜くように見つめた。
「君が、それほどの覚悟を持っているのなら……」
彼の瞳は、固い決心に彩られていた。
これから、どんな恐ろしい話が語られるのかしら。

夜中ひとりでに歩くという銅像は何か想像を絶するような事件を引き起こしているのかも……?

部室内は、各々の心臓の音が聞こえそうなほど静まりかえっていた。
暑い……。
なんて暑いの。
シャツと肌の間に、何本もの汗の筋が通っていく。
しばらくの沈黙の後、風間さんは目を伏せながら、銅像の話を語り始めた。



『1、これで本当に終わりなのか尋ねる』(女用)
「なんだい君は。詳しく話してやったろう。
銅像のありかから風貌まで。
君も新聞部員のはしくれなら、僕がいかに苦労して今の話を語ったかわかるだろ?
この細密な描写。
すごいドキュメンタリーだったと思うだろ?
君のようなはしくれに、こんな話が語れるかい?
しかし、……はしくれかあ。
わはは!
はしくれだって!
君、そんなくさい言葉を使っていたら、女の子にはもてないよ」

「あのう、……」
「ん〜。
どうしたの。
あまりに詳しくて驚いたかな。
僕のことを、新聞部に勧誘しようなんて思っちゃった?
この的確な描写。
すごいドキュメンタリーだっただろ?

あっ、サインは後にしてくれよ?

しかし、……僕のファンがまた増えちゃったかな。
ふふっ!
ふふふふ……!
……いやあ、君と一緒の部活動は、楽しいだろうなあ……」



『1、何で先輩はこんな人を呼んだんだろう』(女用)
「君、そんな怖い顔でにらまないでくれよ。
僕だって、高三の夏の貴重な時間をさいて、ここにいるんだよ。
僕みたいな色男が、ギャルのデートをふり払って来てるんだからさ。
……お茶でも出したら?」

何で先輩は、こんな人を呼んだの?
いったい何なんなのかしらこの人。

「君、一年E組だよね。
よしよし、今度、遊びに行くからね。
それとも、学校の外で遊ぶのがいいかな。
……どう?」

………。
私は、ため息をついた。
もうこの人とは話したくないわ。
校長先生の銅像は夜中ひとりでに動く。
七不思議の二話目はこれでいい。

きっとこの人からは、これ以上のことは聞き出せないだろうし。
もう、次の話に進むしかないわ。
私は、風間さんのことを見ないようにしながらこう言った。
「風間さんのお話は終わりました。
それでは、次の話を…………」



『2、この人がこの世に生をうけたわけを考える』



この人は、なぜこの世に生をうけたのかしら。
私にはわからない。
きっと、私の家の隣に住んでいる田中さんにも分からない。
親戚の家で飼っているポチにも分からない。
………。
何なんだろう。

何で私がこんなことを考えなくちゃいけないの?
もういいや、次の人の話を聞こう。

「それでは、次の人……」
「ちょっと待って。
僕の話はまだ終わってないんだよ」
風間さんが、そんなことを言いだした。
「だってさっき、銅像は夜中ひとりでに動く……終わり、っていったじゃないですか」
「まあ聞いてくれ。

もう少し話したくなっちゃったんだよ、ねっ。
今、また新しいドキュメントを思いついたんだからさ」
「風間さん、ドキュメントって、思いつくとかいうものじゃ……」

「平成二年三月十四日にたてられた校長先生の銅像は銅でできており表面がぴかぴかに磨き上げられしかもなめらかでハリがありまるで生きているような生命の息吹を感じるというところのものなのでありさらに………ぶつぶつぶつ………………」

風間さんは、ぶつぶつ言っている。
私は、彼のことを放っておいて、次の話にいくことにした。
「それでは、次の話にいきましょう。
次の方、お願いします……」



『3、この人の生と愛と死について考える』



私は、彼の生と愛と死について考え………………………………………………………………………やめよう。
そんなこと考えたくない。
何だかやる気をなくしてしまった。
まだ七不思議の二話目なのに、なぜこんな気持ちになってしまったのかしら。

だるい。
なんだか、何もしたくない……。
これは、霊の仕業?
………。
ううん、風間さんのせいよ。
風間さん一人のせいよ。
もう。
この人はいったい何なのかしら?

……あまり、関わりあいにならない方が良さそうね。
私は、気をとり直して、次の話を聞くことにした。
「それでは、次の話にいきましょう。
次の方は……」



『4、風間望……なんていい名前だろう、と考える』(女用・削除)

(削除)
こんな名前を持つ人物は、日本のトップにたつべきだ。

「はしくれ君。
早く、次の話に進みなよ」

風間望……なんていい名前だろう。
………。
この人があまりにめちゃくちゃだから、私もわけの分からないことを考えてしまった。
だめだわ。
このままでは、取材がぶち壊しになってしまう。

校長先生の銅像は、夜中ひとりでに動く。
……本当かしら。
一応メモはしておくけど、この人とはこれ以上話を続けてもしょうがないだろうな。
「君と出会えてよかった。
ねぇ、そうだろベイビー」
………。

私は、わきあがる怒りをこらえながら、次の話を聞くことにした。
「それでは、次の話をお願いします。
次は………」



『1、どういうつもりなのか尋ねる』(女用)
「ん、何だい?
何か、文句でもあるのかい?」

「しょうがない。それじゃあ、もう一つ取っておきの話をしてやろう。驚いて腰を抜かさないでくれよ」

「……あのう。
どういうおつもりなんでしょうか?」
「ん、何だい?
どうしてそんなこというんだい?」

「あのう、何だか、あまりにあっけない気がするんですけど」

「しょうがない。
可愛い君のために、もう一つ取っておきの話をしてあげよう。
驚いて腰を抜かさないようにね」
風間さんは、睨むような目付きでみんなを見回すと、咳払いを一つし、ゆっくりと話を続けた。



『2、次の人の話に移る』(女用)
「ああ、次の人の話に移るのかい?
ダメだなあ君は。
せっかくこれから僕が本当に怖い話をしてあげようと思ったのに」

「君ねえ、取材は、相手の話をいかに聞きだすか、っていう所にポイントがあるんだよ。
相手の話をただボーッと聞いてりゃいいってものじゃない。
それくらい、分からないのかい?
……ま、いいけどね。
君が聞きたくないなら、それでもいいよ」

「それでは、次はどなたが……」

私が言いかけると、風間さんはあごを上げ、眉をひそめた。
「ああ、次の人の話に移るのかい?
残念だなあ。
せっかくこれから僕が本当に怖い話をしてあげようと思ったのに」
む……。
何なのこの人は。

「……風間さん。
さっき話の最後に、終わりっていったじゃないですか」

「ふふっ、取材っていうのはね、相手の話をいかに聞きだすか、っていう所にポイントがあるんだよ。
相手の話をただ聞いてりゃいいってものじゃない。
ごめんね、ちょっと厳しかったかな?
……でも、僕はけして怒ってるわけじゃないからね。
君さえよければ、今度また話してあげるから」
………むむむ。
私が困っていると、風間さんはみんなに向かって次の話の催促を始めた。
「僕の話は、これで終わりだ。
恵美ちゃんが、もういいって言ったからね。
さあ、次は、誰の番だい?」



『1、これで本当に終わりなのか尋ねる(一回目)』(女用)
「しょうがない。
それじゃあ、もう一つ取っておきの話をしてやろう。
驚いて腰を抜かさないでくれよ」

部室は、重い沈黙に包まれた。
風間さんの話は、本当にこれで終わりなのかしら?
私は、不安に思って尋ねてみた。
「……あのう。
これで終わってしまったんでしょうか?」
「ああ、そうだよ」
「……あのう、何だか、あまりにあっけない気がするんですけど」

「しょうがない。
可愛い君のために、もう一つ取っておきの話をしてあげよう。驚いて腰を抜かさないようにね」
風間さんは、睨むような目付きでみんなを見回すと、咳払いを一つし、ゆっくりと話を続けた。



『1、これで本当に終わりなのか尋ねる(二回目)』(女用)
「ああ、そうだよ。
何か、文句でもあるのかい?」

「僕が二つも話したのに、不満なのか?
……仕方ない。それじゃあ、もう一つ話すとするか。
実は、これはあまり話したくなかった話なんだが……」

部室は、重い沈黙に包まれた。
風間さんの話は、本当にこれで終わりなのかしら?
私は、不安に思って尋ねてみた。
「……あのう。
これで終わってしまったんでしょうか?」
「ああ、そうだよ。
まだもの足りないなら、僕の家でゆっくり話してあげるけど?」
「いえ……けっ、結構です。
今ここで、話していただければ……」

「ふふっ、てれてるのかい?
……かわいいなあ。
よーしわかった、もう一つ話すとするか。
実は、これはあまり話したくなかった話なんだが……」
風間さんは、思い詰めたように押し黙った。
しかし、すぐに顔を上げると、話を始めた。



『1、これで本当に終わりなのか尋ねる(三回目)』(女用)
「ああ、そうだよ。
僕は三つも話してしまった。
約束では、一人一つじゃなかったのかい?
もう、満足だろ?」

「わがままな奴だな、君は。
まあ、仕方ない。僕は、四つも話すつもりじゃなかったけれど……」

部室は、重い沈黙に包まれた。
風間さんの話は、本当にこれで終わりなのかしら?
私は、不安に思って尋ねてみた。
「……あのう。
これで終わってしまったんでしょうか?」
「ああ、そうだよ。

僕は三つも話してしまった。
約束では、一人一つじゃなかったのかい?
……もしかして君、もっと聞きたいの?」
「……いや、その、あの、なんていうかもうちょっと具体的な話が聞きたいんです」

「わがままな子猫ちゃんだね、君は。
まあ、仕方ない。僕は、四つも話すつもりじゃなかったけれど……」
風間さんは、悩むように頭を抱えた。
今度こそ、本当に怖い話をしてくれるのかしら。

風間さんは長いため息をついた後おもむろに話を始めた。



『1、これで本当に終わりなのか尋ねる(四回目)』(女用)
「ああ、そうだよ。
八つも進学塾に通う女なんて、幽霊より怖いじゃないか。
そんな女と、君はつき合いたいと思うのかい?」

「……仕方ないな。
僕に、どうしても本当に怖い話をさせる気なんだね。
わかった。
どうなっても知らないよ」

部室は、重い沈黙に包まれた。
風間さんの話は、本当にこれで終わりなのかしら?
私は、不安に思って尋ねてみた。
「……あのう。
それって怖い話なんでしょうか?」

さっきまでは、どんなに短くとも、とりあえず怖い話ではあったのに。
でも、今のは何なの?

「ああ、そうだよ。
八つも進学塾に通う女なんて、幽霊より怖いじゃないか。
あっ、でも君はそんな子じゃないよね?」
「……あのう、とりあえず現実的に怖いかどうかはいいんです。
もっと、想像を掻き立てられるような怖い話をしてもらえませんか?」

「……そうか。
僕に、どうしても本当に怖い話をさせる気なんだね。
しょうがない。
覚悟して聞いてくれよ……」
心なしか、風間さんの顔が青ざめているように思えた。
そして、身体が心なしか震えているように見えた。

風間さんは、躊躇しながら話し始めた。



『1、ちょっと待って。嫌な予感がする』



「あのー、ちょっと待ってもらえます?」
「……ん?
どうしたんだい?
えーと、この話は、二人っきりで聞きたいとか?」
「そうじゃなくて……。
あの、風間さんのお話は、食堂がとてもまずい……なんてことじゃないですよね?」

「……ん、君も知っていたのか。
そうなんだよ。
あの食堂はまずいだろ?

あんなにまずいのに人が入るのは、安いからだな。
あの定食のことを思い出すと、想像を掻き立てられてしまう。
あー、気分が悪い」
風間さんが青ざめていたのは、そのせいだったのかもしれない。
どうしよう。

この人にこのまま話を続けてもらっても、怖い話は望めそうにないわ。

もう諦めて次の人にバトンタッチした方がいいのかしら?



『2、黙って話を聞く』



き、聞かなきゃよかった。

「あの食堂、ほんとまずいだろう。

あんなにまずいのに人が入るのは、安いからだな。
あの定食のことを思い出すと、想像を掻き立てられてしまう。
あー、気分が悪い」
風間さんが青ざめていたのは、そのせいだったのかもしれない。
どうしよう。

この人にこのまま話を続けてもらっても、怖い話は望めそうにないわ。

もう諦めて次の人にバトンタッチした方がいいのかしら?



『2、もういい加減に、次の人の話を聞こう』



どこまで、ふざけた態度をとるんだろう。
一年生だからって、馬鹿にしてるのかしら?
もういい、こんな人は放っておいて、次の話へ移ろう。
「それでは次の話を……」

「よし、それじゃあ、僕がとっておきの話をしてやろう」
って風間さんじゃないの!

「だめですよ、風間さんの話は終わったじゃないですか」
「君は、本当に僕の話が、あれだけで終わったと思っているのかい?
だとしたら、それはとんでもない間違いだよ」

風間さんは、ひどく真面目な顔をしている。
「僕はもう知らないよ。
これからが重要な話だったのに……。
後悔しても、もう遅いんだからね」
「ちょっと待って下さい。
だったら何故、終わり、なんていったんですか!?」

「かわいそうに、それがキーワードだって気付かなかったんだね」
風間さんは哀れみの目で私を見つめた。
でも、すぐにそれは異様な眼差しに変わって……。

「終わりが、新しい始まりであるっていうだろう?
それに気付いてほしかったんだよ、わかるかい?
僕は君を試していたのさ。
そもそも記者というものは………」
「ほっといて下さい!」
危ない、危ない。

また、この人のペースに乗せられるところだったわ。
まったく、理論が通ってるんだかいないんだか……。
これ以上、風間さんにつきあうのは時間の無駄だわ。
「それでさ……、君の…………というより……」
風間さんは、まだなんだか喋っている。

えーい、絶対に無視よ!
無視!!
「それじゃあ、次の方。
どうか、口直しになるようなとびっきりの話をお願いします」



『1、もう一度、我慢してみよう』(女用)
風間さんは、不満顔だ。
でも、仕方ない。
僕は、ねばった。
どうやら、話す気になってくれたみたいだ。
今度こそ、怖い話を期待したい。

「…………つまらない奴だな、君は。
せっかく僕が盛り上げているのに、どうして、さっきから水を差すんだよ。
まったく、もう……ぶつぶつぶつ…………」

(1)

「あのー、お願いしますよ。
これは、怖い話の特集なんです。
学校の食堂がまずいのどうのっていう話じゃないんです。
これじゃ、記事が書けませんよ。
後生ですから、私を助けると思って、まじめに話してもらえませんか?」

風間さんは、ねっとりとした視線で私を見た。
うっ、言い方がまずかったかしら。
しょうがない君のためだ、ラブラブハニー……なんていいだしたらどうしよう。
風間さんは、黙って目を伏せた。

あれ、まじめに話してくれるのかしら……。



(2)


「……風間さん。
自分のこと、数えてません」
「…………やだなあ、すぐにつっこんじゃ駄目だよ。
せっかく盛り上げているんだから、ね、少しは怖がってくれなきゃ。
……まあいいか、君って可愛いからさ……何をしても許せちゃうよ…………」
風間さんは、わけのわからないことをいっている。

どうして、先輩はこんな人を呼んだのかしら。
もしかしたら、この企画を失敗させるつもりじゃないの?
私は、気を取り直して三人目の話を聞くことにした。
3話霊界の占い師こっくりさん


(変更)
一枚の紙に、五十音とYESとNOの文字、そして0〜9までの数字を書いて、真ん中に鳥居のマークを書く。
一枚の紙に、五十音とはいといいえの文字、そして0〜9までの数字を書いて、真ん中に鳥居のマークを書く。



『1、信じる』(女用)
なかなか見所のある男だな、君は。
なかなか見所のある子だな、君は。



『1、謝る』(女用)
僕は、謝るべき時に素直に謝れる奴が好きなんだよ。
そういう奴は、人間ができているということだからね。

僕は、謝るべき時に素直に謝れる子が好きなんだよ。
そういう子は、人間ができているということだからね。



『2、謝らない』(女用)
「坂上君、指を置きたまえ」

「坂上君、早く指を置きたまえ」
風間さんが僕の腕をつかんだ。

「儀式の紙を落とすなんて!
呪われるぞ!
坂上、おまえは、呪われるぞ……!!」

風間さんは、不服そうにこちらを見ている。
と思ったら、黙ってポケットから一枚の紙を取りだし、机に置いた。

「この紙を使って、こっくりさんを呼ぶよ。
恵美ちゃん、君のことを特別に占ってやろう。
そして、その占いが終わった時、君にこっくりさんを乗り移らせる」

風間さんはそう言うと、手垢がついて濃い茶色になった十円玉を取り出し、にやりと笑った。
この人は……。
いったい、どういう人なんだろう。
本物のこっくりさんを呼び出せると言ったり呪いをかけてやるなんて言ったり……。

「さあ恵美ちゃん、十円玉に指を置きたまえ」
風間さんの言葉が、何かの宣告のように聞こえた。
例えるなら、そう……。
まるで、死刑の宣告のように。
「恵美ちゃん、指を置くんだ」
風間さんが、絶対の命令を下す者の様に繰り返した。

私は何だか泣きたいような変な気分になって辺りを見回した。
私に呪いをかけるなんて。
こんなこと、みんなが黙って見ているはずはない。
「恵美ちゃん、早く指を置くんだ」
風間さんが私の腕をつかんだ……!

「いやっ!!」
私は、思い切り腕を振り払った。
すると……。
何かが、カサリと落ちる音がした。

あっ……。
こっくりさんを呼ぶ為の紙が、床に落ちちゃった。
「ああっ!」
風間さんが、叫び声を上げた。

「儀式の紙を落とすなんて!
呪われるぞ!
恵美、君は、呪われるぞ……!!」
部室内の全員が、息をつめて私を見た。

「……だがな、恵美ちゃん」
風間さんは、私を挑むように見つめゆっくりとつぶやいた。
「一つだけ助かる方法がある。
それは……。
このお守りを身につけておくことだ。
特別に、これを千円で売ってやる」

………。
そう言う風間さんの手には、五十円くらいでよく売っているような、消しゴムが握られていた。
「……あのう」
私は、何だかおかしいと思いはじめた。

「ん、何だい?
これを買うのかい?」
風間さんの表情は、さっきとうって変わってにやにやしている。
……うさんくさいわ。
「あのう。
……それって、ただの消しゴムじゃないんですか?」

私が聞くと、風間さんはおおげさな身振りで一気にこう言った。

「何てことをいうんだ君この消しゴムは僕がある霊験あらたかな山に流れる天然水で清めた本物の効果のあるお守りだぞ」
私が圧倒されていると、彼はさらにこうたたみかけた。



『1、信じる』



「風間さん、申し訳ありませんでした。
風間さんのことを疑ったり、お守りのことをただの消しゴムなんて言ったりして……」
謝ると、風間さんは私に消しゴムを手渡し、分かればいいんだよと言った。

そこで私は、お礼を言いながら風間さんに千円札を渡した。

「うふふ。
君、素直だね。
いいこだ。
ほんとうにいいこだね」
風間さんは、うふふと笑った。
……やっぱり何か変じゃない?
しかし、もう遅かった。
風間さんは千円札をポケットに入れ、そそくさと私から離れてしまった。

な、なんて人だ。
本物のこっくりさんを呼べるだの、こっくりさんを見せてやるだの、呪いをかけるだのと言っていたのは、私をだまして脅かせて、消しゴムを売りつける為だったんじゃないの?
………。

先輩、何でこんな人を呼んだんですか……。
あ、……。

でも、さっきは何でこっくりさんの紙が床に落ちたのかしら?
よく考えると、風間さんも私も、紙には触っていないはず……。
考え込む私には構わず、風間さんは満足げに皆に呼びかけた。

「せっかく本物のこっくりさんを見せてあげようと思っていたんだけど、儀式の紙が落ちてしまっては、もうできないな。
落ちた紙を使って呼びだそうとすると、こっくりさんがお怒りになってしまうんだよ。
しょうがない、次の人の話を聞くしかないようだ。
じゃあ、次は、誰の番かな?」



『2、信じない』



「風間さん……」
私は、あきれかえった。
彼の言うことはうさん臭すぎる。
「……もういいです。
次の人の話を聞きましょう」
すると、風間さんはぶつぶつ言いだした。

「いいの?
ほんとうにいいの?
呪われちゃうよ?
あっ、五百円でもいいからさ、このお守り買いなよ」
……ますますうさん臭すぎる。
私がにらんでいると、風間さんは慌てた様にこんなことを言いだした。

「し、しょうがないね。
せっかくお守りをゆずってあげようと思ったのに。
君、今後何か事故にあっても、知らないからね。
でも、残念だな。
本物のこっくりさんを見せてあげようと思っていたんだけど、儀式の紙が落ちてしまっては、もうだめなんだ。
落ちた紙なんか使ったら、こっくりさんがお怒りになってしまうからね。
しょうがない、次の人の話を聞くしかないようだ……」
私は、一瞬ヒヤリとした。

そういえば……さっきは何で、こっくりさんの紙が床に落ちたのかしら?
よく考えると、風間さんも私も、それには触っていないはず……。
風間さんはうさん臭いけど、この部屋には、何か霊的な存在がやって来ているのかもしれない。

私は、内心冷や汗をかきながら、みんなに呼びかけた。
「そ、それでは、次の話に移りましょう……」



『2、出さない』(女用)
「五百円ぽっちも持ってないなんて、君、そんなんじゃ、女の子にはもてないよ」
私は、彼の要求には応じられなかった。
「風間さん、申し訳ありません。
やはり、五百円玉はないんです。
こっくりさんは、又の機会にして下さい」
私がそう言うと、風間さんは、がっくりと肩を落とした。

そして一言こう言った。
「せっかく占ってあげようと思ったのに、もう僕とデートしてくれなきゃ許さないぞ」
……な、何なのこの人は!?

「しかし恵美ちゃん、残念だね。
五百円玉さえあれば、本物のこっくりさんを見せたり、占ってあげたりすることができたのに。
いいネタを用意してきたのになあ。

あっ、高級霊のこっくりさんを、ネタなんて言っちゃいけないね。
いかんいかん、ぶつぶつぶつ……」
風間さんは、ぶつぶつ言っている。
何だか変な人。
私は、とにかく次の話を聞くことにした。

今やったこっくりさんが、風間さんのガセネタでないことを祈りながら。
「それでは、次に進むとしましょう。
次の話は……」



『2、五百円玉を渡さない(二回目)』(女用)
五百円玉は渡さないだと?
……僕の聞き違いだといいけどね。
いいかい、もう一度だけ言うぞ。
五百円玉を出したまえ。
断ったら……ただじゃおかないよ。

五百円玉は渡さないだって?
……僕の聞き違いだといいけどね。

もう一度だけ言うぞ、五百円玉を出すんだ。
断ったらただじゃおかないよ。

それがどういう意味かわかるかな、ふっふっふ……。



『2、従わない』(女用)
次にいこうとすると、風間さんは黙って僕のシャツを引っ張った。
「お断りします」
私がそう言うと……。
風間さんは、すねてしまった。
「風間さん?」
呼びかけても返事をしてくれない。
「あの、風間さん?」
「………」
「話を先に進めたいんですけど」

「………」
「しょうがないですね。
それじゃ、次の人の話を……」
次にいこうとすると、風間さんは黙って私の服を引っ張った。
……なんなのこの人は。
「は、離してください」
風間さんは、悲しそうな目をして私を見ている。

……まいった。

このままじゃ、らちがあかないわ。



『2、それでもお金は出さない』(女用)
すると、何かが飛んできて、僕の頭に当たった。
「痛っ」

風間さんは、恨めしそうな顔をした。
それでも私は、五百円玉を渡さなかった。
風間さんの方はもう見ずに、みんなに呼びかけた。

「それでは、次の人の話を……」
すると、何かが飛んできて、私の横に落ちた。
「きゃっ」

消しゴムじゃないの。
新聞部の備品だわ。
………。
霊の仕業じゃないわよね。

どうやら、風間さんのいる方向から飛んできたような気がする。
でも、それを確かめるわけにもいかない。
もう、やんなっちゃうわ。
風間さんは五百円玉で、どんなこっくりさんをするつもりだったのかしら。

本物のこっくりさんを見せてやるとかいっていたけど……。
……まあいいわ。
何だか風間さんって変だし、
この人がこっくりさんをやったら、それこそ祟られてしまいそうだから。
私は、とにかく次の人の話を聞くことにした。
「それでは、次の話を……」



『1、男性問題』(女用)
女性問題に関してだな?
君は、結構スケベだな、ふふふふふ……。

男性問題に関してだな?
君、素敵な恋人がほしいなら、僕なんてどうだい。

ところで、君は好きな人がいるのかな?



『1、いる』(女用)
そうか、いるのか。
なんだ、いるのか。



『1、付き合っている』(女用)
そうか、そうか。
顔に似合わず、なかなかやるときはやるようじゃないか。
うっふふふふ……。
それでは彼女とうまくいくかどうかを占ってしんぜよう。
こっくりさん、こっくりさん、お答えください。
彼女とは今後うまくいくでしょうか?

うーん、そうか。
もう、相手がいるのか……。
そいつに飽きたらよろしく。

それでは彼とうまくいくかどうかを占ってみようか。
こっくりさん、こっくりさん、お答えください。
彼氏とは今後うまくいくでしょうか?



『いいえ』(女用)
最近、彼女とケンカでもした?
君はどうやら、ふられる運命にあるようだ。
かわいそうだけど仕方がないね。

最近、彼とケンカでもした?
これも運命、でも落ち込むなよ。
僕がついてるじゃないか。



『はい』(女用)
おっ!
これは、グッドじゃないか。
それじゃあ、ためしに彼女が君のことをどう思っているか聞いてやろう。
こっくりさん、こっくりさん、彼女の心を教えてください。

なにっ!
これは、グッドじゃないか。
それじゃあ、ためしに彼が君のことをどう思っているか聞いてやろう。

こっくりさん、こっくりさん、彼の心を教えてください。



『あいしてる』(女用)
すごいなあ。
君、ビンビンだね。

まいったなあ。
君、ルンルンだね。



『きらい』(女用)
あれ? きらいなのか。
さっきはうまくいくって出ていたのに。
分かった。彼女は、君のことをキープ君だと思っているんだよ。
つまり、愛を持っているのは君だけで、彼女は君のことを愛していないんだ。
……お金目当てとか、そういうこともあるかもね。
でも君、別れられないんだろう?
彼女のこと、好きって言ってたしね。
……こういうカップルって、最近多いなあ。
何だよ、気を落とすなよ。
そうだ、何か他のことを占ってみないか。

あれ?
どうしたんだろ。
さっきはうまくいくって出ていたのに。
……分かった。
これが、こっくりさんの真意なんだ。
つまり、わざと悪い答えを出して、君の恋愛を終わらせようとしたんだよ。

……そして僕のような、素晴らしい男性とつきあえといってるんだ。

ね、つじつまがあってるだろう?
いやあ、こいつはいいぞ。
きっと僕達、最高のカップルになろうね。
マイ、ハニー……。
そうだ、他のことを占ってみないか。



『いいえ』『2、いない→いいえ』(女用)
うーん、かわいそうに……。
僕はもてるけど、君ってもてないんだね。
でもしょうがない、違うことを占ってみれば?
さあ、どれがいい?

あれ、変だなあ。
そんなはずはないと思うけど。
少なくともこの僕は、君にイチコロさ。
じゃあ、次にいこうか?



『はい』(女用)
やった!
さすがだね君。
早速彼女にアタックしたまえ。
それじゃあ、どういう態度でアタックするといいかを占ってあげよう。
こっくりさん、こっくりさん、お答えください。
坂上君がどういう態度をとれば、彼女のハートをつかめるのでしょうか。

おお!
さすがだね。
なんか妬けちゃうけど。
それじゃあ、どういう態度でアタックするといいかを占ってあげよう。
こっくりさん、こっくりさん、お答えください。
恵美ちゃんはどうすれば、相手のハートをつかめるのでしょうか。



『あいしてる』(女用)
ひゃあ、彼女への愛を、素直に表現しろとのおつげだぞ。
ふふふ……お熱いねえ。

ひゃあ、あつあつに告白するといいらしいぞ。
まったく……お熱いねえ。



『すき』(女用)
彼女に好意的な態度をとれば、おのずと道は開けるらしい。
まったく、あてられちゃうね。

彼に好意的な態度をとれば、おのずと道は開けるらしい。
なんか、あてられちゃうな。



『きらい』(女用)
彼女の気を引くには、冷たい態度をとる必要もありということだね。
どうやら君のお相手は、クールな男性が好みのようだ。
恋愛は、駆け引きだよ。
うひゃひゃひゃ。

彼の気を引くには、冷たい態度をとる必要もありということだね。
よし、さっそく試してごらん。
それで失敗したら、僕の胸に飛び込むといいよ。



『はい』(女用)
いやあ、君もスミにおけないね。
このこの。
恋の出会いがあるなら、それがどう進展していくかも占わないとな。
こっくりさん、こっくりさん、お答えください。
その恋の相手は、坂上君のことをどう思うようになりますか?

いやあ、そうだと思ったよ。
……相手はこの僕に違いない。
じゃあ、この出会いがどう進展していくかも占わないとな。

こっくりさん、こっくりさん、お答えください。
恋の相手は、恵美ちゃんのことをどう思うようになるのでしょうか?



『あいしてる』(女用)
おおお! すごいね君。
実は女ごろしなのかい。

おおっ!
僕の心を一発で当てたぞ。
ふっふっふ……。
これから、仲良くやろうじゃないか。
えーと。



『きらい』(女用)
人生色々あるさ。
気を取り直して、次に行こうか。
それじゃ、何を占う?

そんなバカな。
手元が乱れた、今のは忘れてくれ。
それじゃ、次は何を占う?



『すき』(女用)
幸せになれよ。
幸せになろうね。



『1、そうだと答える』(女用)
君、お金を貯めて何か買おうとか、旅行に行こうとか、スクールに通おうとか、そういう風に何かしようという気はないのかい?
君、お金を貯めて何か買おうとか、旅行に行こうとか、スクールに通おうとか、そういう風に何かしようという気はないのかな?



『はい』(女用)
今日からちゃんと、計画的にお金を使いなよ。
今日からちゃんと、計画的にお金を使うんだぞ。



『3、勉強や仕事→1、うなずく→1、している→はい』(女用)
僕は、初めから君が見どころのある男だと思っていたよ。
僕は、初めから君が見どころのある子だと思っていたよ。



『2、まだしていない』(女用)
早く勉強したまえ。だらだらした男は、女の子にもてないよ。まあ一応、今後君がその仕事に就けるかどうか調べるけど、そんな態度では、いい結果は望めないかもね。こっくりさん、こっくりさん、お答えください。
早く勉強しなきゃ。
僕でよければ、何でも教えてあげるよ。
そうだ、これから君の家庭教師になってあげようか。
ふふふ、これから楽しくなりそうだね。

よし、それじゃあこっくりさん、お答えください。
恵美ちゃんは、希望通りの仕事に就けるでしょうか。



『はい』
おっ、いい結果が出たじゃないか。君、本当に早く勉強したまえ。努力すれば、いつか報われると出ているぞ。
おっ、いい結果が出たじゃないか。
よーし、近いうちに家庭教師をしてあげるからね。
努力すれば、いつか報われると出ているからさ。




『いいえ』(変更)
勉強の仕方が悪いのかもね。
あるいは、違う仕事を選んだら?
……気を落とさないでくれよ。
そうだ、他に占いたいことはあるかい?
さあ、どれがいい?

んむむ。
世の中甘くないね。
でもまあ、頑張る心は忘れちゃいけないよ。
気をとりなおして、違うものを占ってみるかい?



『4、将来について→2、まだ特にない』(女用)
夢はないけど将来は知りたいのか……。
……うーん
あんまりいいかげんな質問をすると、こっくりさんが怒るからね。
もう少し君の意志をはっきり言ってくれないか。
君、将来はどんな風に暮らしたいわけ?

特に夢はないのか……。
……うーん
具体的に聞かないと、こっくりさんが迷うからね。
もう少し君の意志をはっきり聞いておこうか。

君、将来はどんな風に暮らしたいんだい?



『4、ひ・み・つ→いいえ』(女用)
冗談だよ。
男に、胸なんか貸したくないよ。

傷つくじゃないか。
せっかく、抱きしめてあげようとしたのに。



『2、一人では叶えられない→こいびと』(女用)



いや、それは今目の前にいる、この僕かもしれないよ。



『1、一人で叶えられる→こいびと』(女用)
まあ、夢も恋も、両方手に入れられればいいけどね。
相手が僕なら、夢も恋も、両方捨てさせはしないけど。



『こっくりさん終了』



何だったの、今のは?
この風間さんていう人、何を言いたかったのかしら。
……あ!

あの人、私が渡した五百円玉をポケットに入れてしまった。
……なんて人なの。
後輩から、お金を巻き上げるなんて。
風間さんが、こっちを見て微笑んでいる。
無視してやる。
今後、この人に関わるのはやめたほうがよさそうね。

早く、次の人の話を聞こう。
次は……。

4話風間のインチキ降霊術


『1、電気をつける』



風間さんの声に、誰かが電気をつけた。

「さあ、これで信じてくれたかな?
僕は本当に霊媒師なんだよ」
得意げな風間さん。
片手を背中に回して、なにかゴソゴソやっている。
なにをしているのかしら?
「あっ、この人テープレコーダーを隠し持ってるわ!」

同席してた女の子が、大声を上げた。

「おいおい、声が大きいよ。
でも、バレちゃしょうがないな……」

風間さんは悪びれもせず、後ろ手に持っていたテープレコーダーを机に置いた。
ひょっとして、あの不気味な声は、みんなこのテープレコーダーから流れていたわけ?

「ひどいじゃないですか、風間さん!」
「なんでだい?
君たちは、怖がりたいからこんな企画に、わざわざ来たんだろう。
だから、僕もこんな物まで用意して、その期待に応えようとしたんじゃないか」

…………全然、反省していない。
あんまりだわ。
なんで、こんな人が来てしまったのかしら。
そのとき、女の子がいった。

「ねえ……それより、さっき電気をつけてくれたのは誰?」
なにをいってるの?
私はなんの気なしに、みんなを見回した。
……あれっ?
誰も、何もいわない。
「電気をつけた人よ。
絶対この中にいるはずなのよ」

それでも、自分だといい出す人はいない。
うかがうような視線で、きょろきょろとお互いを見合っている。
女の子の顔が、青ざめて見えた。
「やっぱり。

この人が電気をつけてっていったとき、誰も動く気配がしなかったのに、電気だけがいきなりついたのよ」
ええっ!?
それじゃあ、電気が勝手についたっていうの!?

風間さんまで、びっくりしたような顔をしている。
ここには、私たち以外のなにかがいるということなのかしら?
これ以上話を続けたら、なにか悪いことが起きるような気がする。
……それなのに私の口は、勝手にこういっていた。

「……それでは次の人、お願いします」



『2、このままでいい』



……風間さんは、発泡スチロールの箱を持っていた。
「それ、ドライアイスじゃないの!?」
同席していた女の子が、改めて風間さんを指さした。

箱の中には白く煙を上げるドライアイス……。
あのエクトプラズムは、ドライアイスの煙だったの?

「君達、これがドライアイスにみえるのかい?
これは、霊を冷やして固めたものなのさ」
何をいってるの、この人は。 
さらに、女の子が突っ込んだ。

「あ! こんなところに、テープレコーダーが置いてある!」
そういって、机の下を指さした。
ひょっとして、あの不気味な音は、みんなこのテープレコーダーから流れていたわけ?

「いいの。僕は、霊媒師だから、何をやってもいいんだよ。
君、うるさいねえ。
そんなこといってると、霊に呪われちゃうよ」
風間さんは、すっかり開き直っている。

みんな、風間さんのことを、あきれたような顔で見ている。
当然よね。
「……君たち、心が狭いよ。
ちょっとしたジョークぐらい理解してくれなくちゃね。
本当は、これから霊を呼ぼうと思っていたんだから」
風間さんは、完全に開き直っている。

「……なんだ、みんなのその目は。
僕に文句でもあるのか?
僕は、みんなに怖い思いをさせてやろうと思ってだなあ……もう、いいよ。
さっさと次の奴の話を聞かせてもらおうじゃないか。
つまらなかったら、ぶっとばしてやる」

そういって、風間さんはソッポを向いてしまった。
いったい、何者なの、この人は?
……あーあ、すっかり、いじけてしまって。
仕方ないわ。
それじゃあ、次の人の話を聞こうかな。



『1、信じている』



電気がついた。
風間さんは不思議そうに考え込んでいる。
ただの悪ふざけかと思ったのに、どうやら違うみたい。
それじゃあ、風間さんは本当に霊媒師なのかしら?
そんな風には見えないけど……。

私が見つめていると、風間さんはにっこりと笑っていった。
「今のが四話目だよ。
僕は考えごとがあるんだ。
構わず続けてくれ」
……そうしようかな。
さて、次は誰に話してもらおうか?



『2、信じない』(女用)
駄目だなあ、そんなことじゃ。
君自身が信じてなくて、どうして企画が成功すると思うんだい?
信じて突き進むっていうのが、ジャーナリスト魂ってヤツじゃないのかな。
君、向いてないんじゃない?
……あれ、ムッとしてる。
怒ったのかい?
それくらいで怒り出すのも、ジャーナリスト失格だよ。
いざ取材となれば、怒鳴られたり邪魔にされたりなんて、しょっちゅうなんだ。
やっぱり、君じゃ役不足だよ。
僕のとっておきの怖い話を聞かせてあげようと思ったけど駄目だな。
君なんかには話せないや。
恨むんなら、自分の未熟さを恨むんだね。
さあ、お次へどうぞ。

ちょっと、それはまずいよ。
君自身が信じてなくて、どうして企画が成功すると思うんだい?
信じて突き進むっていうのが、ジャーナリスト魂ってヤツじゃないのかな。
ね、そう思わない?

……あれ、ムッとしてる。
怒ったのかい?
ごめん、ごめん、いじめるつもりはなかったんだけど。
いざ取材となれば、怒鳴られたり邪魔にされたりなんて、しょっちゅうなんだから。
こういうことにも、慣れておいたほうがいいよ。

僕のとっておきの怖い話を聞かせてあげようと思ったけど、今はやめておこう。
でも聞きたくなったらおいで。
いつでも、話してあげるから。
さあ、お次へどうぞ。



『3、実をいうと少し笑ってしまった』(女用)
失礼だなあ。
ひどいなあ。



『2、そんなこと出来ない』『2、載せない』『2、まわらない』(女用)
駄目だなあ。
困ったなあ。
僕の親切な忠告を、聞き入れないっていうんだね。
……しょうがないな。
君の身になにかあっても、責任もてないぞ。
ちゃんと忠告はしたからね。
明日か、一ヶ月後か、一年後か……とにかく君にはなにかが起きるよ。

そのときに後悔しても、遅いんだからね。
風間さんの話が終わった。
ニヤニヤしている。
今のは、全部嘘だったんだろうか?
……そうならいい。
でも、もしかして……。
高まる不安を、私は必死に押さえた。

「つ……次の人、お願いします」



『1、いう通りにする』(女用)
それじゃあ、右足の上履きを脱いで。
それを頭に乗せるんだ。
ほら早く。
 
それじゃあ、まずこっちに来てよ。
僕の手に君の手を載せるんだ。

ほら早く。



『1、載せる』(女用)
……よし、それでいい。
ゆっくり立ち上がって。
気をつけの体勢で、三回まわってごらん。
そのとき、なるべく息はしないようにね。

……よし、それでいい。
大事なのはこの次なんだけど。
僕と一緒に、ワルツを踊るんだ。

さあ、最初はくるくる回るステップだよ。



『1、まわる』(女用)
よし、いいぞ。
一回……二回……これで三回。
…………プッ。
あはは、君って素直なヤツだなあ。
すっかり信じ込んじゃったみたいだな。
そんなに鬼気迫ってたかい?
こんな方法で霊を鎮められるなんて話、聞いたことないけどね、あはははは。
……あれ、怒ったかな?
ごめんごめん、でも元はといえば、君が僕のいうことを笑ったりするからさ。
ほんの仕返しじゃないか。

よし、いいぞ。 
ル〜……ラ〜……ルルル〜。

…………プッ。
あはは、君って素直なヤツだなあ。
すっかり信じ込んじゃったみたいだな。
そんなに鬼気迫ってたかい?
ダンスはすごくよかったけど、ほんの冗談だったのに。
あはははは。
……あれ、怒ったかな?

ごめんごめん、でも元はといえば、君が僕のいうことを笑ったりするからさ。
ちょっと仕返しってやつ。
そんなに怒るなよ……。
風間さんはニヤニヤしていた。
霊媒師の話はどうなったのよ?
……でも私は聞いたりしなかった。

もう、この人に関わるのはまっぴらだわ。
また妙なことをいい出さないうちに、さっさと次の話に行ってしまおう。



『3、別にどっちでもいい』(女用)
……失礼な男だなあ、君は。
せっかく僕が、話をふってやったんだよ。
こういうときは、
「はい、ぜひ教えてくださいっ!」
……くらいのことは、いうものだ。
まあいいよ。
君なんかに、細やかな心配りを求めた僕が、馬鹿だったんだよな。

……ひどいなあ、君は。
せっかく僕が、話をふっているんだよ。
こういうときは、
「はい、ぜひ教えてくださいっ!」
……とかなんとか、いってほしかったな。

まあいいよ。
君も、緊張しているんだろう、とっさに、いい返事ができなかっただけだよね。



『1、聞こえるはずがない』(女用)
それにしても、君って失礼な男だな。
僕が聞こえるっていってるのに、信じないなんて。
上級生に対する礼儀にも欠けてるよ。

それにしても、君っていけない子だな。
僕が聞こえるっていってるのに、信じないなんて。
許せることではないよ。
おかげで、アイディアを考えなおさなきゃ。
風間さんは腕組みをして、なにかブツブツといい始めた。

また、今みたいなくだらないことを考えているのね。
この人は、今回の企画を理解してないんじゃないかしら?
でも、そんなことをいったら、またいけない子だねなんて、いいだすに違いないわ。
……私はため息をついた。
この人にはもう、
「さわらぬ神にたたりなし」
ってことわざ通りにいこう。
さて、次は誰に話してもらおうかな?



『1、やめる』



「……やめましょう」
私はいった。
誰かが不満そうな声をあげた。
だけど、ほとんどの人は私と同じ意見みたいだった。
それはそうよね。
風間さんのいった、暗がりに潜む気配っていうのは、確かに感じられるんだから。

本当にあの暗がりには、なにかがいる。
もちろん、それがなにか確かめるなんて気は全然ないけど。
私だって命は惜しい。
それほど危険な気配だったから。

……案外、風間さんも『神』なんていって、本当はここから逃げたいだけだったのかもしれないわ。

私たちは立ち上がった。
暗がりにいるヤツに隙を見せないよう、ゾロゾロとくっついて部室を出る。

扉を閉めようと振り向いたとき、一瞬暗がりでニヤリと笑う二つの目が見えた……ような気がした。 
私はあわてて扉を閉めた。

誰も、次の集まりをいつにするかとは聞かなかった。
この次なんてないと、みんなわかっているんだろうな。
命拾いしただけでも、よしとしなくちゃ。
この企画は、やってはいけなかったのよ。

見慣れたはずの学校が、なんだか急に不気味な存在に思えた。
二度と、この企画はやらない。
私は、固く心にそう決めた。



『2、続ける』(女用)
……へえ、勇気があるんだな、君は。
それとも引くことを知らない大馬鹿かな。
まあ、それならそれでいいさ。
でも僕はちゃんと注意したからね。
神の声を無視して続けて、なにか起こったら君のせいだからな。
よく覚えとくんだね。

……おお、勇気があるんだな、君は。
それとも正義感があるってことかな。
まあ、それならそれでいいさ。
でも僕はちゃんと注意したからね。
神の声を無視して続けて、なにか起こったら大変だぞ。
気をつけるんだよ。

……じゃあ、次の人どうぞ。

5話謎に満ちた風間の秘密


『スンバラリア語/ヤパーレ語』(変更)
「KRTPSBMZQ!!」「SDFJWKJSVS/JKGJRI」「TGDZSMKB/PLKYWQ」「QWYKLP/BKMSZDGT」




『6、頭の変な人』(女用)
……そう、僕は頭の変な人……な、わけないだろ。
君、まじめに僕の話を聞く気があるの?
君ねえ、今のは冗談になっていないよ。
僕が紳士だからよかったものの、今のは普通ぶっとばしもんだよ。
殴られたって、文句いえないよ、今の発言は。
あのねえ、僕が頭の変な人だったら、今頃、こんなところにいるわけないでしょ?
いいかい?
もう一度だけ、チャンスをあげるからね。
今度、わけのわからないことを答えたら、僕は君をただじゃおかないからね?
わかるね、ただじゃおかないって意味。
わかったら、まじめに考えてよね。

……そう、僕は頭の変な人……な、わけないだろう。
君、まじめに僕の話を聞く気があるのかい?
今のはちょっと冗談になっていないよ。
せっかくのスクープなんだから、ちゃんと当ててくれよ。
僕、傷ついちゃったよ、今の発言で。

あのね、僕が頭の変な人だったら、今頃、こんなところにいるわけないでしょ?

いいかい?
もう一度だけ、チャンスをあげるからね。
今度、わけのわからないことを答えたら、僕は君をただじゃおかないからね?
わかるかな、ただじゃおかないって意味。
とにかく、まじめに考えてよね。



『3、異次元人』『4、妖怪』



……………ちょっと。
そんな……、終わりなの?
これで、終わりなんてあんまりよ。
風間さんの、あんな話につきあった私が馬鹿だったのね。
これじゃ、とても記事にならないわ。

こうなったら、彼になんとかしてもらわないと。



『1、妖怪だという証拠を見せてもらう』『1、地底人だという証拠を見せてもらう』(女用)
「君、そんなに疑り深い性格じゃ、女の子に嫌われちゃうよ。僕のことを、信用していないんだね。君は……」
「……あのう、今の説明じゃ、ちょっと新聞がつくれそうもないので、風間さんが妖怪(地底人)だという証拠を、私たちに見せてもらえませんか?」
私は、思い切っていってみた。

「君、そんなに疑り深い性格じゃ、男の子に嫌がられちゃうよ。
僕のことを、信用していないんだね。君は……」



『(妖怪・宇宙人・地底人)2、まじめに話してもらうように頼む』(女用)
「まじめにだって? 失礼だな、僕が嘘つきだっていうのかい? 僕はいたってまじめだよ。僕はね、こんなに正直者はいないって自負しているんだよ。そんな僕をつかまえて、嘘つき呼ばわりするなんて納得がいかないな。え?」
「風間さん、いくらなんでもそれはないですよ。
まじめに、話をして下さい」
私は、思わず風間さんにそういっていた。

「まじめにだって?
ひどいな、僕が嘘つきだっていうのかい?
僕はいたってまじめだよ。
僕はね、こんなに正直者はいないって自負しているんだよ。
そんな僕をつかまえて、嘘つき呼ばわりするなんて納得がいかないぞ。君?」

彼は、ちょっとムッとしていった。
そして、彼は続けていった。




『(妖怪)1、信用している』



「いえいえ、風間さんを信用していないわけじゃありませんよ。
私はちゃんと、風間さんを信用していますからね。
ええ、信用していますとも!!」
私は、力んでいた。
こういうことは、勢いでいわないととてもいえないわ。



『(妖怪)2、信用していない』



私はいった。
「やっぱり、ちょっと信じられませんよね」



『目をつむる』


そういって彼は、私の方に歩いてきた。
「恵美ちゃんいいかい、目をつぶってくれ。
僕がいいというまで目を開けてはいけないよ」
私は、風間さんのいう通り目をつぶった。

……………………………………………………………どうしたのかな。
全然、なにも起きないじゃない。

いったい、いつまでこうやっていればいいのかしら。



『1、我慢できずに、目を開けた』(女用)
「さあ、僕の話は坂上君が台無しにしてしまったから、ここでおしまいだ。さあ、残念だけど次の人の話を聞こうか」
私は、もう我慢できずに目を開けてしまった。

……彼は、鼻をほじっていた。
「か、風間さん?」
私は、呆然としていった。
彼はちょっと困ったようにいった。

「あ、目を開けちゃダメだっていったじゃないか。
約束は、守らないとダメだよ。
約束が守れないなら、証拠は見せられないよ。」
そして、呟くようにいった言葉を、私は聞き逃さなかった。
「君が、目をつぶってるうちに僕が妖怪だっていう証拠を考えていたのになぁ」

……ちょっと!!
証拠なんて、考えるものじゃないでしょ!
人を、おちょくるにもほどがあるわ!
ううーーーーーーーーー!!
…………………いや。
こんな、風間さんにつきあった私がいけなかったのよ。

そうよ、それは最初からわかりきっていたことなのに。
うう、私はなんてバカなの。
そして、風間さんは私を流し目で見ながらこういった。
「恵美ちゃんが約束を破っちゃったから、僕の話はここでおしまいだ。
さあ、残念だけど次の人の話を聞こうか」



『2、我慢した』



こんなことにつきあって、私って本当にお人好しね……。
でも、ひょっとしたらという気持ちも、ほんの少しはあったし、私は我慢した。
「さあ、もういいよ。
目を開けてごらん」
彼はいった。

……これといって、変わったところはないようだけれど。
そんな私を見て、笑いながら彼はいった。
「悪いけど、今はまだ僕の妖怪としての力を証明できないんだよ。
それがわかるのは、今度の満月の夜だ。

その日、恵美ちゃんは自分の変化に気づくよ。
君は、獣に変身するのさ。

僕は、妖怪ぬらりひょん。
僕は、人間を妖怪に変えることができる。
それが、僕が妖怪だってみんなに証明できる唯一のものなんだ。
恵美ちゃんは、身をもってそれを証明することになるわけだな」

そういう、風間さんの目が金色に光ったのを、私は見逃さなかった。

私が妖怪になる?
冗談いわないで。
……でも、今度の満月まで確か後三日よね。
気にすることないわ、風間さんのいうことなんか信じなければいいのよ。
……信じなければ。

風間さんは、みんなを見回していった。



『2、地底人』



「熱く、たぎったマグマじゃないんですか?」
私は言った。
「ちっ、ちっ、マグマじゃないんだよ、バカだなぁ。
あれは、僕らのカモフラージュにすぎないんだよ。
そして、我々は人間の姿を借りて君らに紛れているのさ。
君たちだけが、地球の生物だなんて思っちゃいけないよ。
どうだ、怖かっただろう。
これで、七不思議の新聞はばっちりさ。
よかったな、恵美ちゃん。
さあ、次の人の話に行こうか。」

……………ちょっと。
そんな……、終わりなの?
これで、終わりなんてあんまりよ。
風間さんの、あんな話につきあった私が馬鹿だったのね。
これじゃ、とても記事にならないわ。

こうなったら、彼になんとかしてもらわないと。