僕は、急いで口を開いた。
「何をする気かしらないけど、僕を選べばいいだろう!?」
さっきは、気の迷いで、細田さんを見捨ててしまうところだった。
僕を友達をいってくれる細田さんを、これ以上裏切れない。
細田さんは体を震わせた。
「坂上君。
君って人は……」
それから少女を見た。
「いや、僕をやれ!
坂上君は友達なんだ」
きっぱりという。
仮面の下で、少女が笑ったような気がした。
「ならば二人ともか」
そう聞こえた瞬間、天井がぐらりと動いた。
表面が柔らかくなって、体が吸い込まれる。
まるで、水に落ちたときのようだった。
細田さんが、手足をばたばたさせた。
「嫌だ!
やっぱりやめてくれ!
坂上君だけにしてくれ!!」
情けなく、泣き声をあげている。
「おまえたちの友情は、そんなものか」
少女の声がして、再び天井に弾力が戻った。
しかし、細田さんだけはズブズブと沈んでいく。
「嫌だ! 嫌だよ!
助けてくれよっ!
うわあーーーーーーっ!」
もがく手を飲み込んだ展示場が、タプンと一瞬、波立つ。
それっきり、細田さんの姿は見えなくなった。
仮面の少女が、クックッとのどの奥で笑う。
「お前はすでに、人間のいやらしさを思い知っただろう。
そんな汚らしいものとは、もう手を切ってしまったらどうだ……?」
仮面の切れ込みの奥の目が、ねばつく光を放っている。
でも、全然不快な感じはしなくて……。
いつの間にか、僕は手を差し出していた。
「行くよ…………君といっしょに」
ひやりとした彼女の指が、僕の手を握る。
こんな、薄汚れた世界なんて、もうたくさんだ。
僕は、ここで生きていく。
ゼリーのように固まった、永遠の時間の中で。
そしてすべてが終わった…
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