確かに授業に出ようかと一瞬考えた。
しかし、やっぱりやる気が出るはずもなく、屋上で時間を潰そうという思考になってしまう。興が冷めたとはいえ、火照る身体を先ほどまで持て余していた私はなんともやるせない気持ちだった。
そんなとき、キャーキャーという黄色い歓声と共に今一番会いたくない人物が私の視界を遮る。突然のご登場に逃げる術もなく、彼の美しい瞳に吸い込まれるように視線がかち合ってしまった。
__まるでそれが必然かのように。
「アーン?てめぇは……」
「授業があるので失礼致しますわっ!!」
「おい、待て!杉本香奈!」
「ひ、人違いですわよ!!」
「俺が婚約者の名前と顔を間違えるとでも?」
「アーーーーー!!!やめて!そういうのほんとに!」
婚約者という単語を耳にし、ざわつく女子生徒達に危機感を覚えた私は慌てて彼の腕を引っ張り、無理やり近くにあった部屋に彼ごと入り込んだ。すると、そこは立派な机が置いてあり、立てかけられたプレートには、生徒会長と刻印されている。なるほど、跡部はここから出てきたのか。そりゃあイリュージョンのように突然現れたわけだ。でもなんでこんな中途半端な時間に生徒会室?なんて考えていると腕を掴まれたままの彼は不機嫌そうに言葉を発した。
「おい、何の真似だ?」
これは、もしやチャンスなのかも知れない。私の薔薇色セックスライフにおいて“跡部の婚約者”という肩書きは正直邪魔だ。今ここで上手くやれば婚約破棄を決め込んで、自分の好きなように青春を送れるのかもしれない。そんな淡い期待が胸を高鳴らせ、私は交渉を始めた。
「……私、跡部くんと面識ないよね?それなのに婚約者だなんておかしいと思わない?」
先ずは彼の出方を伺いたいところだ。跡部だってこんな見ず知らずの女が突然婚約者だなんて嫌だろう。そこにつけ入れられれば__。
「ああ。だが、決まったことを覆す為にわざわざ労力を使うほど俺は暇じゃねぇ」
「そうきたかー……」
「何だ。お前は俺様との婚約が不服だとでも言うのか?」
はい、不服です。迷惑です。なんて口が裂けても言えるはずが無い。そんなことを言ったと雌猫の皆さんに知られれば、私の命はないだろう。これ以上夢とはいえ怪我だの面倒ごとは御免だ。
……いや、でも、こちら側から拒絶を示せば、彼も不満を言いやすくなるのでは?
「そうなの。私、恋愛結婚に憧れてるから政略結婚はちょっと……」
「アーン?俺と恋愛すれば済む話じゃねーの」
「いやいやいやいや!!違くて!!跡部くんだって別に私の事好きじゃ無いでしょう!?」
突然の殺し文句に今まで必死に回転していた思考がショートしてしまいそうになる。そりゃあ誰だって跡部との婚約は嬉しいだろう。天下のあの跡部様だ。泣いて乞うてもその立場になれるわけじゃない。地位も家柄も将来も保証されている。誰しも女の子なら頼まれなくても好きになってしまうだろう。それくらい跡部景吾は魅力的な男だ。
__しかし、私は彼以外の複数人とセックスをするために今この明晰夢で孤軍奮闘している。忘れてはいけない。私は、セックスをしに(以下略)だから揺らぐわけにはいかない。絶対。
そう決意した矢先、跡部は私の事を壁際に追いやり所謂壁ドンと呼ばれる体制になってしまった。そんなに美しい尊顔を近距離で見るとなると、揺らがないと決意したばかりの私でも流石に動揺してしまう。
「お前、よく見ると整った顔立ちしてるじゃねーの」
そうだった。今の私は百人中百一人が振り返るほどの美少女だった。これは跡部景吾様といえど私の容姿に惹かれてしまうかも知れない。自惚れるなと怒られるかもしれないが実際問題そうだから仕方ない。
「跡部様には遠く及びませんわ……」
「それに、俺の家に婚約の話が来るってことは家柄もそこそこってことだろ?なら何の問題があるんだ。言ってみろよ?」
「……問題しかないんですよね」
「その問題とやらを言ってみろ」
もう、こうなったらやけだ。忍足のせいで中途半端に火照った身体を慰めてもらうついでに跡部にドン引いてもらおう。ワンチャン流されてくれればラッキーだ。
「私、多分跡部くんだけじゃ満足できないと思うの」
「……っ!」
私は彼の尊顔をしっかりと視界に捉えて不敵な笑みを浮かべながら股間に手を伸ばす。するりと撫で上げれば、彼にしては珍しく瞳の中に動揺が見えた。スピーカーからは本鈴の鳴る音が聞こえてくるが、ブーストがかかった私はもう跡部を逃すつもりはない。
「あーあ、跡部くんが首を縦にふってくれないからチャイム鳴っちゃった」
「なん……」
「いいや、ねぇ、婚約破棄くれないなら私のお願い聞いてもらうね。拒否権はないから」
彼の胸元を軽く突き飛ばし、背後のソファへと誘導する。体幹がしっかりしている彼が上手いことソファに雪崩れ込んだのはきっとご都合主義な私の夢だからだろう。
「……何のつもりだ?」
「何って、ナニだけど……?跡部くんは女の子にそんなこと言わせるの?」
「はぁ?」
呆れたような声を無視して跡部に馬乗りになった私は彼の制服を着々と乱していく。次第に露わになる鍛えられた肉体美は思わず生唾を飲んでしまうほど、美しかった。
「勝手に脱がせて勝手に見惚れてたら世話ねぇな。気は済んだか?」
「ぜーんぜん?……あれ?跡部くんは抵抗しなくていいの?」
「拒否権はねぇんだろ?お前の好きにしろよ、香奈」
「ふーん、ちょっと意外」
抵抗しないのも、急に香奈で呼んでくるのも想定外だ。私の言葉に彼は嘲笑うように鼻を鳴らした。
「ハッ、女に恥をかかす趣味はねぇからな」
じゃあ、私以外に迫られたら?という言葉が喉元まで出かかったが無理やり飲み込んだ。危ない。私は彼の婚約者だが、今はそれを破棄したい立場にいる。それなのに煽るような事を言ってどうする。少し冷静になってみたが、据え膳に集中したくて思考を放棄した。
「跡部くんは優しいんだね、じゃあ遠慮なく?」
「だが、男として……俺が下なのは頂けねぇな」
「うぁ!?」
厚い胸板にキスを落とした瞬間、突如反転する視界に締まりのない声を上げて目を瞑る。次に目を開いた時、半裸の跡部がこちらをしたり顔で見下ろしていた。
「……私の好きにしていいんじゃなかったの?」
「気が変わった。お前、俺じゃ満足出来ないとか言いやがったよな?」
「あ、えーっと……言葉の文だから怒っちゃいや」
「その余裕なくしてやろうじゃねーの」
「まっ、んぁ!?」
不敵に微笑んだ後すぐに首筋を這うように唇を寄せられる。その感覚に過剰に反応してしまうのはきっと意図せずお預けを長い間くらっていたせいだろう。我慢の限界が近いのに微かな刺激しか与えて貰えなくて気が狂いそうになる。
「感度はいいみてぇだな」
「跡部、くん……私、早く挿れて欲しいんだけど」
「アーン?そう急くなよまだ始まったばっかりだろ?」
にやにやと私を見下ろす彼は思っていたよりも意地悪だ。嫌、ジワジワ攻めていくのが彼のプレイスタイルだっけ。そんなことよりも下品な話だが、忍足の一件から私はもう、下半身が大洪水なわけで。
「ねぇ、お願い……?」
わざと上目遣いで彼の首に腕を回し、制服のズボンを押し上げる跡部の中心を膝で上から軽く擦った。
さあ、跡部はどうでる。幾ばくもなく彼は口角を上げ、自らズボンのベルトに手をかけた。
「そう急くなと言ったばかりだろ?お願いするならもっと方法があるんじゃないか?」
「……舐めろってこと?」
彼から返事が返ってくることはなかったが、きっとそれが答えだ。舐めればすぐに挿れてくれるのなら、と私はゆっくり起き上がり彼の足の間に身体をねじ込んだ。
しかし、やっぱりやる気が出るはずもなく、屋上で時間を潰そうという思考になってしまう。興が冷めたとはいえ、火照る身体を先ほどまで持て余していた私はなんともやるせない気持ちだった。
そんなとき、キャーキャーという黄色い歓声と共に今一番会いたくない人物が私の視界を遮る。突然のご登場に逃げる術もなく、彼の美しい瞳に吸い込まれるように視線がかち合ってしまった。
__まるでそれが必然かのように。
「アーン?てめぇは……」
「授業があるので失礼致しますわっ!!」
「おい、待て!杉本香奈!」
「ひ、人違いですわよ!!」
「俺が婚約者の名前と顔を間違えるとでも?」
「アーーーーー!!!やめて!そういうのほんとに!」
婚約者という単語を耳にし、ざわつく女子生徒達に危機感を覚えた私は慌てて彼の腕を引っ張り、無理やり近くにあった部屋に彼ごと入り込んだ。すると、そこは立派な机が置いてあり、立てかけられたプレートには、生徒会長と刻印されている。なるほど、跡部はここから出てきたのか。そりゃあイリュージョンのように突然現れたわけだ。でもなんでこんな中途半端な時間に生徒会室?なんて考えていると腕を掴まれたままの彼は不機嫌そうに言葉を発した。
「おい、何の真似だ?」
これは、もしやチャンスなのかも知れない。私の薔薇色セックスライフにおいて“跡部の婚約者”という肩書きは正直邪魔だ。今ここで上手くやれば婚約破棄を決め込んで、自分の好きなように青春を送れるのかもしれない。そんな淡い期待が胸を高鳴らせ、私は交渉を始めた。
「……私、跡部くんと面識ないよね?それなのに婚約者だなんておかしいと思わない?」
先ずは彼の出方を伺いたいところだ。跡部だってこんな見ず知らずの女が突然婚約者だなんて嫌だろう。そこにつけ入れられれば__。
「ああ。だが、決まったことを覆す為にわざわざ労力を使うほど俺は暇じゃねぇ」
「そうきたかー……」
「何だ。お前は俺様との婚約が不服だとでも言うのか?」
はい、不服です。迷惑です。なんて口が裂けても言えるはずが無い。そんなことを言ったと雌猫の皆さんに知られれば、私の命はないだろう。これ以上夢とはいえ怪我だの面倒ごとは御免だ。
……いや、でも、こちら側から拒絶を示せば、彼も不満を言いやすくなるのでは?
「そうなの。私、恋愛結婚に憧れてるから政略結婚はちょっと……」
「アーン?俺と恋愛すれば済む話じゃねーの」
「いやいやいやいや!!違くて!!跡部くんだって別に私の事好きじゃ無いでしょう!?」
突然の殺し文句に今まで必死に回転していた思考がショートしてしまいそうになる。そりゃあ誰だって跡部との婚約は嬉しいだろう。天下のあの跡部様だ。泣いて乞うてもその立場になれるわけじゃない。地位も家柄も将来も保証されている。誰しも女の子なら頼まれなくても好きになってしまうだろう。それくらい跡部景吾は魅力的な男だ。
__しかし、私は彼以外の複数人とセックスをするために今この明晰夢で孤軍奮闘している。忘れてはいけない。私は、セックスをしに(以下略)だから揺らぐわけにはいかない。絶対。
そう決意した矢先、跡部は私の事を壁際に追いやり所謂壁ドンと呼ばれる体制になってしまった。そんなに美しい尊顔を近距離で見るとなると、揺らがないと決意したばかりの私でも流石に動揺してしまう。
「お前、よく見ると整った顔立ちしてるじゃねーの」
そうだった。今の私は百人中百一人が振り返るほどの美少女だった。これは跡部景吾様といえど私の容姿に惹かれてしまうかも知れない。自惚れるなと怒られるかもしれないが実際問題そうだから仕方ない。
「跡部様には遠く及びませんわ……」
「それに、俺の家に婚約の話が来るってことは家柄もそこそこってことだろ?なら何の問題があるんだ。言ってみろよ?」
「……問題しかないんですよね」
「その問題とやらを言ってみろ」
もう、こうなったらやけだ。忍足のせいで中途半端に火照った身体を慰めてもらうついでに跡部にドン引いてもらおう。ワンチャン流されてくれればラッキーだ。
「私、多分跡部くんだけじゃ満足できないと思うの」
「……っ!」
私は彼の尊顔をしっかりと視界に捉えて不敵な笑みを浮かべながら股間に手を伸ばす。するりと撫で上げれば、彼にしては珍しく瞳の中に動揺が見えた。スピーカーからは本鈴の鳴る音が聞こえてくるが、ブーストがかかった私はもう跡部を逃すつもりはない。
「あーあ、跡部くんが首を縦にふってくれないからチャイム鳴っちゃった」
「なん……」
「いいや、ねぇ、婚約破棄くれないなら私のお願い聞いてもらうね。拒否権はないから」
彼の胸元を軽く突き飛ばし、背後のソファへと誘導する。体幹がしっかりしている彼が上手いことソファに雪崩れ込んだのはきっとご都合主義な私の夢だからだろう。
「……何のつもりだ?」
「何って、ナニだけど……?跡部くんは女の子にそんなこと言わせるの?」
「はぁ?」
呆れたような声を無視して跡部に馬乗りになった私は彼の制服を着々と乱していく。次第に露わになる鍛えられた肉体美は思わず生唾を飲んでしまうほど、美しかった。
「勝手に脱がせて勝手に見惚れてたら世話ねぇな。気は済んだか?」
「ぜーんぜん?……あれ?跡部くんは抵抗しなくていいの?」
「拒否権はねぇんだろ?お前の好きにしろよ、香奈」
「ふーん、ちょっと意外」
抵抗しないのも、急に香奈で呼んでくるのも想定外だ。私の言葉に彼は嘲笑うように鼻を鳴らした。
「ハッ、女に恥をかかす趣味はねぇからな」
じゃあ、私以外に迫られたら?という言葉が喉元まで出かかったが無理やり飲み込んだ。危ない。私は彼の婚約者だが、今はそれを破棄したい立場にいる。それなのに煽るような事を言ってどうする。少し冷静になってみたが、据え膳に集中したくて思考を放棄した。
「跡部くんは優しいんだね、じゃあ遠慮なく?」
「だが、男として……俺が下なのは頂けねぇな」
「うぁ!?」
厚い胸板にキスを落とした瞬間、突如反転する視界に締まりのない声を上げて目を瞑る。次に目を開いた時、半裸の跡部がこちらをしたり顔で見下ろしていた。
「……私の好きにしていいんじゃなかったの?」
「気が変わった。お前、俺じゃ満足出来ないとか言いやがったよな?」
「あ、えーっと……言葉の文だから怒っちゃいや」
「その余裕なくしてやろうじゃねーの」
「まっ、んぁ!?」
不敵に微笑んだ後すぐに首筋を這うように唇を寄せられる。その感覚に過剰に反応してしまうのはきっと意図せずお預けを長い間くらっていたせいだろう。我慢の限界が近いのに微かな刺激しか与えて貰えなくて気が狂いそうになる。
「感度はいいみてぇだな」
「跡部、くん……私、早く挿れて欲しいんだけど」
「アーン?そう急くなよまだ始まったばっかりだろ?」
にやにやと私を見下ろす彼は思っていたよりも意地悪だ。嫌、ジワジワ攻めていくのが彼のプレイスタイルだっけ。そんなことよりも下品な話だが、忍足の一件から私はもう、下半身が大洪水なわけで。
「ねぇ、お願い……?」
わざと上目遣いで彼の首に腕を回し、制服のズボンを押し上げる跡部の中心を膝で上から軽く擦った。
さあ、跡部はどうでる。幾ばくもなく彼は口角を上げ、自らズボンのベルトに手をかけた。
「そう急くなと言ったばかりだろ?お願いするならもっと方法があるんじゃないか?」
「……舐めろってこと?」
彼から返事が返ってくることはなかったが、きっとそれが答えだ。舐めればすぐに挿れてくれるのなら、と私はゆっくり起き上がり彼の足の間に身体をねじ込んだ。
2021.02.14
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