忍足に手当てをしてもらう

校庭を走っている最中、背中に強い衝撃を受け転倒した。混乱したまま地面に座り込む私1人を取り残し、他の女子は何事もなかったかのように過ぎ去っていった。これは……完全なる悪意を感じる。
膝を見ると微かに血が滲んでおり、ご丁寧に痛みまで伴う始末だ。体操服についた土を払い落とし、教師に保健室に行くと声をかけて校庭を後にした。夢の中なのに解せぬ。なんだかやる気のなくなった私は更衣室に着替えをとりに行ってから保健室へ向かった。この後授業に戻る気なんてさらさらないのだ。

保健室の場所は校庭に行くまでに確認していたので迷うこともなく無事にたどり着いた。扉を開けた先には保険医の姿がなく、代わりに藍色がかった長めの黒髪が揺れた。

「あれ、侑士くん?」
「香奈ちゃんやん、どないしたん?」
「あー……体育でこけちゃって……侑士くんは?」
「ちょっと頭痛うてな。薬飲んで休んどってん。今は楽になったさかい、心配せんでええで」
「そっか、よかったー……」
「それよか、こっち来ぃ。手当てしたるわ」

そういうと忍足は優しげに眼鏡の奥の瞳を細め、手招きをした。言われるがまま小さな丸いすに座って足を差し出すと、手際よく治療をしてくれる。流石親が医者の息子だ。

「侑士くん、保健委員とか?」
「ちゃうで。海外交流委員や」
「へぇ、手際いいからてっきり保健委員なのかと」

涼しい顔で平然と嘘をつく。ファンブックを暗記している私に死角はない。当たり前だが、忍足は淡々と説明をしてくれた。

「俺の親が医者やからなぁ。こんくらい朝飯前やで」
「ふーん……親とか関係なく侑士くんが手当てできるのは侑士くんの実力だよね、上手く言えないけど凄いなぁって思うよ。私こんなに手際よくできないもん」

思ったことを言っただけなのに忍足の切れ長の瞳が丸くなる。それからすぐに「自分変わっとるな」と微笑んで頭を撫でてくれた。消毒を終え、大きめの絆創膏を貼り付けるとゆっくり離れていく彼の手に名残惜しさを感じる。

「ん、できたで。しっかし派手にこけたなぁ……傷は残らんと思うけど、気ぃつけや」
「あはは、ありがとう」
「それにしても自分、ええ足しとるわ。手当てのおかげで役得や」
「ふふ、侑士くんのえっちー」
「男は皆狼やで?」

なんて馬鹿げた会話をしたあと、ほな。と忍足は扉に手をかけた。慌てて声をかけると不思議そうに振り返る。こんなチャンス逃してはダメだ。

「侑士くん、足痛いからベッドまで運んでくれない……?」
「なんやて……?」
「だめかな、お願い」

上目遣いで手を広げてだっこのポーズをとる。実際の私ならできないが、何分今は美少女なので多少のお痛も許してほしい。忍足はしばらく悩んだ後、困ったように眉間に手を当てるとゆっくりこちらに近づいた。目の前までくると歩みを止め、子どもに目線を合わせるようにしゃがみ込む。

「そないなこと言われたら期待してまうで」
「ふふ、なんの期待?」
「からかわんといてぇな、わかるやろ?」
「……ベットに運んでくれたら期待通りになるかもよ?」
「はぁ、しゃーないわ」

立ち上がるとすぐに私の肩を抱き、膝裏に手を入れて抱え込んだ。所謂お姫様抱っこだ。自分で言っておいてなんだが、急に羞恥心が募る。赤くなる顔を悟られないように下を向くと彼の胸板から漂う香水のような仄かな甘い香りが鼻腔をくすぐった。明るいベージュのカーテンを閉め、真っ白のシーツに優しく降ろされる。身体が沈むと同時に背を向ける忍足を私の右手は許さなかった。

「……ほな、俺は戻るわ」
「待って、侑士くん。……据え膳食べないの?」
「勘弁してぇな……香奈ちゃん、あかんて」
「女の子に恥かかせるんだ……そっか」
「あーー……もう……嫌がってもやめへんからな?」

ベッドに2人分の体重がかかり、スプリングが軋む。それが合図になり、忍足の啄むようなキスで鼓動が高鳴った。フィクションの中の彼が今私とキスをしている。その事実だけで昇天しそうなほど興奮した。忍足の首元に腕を回して引き寄せると遠慮がちな舌が口内へと侵入してくる。応えるように自身の舌を絡めると忍足から躊躇いの色が消えた。
何度も歯列の裏をなぞられ、口内を犯されればその気持ちよさに子宮が疼く。体操服の上から優しく胸を撫でられると敏感な先端が布ごしに擦れた。

「ぁっ……もっと……」
「……自分、思うてたよりえろいな」
「ふふ、侑士くんは思ってたよりヘタレだね」
「自分それ煽っとるつもりかいな……ほな、期待に応えたるわ」

少し不機嫌そうに眉を潜めると体操服をいきなり捲り上げられる。そのまま背中に手を回した忍足は慣れた手つきでホックを外した。黒いレースがずれて露わになる桜色の突起に迷うことなく唇が寄せられる。空いている方の手でゆっくりと乳房を包み込み、優しく揉みしだかれれば自分でも下半身が濡れるのがわかった。

「っぅん、ねぇ……下も触って……」
「まだや、おねだりしてもさっきヘタレって言うたの撤回するまで触らへんで」
「ごめんてばぁ……んんっ」

忍足が先端を口に含んだまま喋ればその吐息がくすぐったくて身をよじる。焦らされている事実も今の私にとっては興奮材料でしかなかった。
それから何度か可愛く懇願してみせるが、相変わらず粘着質な胸の愛撫は続いた。耐え兼ねた私は少し上体を起こしてズボンの上から押し上げる彼の自身に優しく触れる。ぴくんと微かに反応を示す忍足の隙をついてベルトに手をかけるがやんわり押しのけられた。

「触っちゃだめなの?」
「あかんで、まだ俺の番や」
「んー……じゃあ、ちゅーしよ?」

言葉は発しないものの、首の後ろに手を回せば静かに応えてくれる。そのまま忍足の上に体重をかけ、忍足の主張するそれに体操服ごしに秘部を擦り付けた。体操服の生地が分厚く、焦れるだけで上手く快感は伝わってこない。
しかし、忍足を煽るには充分だったようで、キスを中断して身体を離すと体操ズボンを下着ごとずり下ろされる。そのままゆっくりと押し倒されれば背面にある柔らかなベッドに再び体が沈み込んだ。

「自分、煽るん上手いなぁ。どこでそんなん覚えてん」
「ふふ、ひみつ」

忍足の手が太腿をなぞり、閉じていた足がゆっくりと開かせられる。内側を優しく撫でられ、そのまま充分に濡れている秘部へ指が沈み込む。久しぶりの感覚に甘い吐息が漏れた。

「中狭いなぁ、指2本でキツキツやで」
「んぁ!!……はぁん……!」
「しっかり解さんと俺の入らへんな」

求めていた質量よりも軽いそれは中でバラバラに動くと、より一層高い嬌声が出る場所を探り当てる。腹部に力が入り、自分でも忍足の指を締め付けているのが分かった。

「あぁ……!!!だめ……っ!!」
「自分、ほんまかわええわ……1回イっとき」
「んぁっ!!」

忍足に耳元で囁かれたと同時に私の身体は大きく跳ねた。足先までガクガクと痙攣し、意識がぼうっとする。肩で息をする私を後目に忍足は自分のベルトに手をかけ、カチャカチャと外し始める。__が、そこで動きが止まった。

「あかん、今ゴム持っとらんかったわ」
「だいじょ、ぶ。ピル飲んでるから……ゆーし、くん……挿れて……?」
「……堪忍な、ほんまはこんな軽率なことしたくないねんけど、俺も限界やねん」

意外と真面目な忍足に自然と笑みが溢れる。緩んだ口元を隠すように忍足にしがみついた。そんなことより早く挿れて欲しいと気持ちが急く。夢の中だから実際の私の身体に不都合なんてない。何なら中出しセックスヤり放題である。

「痛かったら言うんやで……やめられるかはわからんけど」
「ぅん、きて……」

ズボンと下着を一気に下ろすと血管が浮き出るほど大きくなった自身が顔を出した。思わず生唾を飲み込む。今から、私は忍足侑士とセックスをする。この妄想を何度しただろう。
忍足は私の腰を掴むと自身を膣口に宛てがい、上下に擦る。そして、秘部を押し開くように先端が入ろうとした時__。

キーンコーンカーンコーン。

授業の終わるチャイムが2人きりの保健室にこだました。ムードもへったくれもない。忍足を見ると私の身体から離れ、乱れた制服を整えていた。

「はぁ……あかん、6限の学活で海外交流委員の仕事あんねん。はよ行かな……ついとらんわほんま……」
「侑士くん、それ、大丈夫?」

制服のズボンを押し上げ、明らかに主張する存在を指でさすと忍足は困ったように眉をさげた。

「まぁ、放っとったら治るさかい、気にせんでええで……きついけどな」
「……今度、続きしようね?」
「次は絶対挿れたるさかい、覚悟しいや」

ほなな、と手をひらひら振って保健室を出ていく忍足の背中を見つめた。興が冷めてしまったので私も制服に着替えて6限の授業に出るとしよう。


2020.10.06
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