first contact
『わっ!!』
突然の強風に目を閉じた。
そして、次に目を開いたら…
そこは見知らぬ街並みに変わっていました。
『…………なんて!!誰が信じるってのっ!!』
往来のど真ん中で怒鳴り声をあげたレンに周囲の人々はビクッと肩を揺らし、レンへ視線を投げ掛ける。
『そんな事より。ここどこよ!?』
周囲を見回して呟いた言葉に返す人はいない。
『あー…とりあえず、歩こうかな…』
そうして、歩きながら周囲の人々を観察し建物に何か見覚えはないかと確認する。
茶髪の少し長めのショートヘアは風に吹かれ、少し乱れたのを片手でかきあげてさっと直す。
ブーツのヒールを鳴らしながら歩く彼女は違和感を感じながらも迷う事なく足を進める。
『喋ってる言葉は日本語…だよね。でも、顔の造りとか体格、それに街並み…こんな場所日本にはないよね。て、事はあれか!!海外のJapanese town的な場所とか?それならありえるよねぇ!うん、うんう…ん……』
そう結論付けていたレンの前を通りすぎるのは、剣や銃を所持した、いかにもやからでしかない男達の集団。
『…………………いやいやいや。いくら何でもこのご時世だよ?銃はまぁ、無理矢理納得するとしてね?剣?刀?は違うよね?』
ぶつぶつと呟きながら、1件の店の前に辿り着く。
その隣の塀へと何気なく視線を向けて固まった。
『……こ、れって……手配書?』
貼られた紙へと手を置いてよく見る。
そこには男の写真とwonted、marine、賞金の額に、男の名前が記されている。
それはレンが好んでよく見ていた漫画の中の手配書と全く同じだった。
『え、え〜〜〜〜〜っと。まぁ、待て。落ち着けって』
頭を抱えて座り込んで、もう1度手配書を見上げる。
『やっぱ、見間違いではないよねぇ…あは、あはははは…。よし、もう少し散策してからでも遅くはない』
そう言って立ち上がると、賑やかな場所を抜けて先程から微かに香ってきていた潮の香りを追いかけた。
暫く歩くと市場らしき場所に出た。
度々目に飛び込んでくる見た事もない魚や食材には目を向けず道の先に見えてきた…海を見据えて呆然とする。
『ま、まじでか…本当にここ、ONEPIECEの世界なの?』
片手を頬にやり、力の限りにつねる。
『ーっ!?いったいわぁっ!!』
混乱のあまりに当たり散らしたい思いを片手に向けて、自分で自分の腕をはたき落とす。
端から見たら、完全に関わりたくない人物No.1となったレンに訝しがりながらも声をかける人は1人としていない。
歩みを更に進め更に大きく拓けた海を見て彼女は悩む。
『(仮に、本当にONEPIECEの世界として。あたし、即死ぬんじゃなかろうか…)』
海を眺めて、少しネガティブな思考が脳内を駆け巡りだした時。
「おーい!シモン!!さっきから声かけてたのに、シカトすんなよなっ!てゆうか、お前船番だろー??こんな所で何やってんだよ!!」
背後から聞こえた声がしたが、知り合いさえいるわけがないとレンは海をキッと見据える。
「おーい!!シモンくーん!!シカトすんなってぇ!シラ切ったってばればれだぞ?」
そんな声が背後から足音と共に近寄ってくるが、気にせずにこれからを考えようと頭をフル回転させていると。
グっと肩を捕まれ、無理矢理振り替えさせられるとレンの視界に入ったのは、真っ白のコックコートに黄色のスカーフ…そして、フランスパンを思い出す立派なリーゼント。
そして、顔を見れば目尻には大きな傷跡に皺を寄せながら笑いかける男。
「おーい?何、固まってんだよ?シモーン?あれ?おーい、大丈夫かぁ??」
男を見つめて、間抜けなことにも口を開けて固まってしまった。
『(け、決定打だ…白ひげ海賊団の4番隊…隊長……サッチっ!!)』
「ん?あれ?お前、こんなちっさかったか??マルコと同じ位だったよな?あれか!!お前、シークレットブーツ履いてたのか!!大丈夫だ!俺、誰にも言わねぇからよ!!ん?お前髪型かえたの?」
そう捲し立てるサッチを冷ややかに見つめる。
『(どうでもいーけど…誰と間違ってんの…)あの、シモンて誰』
「はぁ?んだよ。新手のギャグ?ばればれだぞ?ぎゃはははははは…」
バンバンと思いきりレンの肩を叩きながら話すサッチに唖然とする。
『(こいつ…人の話あんま聞かないタイプ?…)』
「こらぁっ!!白ひげ海賊団4番隊隊長、サッチ!!お前をここで捕まえさせてもらうぞっ!!」
「っ!?げぇっ!忘れてた!俺、海兵に追われてる最中だったんだわっ!!おい、行くぞ!!」
そう言って走り出したサッチを呆然と見送る。
『……行くぞって?あたし、何もしてないし…てゆーか…うるさい人ね…って、あれ?』
走り去った筈のサッチが去っていくスピード以上を出し、砂煙をあげて戻ってきた。
「おまっ!!なぁにやってんの!?逃げるぞっ!!」
『は?え、ちょ!!ちょっと待ってっ!?』
ガッとレンを肩に担ぐサッチ。
「俺、男担ぐ趣味ないんだけどなぁ…今はしょうがねぇ!!行くぞっ!!シモン!!」
『は?え?ど、どこに!?』
そうして、猛スピードで走るサッチの肩で揺られながら遠ざかる海兵達へと手を伸ばすレン。
『………あたし、どうなんの…』
と、サッチが立ち止まる。
「おーい!!縄梯子頼む!!早くしろー!海兵に追われてんだよ!!」
降りてきた縄梯子にレンを担いだまま上がる。
「シモン!!お前、出港したら飯食え!!飯!!こんな軽くちゃダメだぞ!!女みてぇじゃねぇか!!」
『…………………(いや、女だよ。てゆうか、誰だよ。シモンって……)』
拉致…?されました