love is best!!!!
幸福というものは、一人では決して味わえないものです。
アレクセイ・アルブーゾフ(ロシアの戯曲家)
最後の一枚にサインをして、ペンを置く。
『あ゙〜!!やっと終わったぁ…』
腕を組んで背伸びをする。
凝り固まった背筋を伸ばして座ったまま少し左右に倒れてストレッチ。
机の横の窓に視線をやればすっかり陽は落ちてしまっているようで、夜の闇に一際輝く満月が海を照らしていた。
『今日は満月か…っても、十五夜なんて過ぎてるし少しはかけてるのかな…?まっいっか!さぁて、遅くなったけどご飯食べに行こうかな…』
部屋にかけてある時計に目を向ければもうすぐ8時になる所。
椅子から立ち上がり部屋の扉を開ける。
『……?随分静かだけど…皆何してんだ?』
とことこと食堂へと向かう為に廊下を進むと角を曲がったところでエースに遭遇する。
「おっ!!終わったのか?」
『うん。終わったけど…皆は?随分静かだけど…何かあったの!?』
「いや、何もねぇよ!!全員甲板で月見してんだよ!!ルカもいこうぜ!!呼びに来たんだ!!」
『月見…?何、気味悪いんだけど…ハハ…。海賊が月見とかっ!!おっかしぃー!!アハハハハ…』
笑いだしたルカの手をとり、エースが甲板へと歩き出す。
「笑いすぎじゃねぇ?!たまには風流?だろってイゾウが言い出してよ!」
『フフフ…あぁ、イゾウならね。納得ー!』
まだクスクスと笑うルカを見てエースも笑う。
そして、甲板の扉の前についたエースが扉を開けながら声をあげた。
「ルカ、連れて来たぞー!!」
ガチャっと開いた扉を抜けた瞬間。
ルカは抱き上げられて悲鳴を上げた。
『ぎゃああぁあぁぁぁっ!?って!?ジョズ!!?』
ルカがジョズを見下ろせば、ジョズが笑っていた。
もう!!と頬を膨らませたルカに声がかかる。
「やっと来たかよい!」
「ルカ!おっせぇぞっ!!」
掛けられた声に下を向いていた顔をあげた瞬間だった。
「「ルカっ!!誕生日おめでとうっ!!」」
「おめでとう!!ルカ!!」
「ルカーー!!」
「ばか!!全員で言うんじゃなかったのかよ!!」
「サッチたいちょー!いいじゃねぇですか!!」
全員が笑顔でルカへと言った言葉に唖然とする。
『 ……え?うそ…』
そんなルカに白ひげが話しかけた。
「なぁに驚いてやがる。可愛い娘の誕生日、祝わねぇやつがあるかぁ!おめでとう、ルカ」
にぃっと口角をあげた白ひげにルカはまだ目を丸くしていた。
「なぁにー?驚きすぎだよー!!」
『ハルタ…え、いや。え?何で知って…て、あ…』
そこでルカが、思い出したのは…
『…朝の独り言…聞いて』
「悪いねい…聞こえちまったよい」
マルコが悪そうに笑みを漏らす。
それにバツの悪そうな顔をしたルカだったが笑顔で自分を見ている家族達へと視線を移すとその顔はみるみるうちに笑顔へと変わる。
『…ふふ。皆っ!!ありがとっ!!大好き!』
そう満面の笑顔で告げたルカを見て彼等は咆哮をあげた。
「よしっ!!宴だぁっ!!」
「愛する我らが妹!!」
「ルカの産まれた日を祝って!!」
「「「「かんぱぁーいっ!!」」」」
全員が笑いながらルカへとジョッキを掲げて騒ぎ出す。
それにルカも渡されたジョッキを掲げると一気に飲み干す。
『ありがとうっ!!』
そう笑ったルカの顔を見て全員が顔を綻ばせる。
そしてそこかしこで座り込み話し出したのを見るとジョズは肩へと抱えていたルカを降ろす。
ちょっと、待ってて!!笑顔で白ひげの元へと駆けていったルカを見送ると隊長達は笑顔で顔を見合わせてルカの後を追って白ひげの椅子の元で酒を汲み交わす。
『親父さんっ!!ありがとうっ!!』
顔をあげれば、白ひげへと抱き付き頬へとキスをするルカ。
一頻り話を交わすとスタンと降り立つと目の前にいたエースへと走り寄るとそのまま抱きついた。
「ぅおいっ!!?」
『エース!ありがとうねっ!!』
「お、おう!!」
突如抱きつかれたエースは目をぱちぱちとして慌てていたが、そのまま今度はフォッサ、ラクヨウ、スピードジル、アトモスと抱きついていき、残るはイゾウ、ハルタ、マルコ、サッチ。
『イゾウ!!ありがとう!!』
ひしっと抱きついて見上げて元気に伝えられた礼に微笑むイゾウ。
「喜んでくれたなら、手を回した甲斐があるってぇもんさね」
聞いたルカはふふふと笑うと次は隣に座っていたハルタに後ろから抱きつく。
『ハルタも!!ありがとっ!』
「いいえぇ!準備とかも楽しかったしね!!」
あの看板の飾りとか僕が作ったんだよー!なんて聞きながら、やたらと飾られた甲板に再度目をやって笑うルカはもう一度ハルタにありがとうと伝えるとマルコの所へと駆けていくとそのままの勢いで座るマルコに飛び付く。
『マルコ!!ありがとうっ!』
飛び込んで来たルカを両手を拡げて受け止めるとぎゅぅっと抱きついてきたルカを抱き締め返すマルコ。
「これでまた1つ、楽しい思い出が増えたかい?」
『うん!!でも、これからもっともっと増えるよねっ!!』
珍しく穏やかに微笑み返すマルコを見てルカも満足そうに笑うと、立ち上がる。
その隣では、さぁ、来い!とばかりにだらしない顔で手を拡げているサッチがいたが、ルカはわざと気付かないふりをしてサッチを通りすぎようとした。
「っえぇ!?ルカちゃん!?」
『ふふ、なぁーんちゃってぇ!!サッチ!!ありがとうっ!』
手を伸ばしたサッチの声に振り替えると片足を踏み出して中途半端な体勢のサッチへと飛び付く。
「うぉっ!たく…俺をわざと飛ばすのかと思ったじゃねぇか!!」
言いながらぎゅぅっと抱き締めたサッチの胸板から顔を上げてニィっと笑うルカにサッチも笑いながら抱き締め返す。
「まだまだ、お楽しみはこれからだからなっ!!楽しみにしてろよ?」
ウィンクしたサッチに、まだ何かあんのっ!?と驚きを見せたが、皆にもありがとうしてくるっ!!と他のクルー達の元へと駆け出したルカをサッチ達は手を振り見送った。
そして、クルー達一人一人に抱きついてお礼を言って廻るルカを和やかに見守る隊長達だったが一人また一人とその場を後にする。
その間にもルカはクルーへのお礼を済ませていく。
『ラルフー!!ラルフもありがとう!』
「おうっ!!おめでとさん!!」
『あ!ショーン!!ありがとうね!』
「ルカ、おめでとうな!」
くふふとはにかむルカにクルー全員の頬が緩む。
そして、時間をかけて1600人のクルー全員にお礼を伝えたルカがほろ酔いになりながらサッチ達の元へと戻ってくるとその中央には信じられない量のプレゼントが積み上げられていた。
『え!?何っ!?これ?』
「ルカにプレゼントだぜっ!!」
俺のはこれなっ!!なんて言いながらエースがニッと笑う。
驚きながらプレゼントの山の前に立つと白ひげがルカに声をかけた。
「ルカ、俺からもプレゼントだぁ!!」
そう言ってルカの前にドンと箱を置く。
それに目を見開くルカ。
『…お、親父さん。プレゼントにしてはおっきぃね?』
「グラララララ、飛べるお前にはあんま必要ねぇだろうが…欲しそうにしてただろぉ?」
そう言って、開けてみろと促した白ひげに頷くとルカは巨大な長方形の箱に手を伸ばす。
ピンクとオレンジの布で包まれて、真っ赤なリボンのつけられたそれをほどけばそこにあるのは木箱。
首を傾げてジョズに手伝ってもらいながら蓋を外すと…
そこにあったのは、ルカ専用のストライカーだった。
『えっ!?これ!!』
「エースがモビーの周りを走り回ってんの見て羨ましそうに見てただろ?それは、お前の翼で起こす風でも、ジェットダイヤルも積んでるからな、どちらでも進める。お前専用のストライカーだ」
『親父さんっ!!すっごい嬉しいっ!!ありがとう!!』
白ひげの足へと抱きついて、子供のように飛び跳ねるルカを見て全員が、白ひげのルカへの甘さを再確認すると、これは俺からだぜ!?と次々にプレゼントを開ける様に促す。
そんな感じで次々とプレゼントを開けていくと、出てきたのはルカが以前から欲しがっていたもう出回っていない筈の小説数冊。
「欲しがってたろい?」
『覚えてたの!?』
キラキラとした笑顔で屈んだマルコを見上げる。
「まぁねぃ…」
照れ臭そうに頭を書いて立ち上がるマルコにありがとうと礼をする。
「あれよく見つかりましたね?」
「古本屋を探し回ったんだよぃ…」
「そうなんですか?」
クツクツと笑うラルフは知っている。
それは、マルコが非売品で売れないのだと断る店主を何とか頷かせようと必死で説得していたのを…。
それを思いだし笑うラルフに首を傾げるマルコだった。
『あれ?って、何これっ!?』
「いいだろ!!俺とおそろいっ!!」
ルカの前に座ってニッと笑うエースは自分の頭を指差す。
『ふふふ、ありがとう!まさか、この年で弟とお揃いの物をプレゼントされるとは!!』
笑いながらルカは真っ赤なハットを被って笑う。
「これ見つけた時にさ、ルカと同じ色だと思ってよ!!赤はルカの色だ!!」
瞳を見つめて言ったエースに気恥ずかしいのかぽりぽりと頬を掻くルカ。
『血の色じゃん、赤ってぇー!!海軍の奴等とかも、そう言ってたじゃん。気味悪いって!』
ケラケラと笑うルカにエースが声を荒げた。
「ルカの赤は血の赤じゃねぇよ!!ルカの眼は何よりもあったけぇ…心の色だろ?」
『……こころ?』
「あぁ!!ハートとかさ!暖かいもんは大抵赤い色してんだろ?血だってそうだけど…ルカの眼はそんなんじゃねぇ!宝石みてぇに綺麗だかんなっ!!」
『ありがとう』
ニッとまた笑ったエースにもう一度噛み締める様に言ったルカに全員が安堵する。
そして、次に取ったプレゼントはイゾウからのだったらしく、紺瑠璃の赤い椿の花の描かれた着物。
その次はハルタからのガーネットの宝石が散りばめられた髪留め。
そして、最後が問題だった。
真っ赤なネグリジェと下着、ガーターベルトと網タイツのセット。
一気に白けた視線が集まった。
『………これを、いつ着ろと………?』
「これはあれだよ!!俺との初めての夜に、ぜひ」
すかさずルカの肩へと回した手はマルコにより蹴り飛ばされジョズに海へと放られてサッチは海へと返った。
『…………最後のはともかく。皆!!ありがとう!!』
そこからはまたどんちゃん騒ぎへと逆戻りしていき、ルカはあちこちから呼ばれるわ一息つこうとすれば誰かが現れ休む間もなく飲まされていく。
そんな中とうとうサッチ作の巨大なショートケーキが登場。
『ふわぁぁー!!何これ!すごいっ!!』
驚きながら喜ぶルカにサッチはこれでもかとドヤ顔を見せる。
「すげぇだろ?苦労したんだぜぇ?」
ニッと笑うサッチにルカはにっこにこで抱きついて喜ぶと早く食べたいっ!!と騒ぎサッチにねだる。
大きめに切り分けたショートケーキを渡すとルカはすぐにフォークで掬って食べる。
『んんっ!!おいひい!!』
その顔にまたクルーの顔が綻んだのだった。
そうして、主役なのに早い段階でルカは夢の中へといってしまった。
白ひげの膝で丸くなり眠るルカを全員が優しい笑顔で見つめる。
「喜んでくれたみてぇだな…」
「……そうだねぃ」
「時間がねぇなか、全員よくやってくれたな!!お陰で可愛い娘の誕生日が祝えたぜ、ありがとうよ?」
白ひげにそう言われほぼ全員が照れ倒す。
と、
『ん〜…ありがと…』
静かな甲板にルカの寝言が響いた。
「こいつ、夢の中でも祝われてんのかな?」
ぷっと笑いだしたエースがルカの顔を背伸びして見ようとするが届かずに白ひげの膝へと断りを入れて上る。
「幸せそーな顔してんなぁ!!」
その言葉にまた全員が笑いあう。
そして、主役寝落ちとなりながらもその日の宴は明朝まで続いたのだった。
愛は最上!!(幸せって、一人でいたらわからなかった。)
(皆に会えたから幸せが何かわかった気がする)
(幸せってきっとこういう事…何気ない日を特別にしてくれる。皆がいるから、幸せなんだね!!)
prev/next