PROJECT | ナノ
6


鯨島…ホエールランドより沖に数キロの位置でモビーと子モビー、パドルシップは停泊していた。
モビーの甲板では鯨島上陸にあたっての作戦会議が開かれていた。

「随分とちぃせぇ島だ。今回は俺の他に5人だけで上陸する。只でさえ俺が行くから目立つ。上陸すんのは、隊長以外のあまり名の売れてねぇ奴を連れてく」

「親父!?」

「お前ら隊長はもしもの時のために船を守れ。わかったな?」

白ひげの言葉に隊長達は渋々うなずく。

「じゃあ、俺と上陸すんのぁ…」

俺!おれっ!と手を挙げてアピールするのはサッチだ。

「それじゃあ、サッチとマルコ。あとは…ビスタ、ラクヨウにイゾウ。行くぞ」

名の上がった5人は喜び勇んで白ひげの元へと近寄る。

「よっしゃぁっ!!隊長達!何かあれば俺らがしっかり親父と#さん守るからな!心配しねぇでくれよ!!」

はしゃぐサッチとラクヨウに全員が口を揃える。

「お前らが言うと心配でしょうがねぇな……」

そう言った居残り組のクルーと隊長達にマルコ達が口を開いた。

「俺らがよく見とくよい」

「その為の人選だろうな」

「間違いないねえ。サッチ、ラクヨウ。へましたら只じゃすまさないからねぇ」

イゾウの言葉に二人が青ざめる。

「グララララララ。元気でいいじゃねぇか。お前らは俺と上陸したら、手当たり次第にあいつの居場所を探す。はぐれんじゃねぇぞ?」

そうして、6人で船に乗り込むと上陸の為鯨島…ホエールランドへと向かった。




その頃、鯨島の商店の並ぶ通りでは少し伸びた髪を靡かせながら大きくなったお腹を撫でながら頼んだ品を受け取る為に店先の椅子に座り待つ#がいた。

「#ちゃん、随分と大きくなってきたね?」

『はい、もう6ヶ月を過ぎたから…この子とももう少しで会えます…』

そう語る#の顔は、海賊として名を馳せていた者とは思えない程に穏やかに笑みを浮かべていた。

「もうそんなになるか!早いもんだねぇ!ほら、頼まれてたベビーセットだ!ベットなんかはおじさんが後で持っていてやるからなっ!!家で待ってるといい」

『本当ですか?助かります、ありがとう!』

「いいさ、いいさ!こんなちいせぇ島に小さな仲間が増えるんだ!嬉しいじゃねぇか!!」

豪快に笑う店主へともう一度礼を告げると#は家のある山の麓へと歩き始める。
その後ろ姿を見て、店主とその妻は話す。

「こんな小さな島に来るなんて、何か理由があるんだろうが…いい子でよかったよねぇ」

「そうだなぁ!愛想もよけりゃ、器量もよし。あんな子を手放すなんざ、バカな男もいたもんだ!もう少ししたら、あんな山麓に一人じゃこっちが心配だ。話して、うちに落ち着くまで住む様に話でもしねぇか?」

「そりゃぁ、いいじゃないか!!早速ベットを持っていく時に話したらどうだい?」

「そうだなっ!!そうするかっ!!」

笑う彼らは、#の去っていった方角を見て笑顔を浮かべていた。

暫くして、男達が#によく似た特徴の女を探して訪ねてくるとも知らず。



『……ふぅ。やっと着いたか』

鍵を開け家に入ると窓際に置かれたチェアへと腰かける。
お腹を擦りながら、部屋を見渡せばこれから子供を受け入れる準備をされた室内は優しく暖かな雰囲気を漂わせる。
優しい色使いで纏められた室内は明るく、笑みを浮かべる。
その一角に目を向ければ、その壁には白ひげ海賊団で過ごした日々の写真とこの島に来てから集めた仲間達の手配書が納められたファイルが置いてある。
そこに近寄ってファイルを開けば、かつてを共に生きた仲間達の顔。
最後のページには愛すべき彼、白ひげの手配書が納められていた。

『……ニューゲート……』

名前を呟くと、パタンとファイルを閉じてしまうと、これからベットを届けに来る気のいい店主の為に茶菓子と紅茶の準備を始めるのだった。

その頃、店主が#の家へと向かった後に現れた男達に店主の妻が困惑を露にしていた。

「なぁ、おばちゃん。瑠璃色の髪をした女がこの島にいるだろ?どこに住んでるか教えてくんねぇかな?」

「……いや、それは。そんな事よりその人がどうかしたのかい?」

「俺らずっと探してたんだよ!この島にいるってのは知ってんだ!家を教えてくれりゃあいいからよ?」

明らかに、この若い青年達の後ろにいるのは有名な白ひげ。
それに気づいた店主の妻はすっかり困り果てていた。
あの優しい穏やかな女に何があって、四皇である白ひげが直々にこの辺境の小さな島まで訪れたのか。

だが、聞いた話では白ひげは仲間の死を許さない。
もし、何かの理由で彼女が白ひげの仲間を殺したとしたら、サッと背筋に冷たいものが走る。
キッと表情を変えると、恐怖を抑えて言った。

「あの子に何の用事か知らないけどねぇ!!お呼びじゃないよ!!さっさと海へ帰んなっ!!」

言われた言葉に店主の妻と話していたサッチとラクヨウが目を見開く。
そして、後ろから現れたのはマルコとビスタだ。

「別に俺らは#さんをどうこうする気はないよい。俺らは迎えに来たんだよい」

「……迎え?」

「グララララララ。あいつは随分とこの島の人間に愛されてるみてぇだなぁ」

にやりと笑って前に出てきた白ひげにたじろぐが、白ひげはしゃがみこむと頭を下げた。

「俺がふがいねぇばっかりにあいつが船を去っちまった。だが、俺にとってもこいつらにとっても#はなくてはならねぇ存在だ。だから、あいつを迎えにきた。頼む、あいつの居場所を教えちゃくれねぇか?」

白ひげの様子に慌てながら、店主の妻が家の場所を告げようとすると、裏の入り口が開いた音と共に話をする声がしだした。

そして、店に出る扉が開いた奥で白ひげ達を視界にとめた#が目を見開いて、呆然と店先にいる白ひげ達を見つめていた。





貴方の重荷に
自由を生きる海賊である貴方の枷になりたくなくて
離れたけれど、心はいつも反対に
貴方の側で生きる事を思い描いていた。
貴方の隣でこの子と暖かな家族に囲まれ
笑って生きる自分を夢に見た。

ねぇ、ニューゲート?
あなた、何でここにいるの?
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