PROJECT | ナノ
1
『マァマーーーーっ!!ママどこぉー!?』

白ひげ海賊団の船。
モビーディックでは異変が起きていた。
海賊船に響き渡る筈のない幼い子供の声。

慌てて船員達が声のする部屋へと駆け付ける。

「子供でも忍びこんだか?」

「待てよい。つい4日前に島を出たんだぞ。そりゃありえねぇだろい」

早歩きで問題の部屋へと辿り着くとその部屋は

「ルカ。子供でも拐ってきたのか?」

「んなバカな話あるかよい…」

「それより早くしねぇと!すげぇ泣きようだぜ?」

「こらぁ、島に逆戻りかねぇ…」

「んもぉー、なんの騒ぎー?」

「子供の泣き声が聞こえるが?」

騒ぎを聞いて駆けつけたのだろう。
エースとイゾウ。目を擦りながらハルタが。
さらには、ビスタやラクヨウ、ジョズといった隊長達まで他の船員に紛れて集まってきた。

そして、マルコがルカの部屋をノックする。

「ルカ!おめぇ、なにやってんだ?扉開けろい!!」

と、泣き声が止む。

扉の前に気配があるものの扉は開く事もなく。
痺れを切らしたマルコが蹴破る。

「おまっ!ルカにどやされんぞ?ってどした?」

サッチが声をかけるも反応もなく、室内を凝視するマルコにサッチが不思議がる。

「ちょっとー、どうしたのさ?マルコ」

動かないマルコの横から室内を除くと全員が固まる。

『だあれ?おにいさんたち…』

大きな瞳に涙を溜めてそう発した子供は

紅い瞳に銀髪。

紛れもなくルカだった。





「「おっおやじーーー!!!!」」

そう言って走り出す船員の声にハッとして意識を戻すとまずはイゾウが近寄る。

「お前さん、名前は?」

それに怯えた様に後ずさるルカに一同困り顔。

と、そこで動いたのはマルコ。
ルカ…であろう子供の首辺りの衣服をむんずと掴むとそのまま抱き上げ歩き出す。

「お、おい!?マルコ!?」

サッチが声をかけると

「とにかく。今は親父のとこ行くよい」

そう言って振り返ったマルコの腕に抱かれたルカらしき子供はやっと状況が掴めたのか、涙の溜まっていた瞳からさらに涙を溢れさせ同時に大きな声をあげた。




それから、数時間後。
甲板で白ひげの腕に抱きつき離れない子供の姿。

「ルカが子供の頃に、どが付く人見知りだったとはねぇ…」

「構ってやりてぇのに、近寄れもしねぇ」

「でもさぁ?何で子供になっちゃったんだろうね?」

「それならさっき調べたよい」

マルコの声に白ひげもといルカを見ていたイゾウ、エース、ハルタが振り向くとそこには眼鏡をかけたマルコがいた。

「原因わかったのかい?」

「あぁ。ついこないだ親父の使いに出た時に休憩で島に寄ったとか言ってただろい?そこで薬を盛られたみたいだよい」

「あー。さっき、ナースとジェットが検査してたのはそれか?」

「それ、戻るの?」

「あぁ、発症から数日で自然に戻るらしい…」

視線をまたルカに向ける。

「それまではあれか…」

「まぁ、しょうがねぇだろい…ってサッチ?あいつ、何してんだよい?」

サッチがなにかの乗った皿片手に白ひげとルカへと近寄っていく。

「ルカちゃん?お腹すかねぇか?ケーキ作ったんだけどよ。好きか?」

『………ケーキ?』

サッチが来たことで白ひげに隠れていたルカがケーキと聞いてそろそろと顔を出す。
そんなルカに皿に乗った苺のショートケーキを見せるサッチ。
と、そのケーキを見て目をキラキラとさせたルカに白ひげが話し掛けた。

「せっかくサッチが作ったんだ。テーブルとイス出してもらってここで食うといい」

ルカに優しく微笑みながら、白ひげから離れないといけないという不安も取り除いた言葉にルカは初めての笑顔を見せた。

それにすぐ動き出したのがエースと意外や意外のマルコ。
物凄いスピードで甲板用にとビスタが購入したテーブルセットを出す。
それに驚いた顔を見せながらも白ひげに促されてイスに座るとサッチがケーキを切り分けてルカの前へ置く。
そしてそれを見たルカがいただきますと呟いてケーキを口にする。

『うわぁ!おいしい!』

笑顔を見せてそのまま続きを食べるルカにサッチが声をかけた。

「そんな慌てなくてもまだあるかんな!ルカちゃんは甘い物好きか?」

『…………う、うん』

頬を真っ赤にして恥ずかしがりながら頷く。

「じゃあ、またサッチお兄さんが作ってやるかんな!」

ニカっと笑いながら言ったサッチに目を丸くしたルカはにっこりと笑みを返した。

『うん!えっと…サッチお兄ちゃん!ありがとう!!』

初めて自分に向けられた笑顔にサッチがやられた。

「なんだ!?ほんとにこれルカなのか!?」

胸を抑えて踞るサッチに心配そうな視線を向けたのはルカだけで、マルコやエース達は心底引いた視線を向けていた。

隣にエースが笑いかけながら座るとルカはカチンと固まる。

「俺も食べていいか?」

それにコクコクと頷くとそれからは声を出さずに食べて、ごちそうさまでしたと言うやいなや、白ひげの元へと駆けていってしまった。

それから2日。
白ひげとサッチには笑顔を向けるものの、2人以外には今なお笑顔を見せないルカに全員が困り果てていた。

「親父はいーぜ?けど、なんでサッチなんだ!!」

甲板ですっかり打ち解けたのかサッチに抱かれながら遊ぶルカを見て雄叫びをあげるエース。

「確かにねえ…特にエースとかハルタは子供に好かれそうなもんだけどねぇ」

「くっそー!お菓子で釣ろうにもあいつが俺がやってるからとか言って作ってくれねぇし…どうしたもんかなぁ」

と、話していると最初の出会いのせいで姿を見せただけで怯えられている少しやつれたマルコが来た。

「俺は最初からやり直してぇよい…」

「まぁ、あれはまずったねぇ…」

クスクスと笑うイゾウに鋭い目を向けてからサッチに抱かれるルカを見る。

サッチと話ながらキャッキャッとはしゃぎ笑顔を向けるルカ。
そして周りを見渡せば大の男が皆して一定距離を保ったままルカを見ていた。

「なんだぁ?ルカとはまだ話せてねぇのか?」

「あ、親父」

「なぁ!親父はいーとして!なんでルカはサッチ平気になったんだ?」

「ん?あぁ。サッチから甘い匂いするんだとよ。それと、サッチの作ったショートケーキが母親の味とにてたらしい…」

「あ、そういえば。あいつ、サッチの作るデザートの中でもショートケーキが1番好きって言ってたねぇ」

「まぁ、あいつが戻ったら思う存分遊んでもらえ!グララララララ」

『あ!おじいちゃん!!だっこー!さっちゃん!!ルカおじいちゃんがいーいー!!』

ルカの言葉にショックを受けながらルカを白ひげに渡すとマルコ達のもとへ行く。

「ざまぁねぇな!」

「ふられたねい?」

「るせぇ!お前らは遊んでももらえねぇだろ!!」

そう言った瞬間サッチは甲板に沈んだ。
そして、サッチを踏みつけながらエースが呟いた。

「てゆーかさ。記憶ねぇくせに親父好きはかわんねぇのな…あいつ…」

「あぁ。そうだな…」

「不思議だねぇ…」

視線の先にはたかいたかいをしてもらい、笑いすぎて噎せているルカとそれを笑う白ひげ。

「でも、小さい内に1度は遊んでもらいたいもんだねぇ…」

イゾウの呟きにマルコとエースが頷いたのだった。
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